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13th contest 2018年 第13回大会

調理員特別賞(中野麗子賞)について
前例にならった特別賞の名称

第13回全国学校給食甲子園から、調理内容を審査してもっとも優れた調理技術を発揮した調理員を表彰する制度として調理員特別賞(中野麗子賞)を創設しました。最初の栄えある受賞者は、大会で準優勝した福島県いわき市立勿来学校給食共同調理場の調理員・稲村のり子さんでした。

調理員特別賞にカッコ書きで「中野麗子賞」となっているのは、次のような前例にならったものでした。

東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)の最優秀選手賞は、大会生みの親である金栗四三氏の名前を冠した「金栗四三杯」を贈っています。

また都市対抗野球での最優秀選手賞は、大会生みの親の東京日日新聞(現毎日新聞社)の新聞記者であった橋戸信氏の名前を冠した「橋戸賞」としています。

この例にならって全国学校給食甲子園の決勝大会で最も優れた調理技術を発揮した調理員を表彰するべきと提案された株式会社藤江会長の中野麗子さんに敬意を表し、「中野麗子賞」を付記することにしました。

食堂経営から給食事業へ

中野麗子さんは、1932年4月3日生まれで、食堂経営から事業を始めました。1976年に株式会社藤江を設立し、事業を発展させて官庁、大学、学校など主として公共施設や企業の給食事業を手掛けるようになりました。1986年4月からは、日本で初めて学校給食調理業務を受託し、足立区立千寿第六小学校の学校給食をつくりました。

その後も都立の夜間高校、葛飾区立保育園給食、足立区、板橋区、大田区内から東京都全域での小中学校の学校給食の業務を受託し、1988年7月には給食事業への貢献が認められ農林水産大臣表彰を受けました。

こうした事業を通じて現場の給食調理業務に精通し、栄養士の役割、調理員の技量向上などに全力で取り組んできました。2013年の第8回全国学校給食甲子園では、自社から東京都文京区青柳小学校に派遣している調理員が学校栄養士とのペアで優勝する栄誉に輝き、全国学校給食甲子園にも大きな関心を持つようになりました。

給食業務は「信用・信頼」が基盤

中野さんは、事業の創業時代から調理業務に情熱を燃やしており、栄養士、調理員に対し業務に取り組む心構えを語ってきました。たとえば同社の社員の心構えについて次のように語っています。

「信用・信頼とは、生命をお預かりする仕事をしているという自覚を片時も忘れてはならないという心掛けの言葉です。従業員が生命をお預りするという緊張感を持ち続けるには、成長を実感する喜び、心の安定が欠かせません。

社員にもパートにも個人に合わせた研修や、不安を取り除くためのきめ細やかで丁寧な指導を行っております。

会社は単に、従業員が仕事をして帰るだけの場とは捉えておりません。従業員が、 明日もこの職場に来られて幸せとか昨日より今日の方が出来ることが多くなっていると感じられる様な場であるべきです。その気持ちがきめ細かい対応を伴う温もりのある仕事へと繋がっていると信じております。

命をお預かりする仕事に誇りと自覚を持ち、笑顔の輪を職場内から社会へと広げていくことを目指しております」

この言葉で分かるように中野さんの信念は、給食事業を通じて、学校栄養士は献立で貢献し調理技術では調理員が貢献するというものです。

この考えから全国学校給食甲子園の決勝大会で最も優れた調理技術を発揮した調理員を表彰する制度を提案し、第13回大会から「調理員特別賞」の創設を提案されました。

全国学校給食甲子園実行委員会では、この褒章の生みの親である中野麗子さんに敬意を表し、「調理員特別賞(中野麗子賞)」として永くその名を残すことを決めました。

第1回調理員特別賞(中野麗子賞)に輝いた福島県代表

2018年12月9日に開催された第13回全国学校給食甲子園の第1回調理員特別賞(中野麗子賞)を授与されたのは、先にも紹介しましたが準優勝した福島県いわき市立勿来学校給食共同調理場の調理員・稲村のり子さんでした。

表彰を受けた後、中野麗子さんから花束を贈られた稲村のり子さんは感涙にむせび、会場に感激の輪を広げました。

ともすれば縁の下の力持ちとして脚光を浴びることが少ない調理員のお仕事をみんなが理解し、これからも支援していきたいというメッセージとしてこの特別賞の伝統をつくっていきたいと思います。

(特定非営利活動法人21世紀構想研究会理事長
 馬場錬成)