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4th contest 2009年 第4回大会

「地元食材活かし、思いのこもった給食を作ります」

8日午前9時45分から開会式が始まった。工藤智規実行委員長が「深呼吸しましょう」と選手の緊張をほぐし、注意事項を説明した後、開会を宣言した。

12チームの紹介が行われた。キャップに上下調理服という仕事スタイルで、席に座った選手は、昨晩とは違い、硬い表情。緊張が伝わる。

和歌山市立有功(いさお)小学校の高橋啓子さんが選手宣誓した。

「郷土の食材を活用し、専門家精神にのっとり、子どもたちの喜ぶ、楽しい、そして思いのこもった学校給食を作ることを誓います」。宣誓の気持ちは、出場した1552チームみな同じ。いや、全国の給食関係者はすべて同じなのだ。

仲間の協力も受けて、選手はこの日のために十分準備してきた。万全のはずだ。しかし、大会はやり直しの利かない一発勝負。「もう心臓バクバクです」。24人は唇をぎゅっと噛みしめた。

消毒徹底が安全な給食の基本

1時間の調理対決が始まった。まず手洗いと殺菌。まな板もアルコールで毎回消毒する。安全安心の給食には欠かせない衛生管理。採点のポイントにもなっている。いつもの調理台よりは狭く、手順良く整理しながら進めることが必要になる。持ち込んだ食材を食べやすい大きさに切る。ベテランの調理員はさすが。「タン、タン、タン」ではない。「タンタンタン」、いや「タッタッタッ」か「タタタ」だ。

調理の準備が進む。昆布を拭き、だしを取る。うまみは日本の料理の原点だ。太陽のエネルギーと大地の栄養が詰まった、ふるさとの元気なにんじんが、かぼちゃが、ほうれん草が、しいたけが12台の調理台の上に並ぶ。調理には温度管理が重要だ。「91度です」「了解」。温度計が大忙しだ。20分経過。コンロの鍋やフライパンで調理が始まった。ジュージュー、グツグツの音とともにおいしさのにおいが広がる。 自分の仕事に集中する。コンビ技が必要なときは、声を掛け合う。チームワークを支えるのは信頼と確認だ。「味付けどう?おいしい?」「OK。ばっちりです」。男性の調理員が3人出場。女性栄養教諭との呼吸もピッタリだ。どのチームも息の合った動きを見せている。日ごろのコンビネーションの良さが見える。

熱気の中、審査員の厳しい目が光る

仕事は丁寧だ。やさしく、あくまでやさしく。時間は気になるが、激しいはしさばきは見られない。八甲田牛のすき焼き風煮物も商品価値がないいかの内臓を使った「かしげぇ」もやさしくかき混ぜ、味をなじませていく。乱暴は給食に似合わないのだ。

今回は特に消毒が厳重だ。食材に触るときはビニールの手袋をし、まな板は使い終わるたびに洗い、アルコールで消毒する。手間が掛かるが、決しておろそかにしない。プロの責任感なのだ。

調理実習室の外では、駆けつけた20人以上の応援陣が見守る。仲間たちがほとんど。「わたしたちの代表だから、きっと大丈夫」。でも心配。ただ、そっと見守った。

調理は終盤に入る。動きが早くなる。その合間をぬって、12人の審査委員が採点用ボードを片手に回る。プロをプロが審査する。目は厳しい。基本が守られているか、衛生管理は徹底しているか、チームワークはいいか、整理整頓がされているか。ただ料理を作るのではない。次代を背負う子どもたちの給食なのだ。チームごとにチェックされていく。

テレビクルーも加わって、熱気がこもる。選手の額に汗がにじむ。しかし、片時も手は止まらない。時折、視線が残時間の表示に走る。1時間はあっという間。この時間内に盛り付けから片付けまでを終わらせなければならない。時間はいくらあっても足りないのだ。

後片付けも審査ポイント

残り10分を切った。早いチームは盛り付けに入った。手際よく1人が皿に載せて行く。もう1人は、使った鍋、釜、ボウルなどの片付けを始める。台の上を拭き、生ごみは持ってきたビニール袋に入れる。シンクの中も洗い、調理器具はきれいにふき取る。後片付けも審査の重要項目なのだ。

料理は5人分。トレーにきれいに載せられた。見た目審査用だけ牛乳を付ける。料理はどのチームも時間内に終わった。だが、片付けはギリギリだ。器具のぶつかる音が響く。

イムアップ。競技は終わった。夢中で取り組んだ1時間。練習通りにいったチームと少し手順が遅れたチーム。選手の顔にはとにかく安どの表情が浮かぶ。みんな精一杯戦ったのだ。いつもの姿を見せられたのだ。自然と笑顔がこぼれた。「おつかれさま」。隣のチームと声を掛け合う。

子どもたちに自信を持って報告できる。仲間たちに胸を張って話せる。ふるさとの元気を全国に紹介したのだから。

トップレベルの給食プロの競演は幕を閉じた。