• HOME
  • 2011年 第6回大会
  • 決勝レポート

6th contest 2011年 第6回大会

「子どもたちが目を輝かせる給食をつくる」―選手宣誓

いよいよ決勝大会の日だ。開会式に臨んだ選手たちに昨晩の和やかな雰囲気はない。大会実行委員長の銭谷眞美・東京国立博物館長が「この大会は学校給食の最高の大会だ。昨晩はよく眠れなかったかもしれないが、今日は日頃の成果を存分に発揮してほしい。14人の審査員は子どもの気分になって試食させてもらうのを楽しみに待っている」と激励の言葉を贈った。

大会実行委員長の
銭谷眞美・東京国立博物館長が選手を激励

選手宣誓は甲信越・北陸ブロック代表の長野県小諸市立東小学校、学校栄養職員の椙井(すぎい)泰子さんが行った。ピンク色の調理服姿の椙井さんは「私たちは郷土の食材を活かし、安全で美味しく楽しい学校給食を調理するプロフェッショナル精神に則り、子どもたちが目を輝かせて喜ぶ学校給食を作ることを誓います」と、高らかに宣誓した。

小諸市立東小学校椙井泰子さんが選手宣誓

熱気の中、熱闘繰り広げる―調理の様子

安全・安心の入り口は衛生管理だ。丁寧に石鹸で指の間まで洗い、さらにアルコール洗浄も行う。体で覚えた手順。ここから既に審査は始まっている。

1時間の真剣勝負がスタートした。今年はテレビ各局や地元各紙から報道陣が多い。調理実習室の中は、24人の選手の他に報道陣や14人の審査委員などで100人近くに膨れ上がった。熱気も加わり、室内の温度は一気に上がる。

「よろしくお願いします」。どのチームも互いに挨拶の声を掛ける。4口のガスコンロが一斉に着火された。かつお節が鍋の中で踊る。汁ものの決め手は出汁だからだ。煮物の水が沸騰し始めた。あちこちで湯気が上がる。

手洗いチェックから審査はスタート

調理台の上では、野菜のカット。トントントントン。ドンドンドンドン。愛用の包丁がリズムを刻む。地元の生産者の愛情が詰まった鮮やかな野菜が食べやすい大きさに姿を変えていく。手慣れた動きだ。

2人の手は片時も休まない。調理時間は1時間しかないからだ。しかも慣れない調理場で器具も練習とは勝手が違う。「あっ、間違えた」。すぐにやり直す。休んでいる暇なんかない。ロスタイムの余裕はない。汗が噴き出す。

リズミカルに野菜を切っていく

審査委員が調理台の間をぬうように歩き回る。手には採点表。衛生の基本が守られているか。文部科学省の給食マニュアルに忠実か。声掛けはやっているか。厳しい目が光る。

20分が経過した。調理は佳境に入る。煮物が始まった。あちこちから立ち上る匂いのオーケストラが“美味しい給食”の曲を奏でる。唾を飲み込みたくなる。時間も12時に近いのだ。

使った小分けの入れ物はすぐに洗い、拭いて片付ける。整理整頓はすべての基本。衛生的にも乱雑はレッドカードだ。

実習室の窓の外では地元から駆け付けた応援団が心配げに見詰める。岩手からも来ている。手作りの小旗を窓に押し付け、祈るような表情だ。旗には「平泉がんばれ」の手書き文字。応援見学は30人近くに達した。

揚げ物に取りかかるチームが増えた。加熱済みの油鍋が運ばれる。油の中で食材がジュワジュワと音を立てる。頭から尻尾まで食べられるようにじっくりと揚げていく。

揚げ物がジュワジュワとおいしそうに音をたてる

残り20分を切った。時間が気になる。選手の動きが慌ただしさを増した。時間内に後片付けまでしなければならないからだ。早いチームは台の上にトレイが6枚並んだ。盛り付けを始める。自慢の献立が誇らしげに並べられていく。

あと10分だ。順調に後片付けを始めるチーム。ラストスパートに掛けるチーム。3分を切った。ガチャガチャ、バシャバシャ。シンクの中で使い終わった鍋や器具を洗う。

ブザーが鳴った。とにかく終わった。選手の頬がようやく緩んだ。

自慢の献立をどう盛り付けるかも重要なポイント