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応募献立データベース分析 No.3

大都市圏の地場産物の利用状況
第13回全国学校給食甲子園の全応募献立を分析する

濱田有希 鹿児島県霧島市立安良小学校長、元文部科学省食育調査官

全国の4大都市圏を検証

全国学校給食甲子園の応募状況は、近年、2,000校(施設)を割り込み、第13回は1,701校(施設)の応募でした。しかし学校給食の献立の応募数ですから、この応募数は破格の数字だと思います。

文部科学省、農林水産省、都道府県教育委員会の担当者の皆様や全国学校栄養士協議会の皆様のご協力と、何と言っても現場の栄養教諭、学校栄養職員一人一人の意欲があってこその数字であると思います。

全国学校給食甲子園の関係者と意見交換する機会はしばしばありますが、いつも課題として出てくるのが、大都市圏からの応募が少ないという悩みでした。その原因はいろいろあげられていますが、中でも大都市圏は地場産物になじみがないからではないかという意見が強く出ていました。

転勤で東京生活をした私の経験から言いますと、確かに東京には全国の農林水産の食材が集まっているうえに、スーパーなどの流通機構が発達しているので、郷土の食材という意識はどうしても希薄になってきます。

そこで、全国学校給食甲子園の応募数が、極端に少ない東京、京都、大阪、福岡の4地域の学校給食の地場産物の活用について調べてみました。

食材数に大きな変わりはない

別表に見るようにこの4地域の平均食材数は21.8であり、全国平均の20.1より上回っていました。特に東京は、26.3と大幅に上回っていました。

東京都は、最南端が小笠原諸島であり埼玉、千葉、神奈川県などと接しています。全国学校給食甲子園の地場産物は、都道府県で生産される食材はすべて地場産物とされますので、東京の場合も広域になるわけです。

しかし地場産物の使用数は少ない

さて、使用する食材数は全国平均よりもやや多いのですが、その中で地場産物をどのくらい使用しているかを調べた結果は、全国平均の9.5よりずっと少ない5.7でした。地場産物の使用割合も全国平均の47.2%に比べても25.9%になっていました。

この数字から見るとやはり大都市圏の学校栄養士は、地場産物を利用した献立を作ることに苦労している様子をうかがい知ることができます。

第10回全国学校給食甲子園で、女子栄養大学特別賞を受賞した東京都江戸川区立第11中学校の学校栄養士、井上祐子先生が使用した食材は、八丈島でとれたメダイでした。

このように東京都区内の学校でも遠く離れた地域でとれる食材をうまく利用すれば学校給食の献立は豊かな内容になっていきます。

都市圏で地場産物を活用する取り組み

第13回全国学校給食甲子園が終了した後に、事務局スタッフは埼玉県草加市の住宅街で農業を営む農家を訪問し、学校給食とのつながりを取材してきました。

草加市は、東京のベッドタウンになるので、農地はどんどん失われ住宅地へと変わっていきました。そうした中で住宅地のど真ん中で狭い農地をうまく活用しながら農業を続けている農家を訪問して、どのような農業を営んでいるかを取材しました。

草加市は、都市型の農家から学校給食に食材を搬入することを奨励しています。これに応えて農家も積極的に学校給食に納入する活動をしているのです。狭い畑地を十分に活用して少量多品種の作物を栽培し、季節に応じた食材を学校給食現場に届ける活動をしています。

その一人である埼玉県草加市で都市農業と教育の活動をされている農家5代目で、「Daisy Fresh」代表の中山拓郎さんを訪ねました。中山さんは、第2回食育シンポジウムで生産者代表としてご登壇いただきました。

草加駅から徒歩7分くらいの、周りは住宅地に囲まれた中に、耕作面積がおよそ3,000㎡の畑とハウス畑、そして野生のレンゲの花がいっぱい咲いていて近くには養蜂場までありました。これから収穫時期を迎えるそら豆のさやが空に向かって伸びていました。

中山さんは子どもたちが土に触れ、野菜の栽培から収穫、給食で食べるまでを子どもたちが行い、伝える食の授業を小学校と連携して行っていました。

また、中山さんの畑では収穫体験も行っています。

このように都市近郊の農家と連携すると、大都市の地場産物の活用も高くなることが予想されます。

中山さん(写真)の農園は狭い農地をうまく活用しています

地場産物を活用する取り組み

大都市圏に限らず、地場産物を安定的に生産し、それを学校給食に供給するには、農家や学校栄養士の努力だけでは限度があります。どうしても自治体や農協など地域行政と各種機関からの支援体制がないと長続きしません。

第13回全国学校給食甲子園の応募の中から、地場産物を安定的に供給している代表的な例を抜き出して表にして見ました。

今後のデータベース活用を模索する

このような結果を第7回食育学会で発表しました。全国学校給食甲子園の応募献立のデータベースを活用した発表は初めてでしたが、次のようなことがわかりました。

応募献立の分析から、地場産物の使用割合は、国の調査結果(平成29年の26.4%)より、かなり高かったことがわかりました。

また、上位への審査通過者は、地場産物使用割合が高い傾向があることもわかりました。

その一方で大都市地域の地場産物活用状況は、全国平均に達していないこともわかりました。

しかし、地場産物活用割合が高いことだけで、上位入賞になってはいないことも初めて判明しました。

以上の調査結果から次にように考察を行いました。

考察

  • ・地場産物使用割合の調査方法を多面的に行ってみることが必要
  • ・市区町村等行政などの支援による安定的な供給体制の構築の必要性
  • ・地場産物活用の献立が果たす教材的役割の分析も必要(課題)

私たち全国学校給食甲子園の関係者は、これからも応募されてきた全献立をデータベースとし、これを分析したり活用することで食育推進のために地道に貢献していきたいと考えています。

応募された献立は、一つとして無駄がなく食育発展のために貢献していることを全国の学校栄養士の先生方に認めていただければ幸いです。