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- 2022年 第17回大会
- 決勝レポート
17th contest第17回大会について
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深紅の大優勝旗は兵庫県代表の手に栄冠をもぎ取った兵庫の発酵料理
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優勝(株式会社日本一賞)兵庫県 宍粟市立山崎学校給食センター
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- 栄養教諭・世良光さん
- 調理員・安原風花さん
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準優勝(野口医学研究所賞)埼玉県 越生町立越生小学校
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- 栄養教諭・小林洋介さん
- 調理員・三好景一さん
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「準優勝は越生町立越生小学校」。しかしそのアナウンスに、小林洋介栄養教諭と、調理員の三好景一さんの表情は、あまり動きませんでした。それもそのはず、優勝、準優勝、特別賞等、数々の受賞を誇る埼玉県の代表、優勝する自信があったようです。 競り合った相手は、兵庫県代表。どちらも給食甲子園では強豪です。小林さんは過去に自身の手で大優勝旗を持ち帰ったこともあり、施設としても2回目の出場。絶対的な自信をもって出場したのでしょう。
主菜の「平九郎のかあぶり春巻」は、幕末に官軍を相手に飯能戦争を戦った渋沢平九郎にちなむ納豆春巻きの献立。渋沢栄一が愛した郷土料理「煮ぼうとう」を、子どもたちのためにカレー味に仕立てた「武州カレー煮ぼうとう」をと、郷土色を全面に出した工夫が光りました。
浅野嘉久・米国財団法人野口医学研究所創立者・名誉理事は、「越生町近辺は、渋沢栄一や渋沢平九郎の出身地であり、それにちなんだ献立は魅力的だった」と講評しましたが、これを受けて、小林栄養教諭はスピーチで、「埼玉誕生150周年、県にゆかりのある偉人にちなんだ給食は、食育のみでなく、我が町の歴史にも触れる意味がありました」と答えました
受賞後のインタビューで、小林栄養教諭は、「子どもたちや学校・町の人たちから『優勝してきてね』と応援してもらい、それが背中を押してくれました。その期待に答えられなかったことが悔しい」と語り、「優勝したかったけれども、今は終わって清々しい気分。『優勝は宿題だね』と声をかけてくれた人がいますが、明日からまた、一日いちにち、次回優勝に向けて頑張ります」と力強く宣言しました。
学校に戻ったら、学校の子どもたちや、町のみなさんには、「精一杯がんばった、次またがんばるから!」とリベンジの報告をするそうです。
調理員の三好さんも「来年こそ優勝目指します!」と二人とも力強く宣言しました。
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大村智特別賞秋田県 小坂町立小坂小・中学校
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- 栄養教諭・加藤佑亮さん
- 調理員・細越千鶴子さん
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ノーベル生理学・医学賞受賞である大村智先生にちなんだ「大村智特別賞」は、秋田県小坂町立小坂小・中学校が受賞しました。献立内容は、山菜入り炊き込みごはん、牛乳、桃豚ときのこの炒め物、アスパラのハニーサラダ、うるいのみそ汁、町の花アカシアの蒸しケーキ、です。
小坂町や秋田県の食材をふんだんに使い、体験を通してふるさとの食文化を理解し愛着心を醸成することを狙った「たらふく小坂給食」が、創意工夫に溢れた献立として認められました。
プレゼンターの元特許庁長官・21世紀構想研究会アドバイザーの荒井寿光さんから表彰状と、副賞としてクリスタルカップ、及び毎日新聞出版から刊行されている大村先生の伝記『大村智ものがたり: 苦しい道こそ楽しい人生』(馬場錬成・著、毎日新聞出版)が贈られました。また後日、大村先生直筆の色紙も贈られます。荒井さんからは、「大村先生は土の中から新しい微生物を発見するために、調査と研究を毎日続けられていました。その結果として、世界中の人々の健康に大きく貢献する画期的な薬が開発され、ノーベル生理学・医学賞を受賞されたのですね。全国の学校給食の関係者のみなさんも、子どもたちの健康と成長のことを考え、大村先生と同じお気持ちで毎日、おいしく栄養のある給食を考えておられます。そういう部分で、大村先生とみなさんは共通しておられます。継続は力なりです。これからも頑張ってください」との講評がありました。
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21世紀構想研究会特別賞山形県 高畠町立糠野目小学校
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- 栄養教諭・鈴木梨菜さん
- 調理員・竹田明美さん
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すぐれた献立として認められた給食に与えられる賞です。
プレゼンターは、長谷川芳樹・21世紀構想研究会理事と、橋本五郎・読売新聞特別編集員です。
副賞のクリスタルカップを渡しながら、橋本五郎氏は、「私の小学校のころには給食はなかったが、皆さんがおいしさはもとより、栄養や衛生状況などさまざま考えながら苦労して給食を作られていることに敬意を表します」と評されました。
高畠町糠野目小学校の献立は、「心を育む学校給食週間」の一環として、“5年生のだいこん週間”の特別メニューが提供されました。
「だいこんのピリ辛そぼろ煮」は、5年生が学校の畑で栽培しただいこんに加えて、3年生が収穫した秘伝大豆も使われた、辛みのあるそぼろあんかけです。
「高畠産米粉めんのツナびたし」は、町で穫れた「つや姫」を加工した麺に、地場産の野菜とツナフレークを和えました。
デザートのりんごも、県産の無農薬のものを使っています。
献立に使っただいこんや秘伝大豆は、種まきや収穫、脱穀などを生徒自らの手で行うことによって、生産者の苦労を学ぶ学習も兼ねています。
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女子栄養大学特別賞石川県 加賀市立錦城小学校
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- 栄養教諭・西田郁さん
- 調理員・宮本康代さん
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「女子栄養大学特別賞は、加賀市立錦城小学校!」
発表の瞬間、栄養教諭の西田郁さんと、調理員の宮本康代さんの二人は、ほっとした表情を見せました。準優勝に次ぐ優れた献立として認められたのは、加賀市立錦城小学校です。
献立は、白飯、牛乳、とれたてあじの粉わかめ天ぷら、加賀九谷野菜のサラダ、能登牛のすき焼き、デザートは加賀ぶどう(巨峰)です。
審査員の香川全国学校給食甲子園審査副委員長(女子栄養大学学長)は、「他の学校では、まぜごはんが多い中、ここは白いごはんと料理の組み合わせで攻めてきた。白ごはんとすきやき煮、この組合せで、おいしくないわけがない!」と評価。会場の笑いも取りながら、みなさん納得のコメントでした。
白飯は地元加賀市で取れるコシヒカリを100%使っており、料理はごはんに合うように常々考えているそうです。まぜごはんにしない分、塩分や他の栄養価もぎりぎりまで料理に振れるので、よりおいしくできるメリットもあります。そしてすき焼き煮に使う能登牛は、コロナ禍の畜産業支援で石川県が学校給食向けに提供補助をすることで実現できたそうです。
また、加賀市の橋立漁港で水揚げされた新鮮なあじを、特産物である粉わかめを衣に入れて揚げたりと、地元の食材満載です。
調理コンテストが終わった直後、西田さんの感想は、「精一杯ふたりで頑張った。おいしい給食を出せたという自信があります」とのこと。力を出し切ったことが伝わる言葉でした。
あいさつでは、「今後も地産地消でおいしい給食を子どもたちに作ってあげたい」と、あたたかい言葉でしめくくりました。
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優秀賞(藤江賞)山口県 周防大島町立大島学校給食センター
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- 栄養教諭・平原みゆきさん
- 調理員・酒井秀子さん
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この賞は、特に地場産物を活かした献立の工夫が認められた給食に、与えられます。 プレゼンターは、読売新聞特別編集委員の橋本五郎さんと、株式会社藤江の益子純子代表取締役社長です。
益子社長はお花があしらわれたトロフィーを手渡しながら、「すべてにおいて地域を活性化させるような地場食材が使われていて、大変良い献立だった」と講評されました。周防大島町立大島学校給食センターでは、町の中心の屋代島が「みかんの島」と呼ばれることから、主菜は、島で捕れた小いわしを揚げて風味をつけた「小いわしのみかん風味」としました。
お汁は、郷土料理「けんちょう」に、地元のジビエセンターから提供された猪肉を加えて、「ぼたんけんちょう」。
また「金時ささげご飯」は、弘法大師の“お大師参り”でふるまわれる「ささげご飯」に、周防大島産のブランドいも「東和金時」を混ぜています。
「はなっこりーと、れんこんのひじきあえ」は、山口県生まれの「はなっこりー」という野菜を、県特産のれんこんや地元のひじきと和えるなど、地元産の材料を意識した献立が印象的でした。
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優秀賞(武蔵エンジニアリング賞)長崎県 五島市三井楽学校給食センター
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- 栄養教諭・下川洋子さん
- 調理員・臼井洋子さん
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優秀賞「武蔵エンジニアリング賞」は、長崎県五島市三井楽学校給食センターが受賞しました。献立内容は、かんころめし、牛乳、三井楽卵の擬製豆腐、五島産切り干しだいこんの酢の物、具だくさん汁、です。
五島市は長崎県西方沖100kmに浮かぶ五島列島の南西部に位置し、豊かな海風の吹く地域です。その海風を利用して地場の食材でつくられた切り干し大根、ひじき、あおさ、かんころ(さつまいもを干したもの)などの乾物をふんだんに使ったメニューが、「特に栄養バランスに優れた献立」として認められました。
文部科学省初等中等教育局健康教育・食育課学校給食捜査官の齊藤るみ審査委員より表彰状が、武蔵エンジニアリング株式会社副社長の生島直俊さんより、カップと副賞の授与が行われました。
齊藤審査委員からは「特徴的だったのが、SDGsの観点から乾物に注目され、それを食材とされていた点です。また、普段の調理室ではスチームコンベンションオーブンを使われているとのことですが、競技会場には通常のオーブンしかありません。普段の調理器具でないところ、調理を工夫されていた点も素晴らしかったと思います。これからも献立を作成している栄養教諭だからこそできる指導に期待しています」との講評がありました。
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第17回全国学校給食甲子園は、兵庫県宍粟市立山崎学校給食センターが優勝「株式会社日本一賞」の栄冠を勝ち取りました。
献立は、紫黒米ごはん、牛乳、さわらのしょうゆこうじソース、切り干しだいこんのサラダ、野菜と豆乳のクリームスープ、みかん、です。
宍粟市は、日本海と瀬戸内海というふたつの海に挟まれた、兵庫県の中西部に位置し、山海の幸に恵まれた地域です。そんな宍粟市に古くから伝わる発酵文化を普及促進することを意図し、「さわらのしょうゆうこうじソース」、「野菜と豆乳のクリームスープ」などの発酵食品を取り入れた地産地消メニューが、応募献立1249件中、最もすぐれた献立内容として認められました。
紫黒米ごはんは、市内産コシヒカリの七分つき米に、市内で収穫した紫黒米を加えた、紫色のごはんです。「さわらのしょうゆこうじソース」は、春と秋に旬を迎えるさわらを使ったメニューで、日本海で水揚げされたさわらを素焼きにし、市内産の米を市内のこうじ店で加工したしょうゆうこうじのソースをかけていただきます。「切り干しだいこんのサラダ」は、市内産だいこんを生産者の手で加工した切り干しだいこんを使い、瀬戸内海産のちりめんじゃこや、ひじきと一緒に、ノンエッグマヨネーズで和えてあります。兵庫県産とり肉とたっぷりの地元野菜を入れた「野菜と豆乳のクリームスープ」は、ベースに市内産大豆の豆乳と市内産小麦の全粒粉を使い、地元のこうじ店がつくる塩こうじと甘酒、地元酒造の酒かすでうまみとコクを出しています。デザートは、温暖な淡路島で収穫されるうんしゅうみかんです。給食週間中は、発酵食品を使った献立を多く取り入れると共に、宍粟市の発酵文化について、クラス配布の資料や給食だより、パワーポイントによる紹介などを通して、児童生徒に啓発を行ったとのことです。
ファンファーレと共に優勝校が発表されると、会場はその日最大の拍手で包まれました。銭谷眞美審査委員長から表彰状が、株式会社日本一・専務取締役の染谷幸夫さんより、優勝カップと副賞のうなぎ蒲焼きセットが、21世紀構想研究会の馬場錬成理事長より優勝旗が優勝者たちに授与されました。
銭谷審査員長からは「調理中のお二人のコンビネーションが素晴らしかった。また、衛生管理も徹底されていました。献立は見た目もよく、大変おいしかったです。海と山の幸をうまく取り入れて地産地消されていたと思います。素晴らしい献立をご披露いただきました。本当におめでとうございます」との講評がありました。
栄養教諭の世良光さんは涙を浮かべながら、「決勝大会に出られることは、思いもよらぬことでした。私たちがここに立っていられるのは、子どもたち、生産者のみなさん、日々苦労をかけている調理員のみなさん、宍粟市のみなさんのおかげです。みんなでいただいた賞だと思っています。『発酵のふるさと宍粟』が醸し出す空気は本当に美しく、人々の気持ちは暖かく、そして自然を慈しむ心の育まれる土地です。私は宍粟で生まれ、宍粟で育って、本当に幸せだなと思います。本当にありがとうございます」と優勝の喜びを語りました。
調理員の安原風花さんは、「まさか優勝できるとは思っていなかったので、本当にうれしいです。調理員になってからまだ日が浅く半人前ですが、これからも一生懸命おいしい給食をつくっていきます」と笑顔でコメントされました。
表彰後は優勝校にカメラマンが殺到し、フォトタイムが長くとられました。