Blog食育交歓

第5回食育シンポジウム「食育の情報発信を考える」報告・前半

  第5回食育シンポジウム「食育の情報発信を考える」

 

馬場       第5回食育シンポジウム「食育の情報発信を考える」を開始いたします。冒頭に、全国学校給食甲子園実行委員長、銭谷眞美さんからご挨拶をいただきます。

 

 

銭谷       全国学校給食甲子園実行委員長を務めております銭谷と申します。このシンポジウムは、全国学校給食甲子園を実施している認定NPO法人21世紀構想研究会が主催をしておこなうものでございます。食育や学校給食の大切さについてもっと幅広い理解を得ようと、これまで食育に関するシンポジウムを4回開催してまいりました。今回が5回目ということになります。
今回のシンポジウムでは、食育や学校給食について、子どもたちや、あるいはご家族の皆さま、地域の皆さま方にもっともっと理解してもらうためにはどうしたらいいのかということで、テーマを食育の情報発信と名付けて開催をすることにいたしました。パネリストとして、熊本県から松岡先生、広島県から黒川先生、埼玉県から向井先生。そして、新聞教育支援センターの吉成先生にもご参加をいただきました。松岡、黒川、向井の3先生は、実際に栄養教諭として学校給食にも携わっておられるわけでございます。シンポジウムのモデレーターは21世紀構想研究会の馬場錬成が務めさせていただきます。

 

 

馬場       シンポジウムの進行は、冒頭、4人のパネリストの先生方から、「食育の情報発信を考える」というテーマに沿ったプレゼンテーションをしていただきます。後半は、その発表を受けて、パネル・ディスカッションを行います。食育、あるいは学校給食でも結構ですが、情報発信するにあたっての課題はどのようなものがあるのか。それから、どのように向き合っていくのか。解決策はどうしたらいいのか。このような各論について、4人の先生方でディスカッションをしていただきます。

それから、全国から参加いただいている方々からは、チャットを通じてご質問いただき、その内容によっては、パネリストの先生方にもご回答いただく、あるいはコメントいただくという形にして、本日のテーマになにがしかの為になる成果が生み出されることを期待しております。
それでは、冒頭10分間のプレゼンテーションをお願いします。トップバッターは、広島県福山市の黒川夕美先生。続きまして、熊本市の松岡珠美先生。3番手は、埼玉県本庄市の向井未来実先生。アンカーは、新聞教育支援センターの吉成勝好先生。まず黒川先生、よろしくお願いいたします。

 

黒川夕美先生の冒頭発言

「見たい、読みたい、語りたい」を目指して

黒川夕美氏(以下、黒川):      広島県福山市立川口東小学校の黒川です。情報発信には様々な方法がありますが、本日は本校の「食育通信」について話させていただきます。本校は広島県の一番東に位置する福山市にあります。福山はクワイの生産量日本一を誇る市です。

 

 

「食育通信」の目指すのは、見たい、読みたい、語りたい通信です。毎日多くの配布物がある学校で、見たい、読みたい、そして家庭はもとより、校内においても語りたい通信の作成を目指しています。ソフトはWordを使用し、頻度は月1回程度。B4サイズで、両面白黒印刷で配布しています。配布後、本校のホームページにカラー版を掲載しています。対象は保護者ですが、児童、教職員も読者として意識し、作成をしています。内容は、児童の学習、給食時間の様子、給食室の作業の様子、食に関する情報などです。

 

 

子どもの姿が見える紙面製作

これまでの通信を振り返り、6点にまとめた内容を、昨年度配布した通信を使ってスライドで説明させていただきます。まず一つ目は、子どもの姿が見える紙面作成。本校に赴任して4年目となりますが、ちょうど新型コロナウイルス感染拡大防止対策と重なり、保護者は来校する機会が減り、子どもの様子を見ることが困難な状況でした。通信を通して、保護者に子どもの様子を伝え、安心していただきたいと考え、多くの写真や、児童が書いた学習の振り返りなどを掲載することにしました。個人情報に関する掲載については、年度初めに学校全体で保護者の希望を確認しています。

 

 

見出しにも工夫

二つ目は、見出しで引きつける紙面作成です。見出しは文字を大きくし、字体も工夫し、目立つようにしています。「きゅうしょくしつからの挑戦状」や「めざせ3つ星シェフ!」など、読者が何これ、気になるなと見たくなるような見出しを心がけています。夏季休業中には、自由課題「きゅうしょくしつからの挑戦状」を学年別に作成をしています。表面には、教科等に関連した問題を3問。裏面には、食に関する実践を書くようにしています。

 

 

三つ目は、学校と家庭をつなげる内容にすることです。9月に配布した通信では、先ほどの「きゅうしょくしつからの挑戦状」で、児童が家庭で取り組んだ内容を掲載しました。児童が感じたやりがいやうれしさを家庭へ発信し、学校と家庭をつなげることはもとより、児童同士や教職員が学年の壁を越えて、これまで知らなかった児童の姿に気付くこともあります。掲載できない取組みが数多くありますので、それらは校内に掲示し、児童や来校した保護者が見られるようにしました。

 

 

児童が描いたイラストも採用

四つ目は、子ども全員が知っている内容にすることです。給食委員会がゴーヤチャンプルーを食べてほしいという給食室の悩みを解決するために活動した内容を取り上げました。委員会がアンケートをもとに苦手な理由をまとめ、給食室へ解決策を提案しました。提案をもとに調理したゴーヤチャンプルーは、半数の学級が完食し、欠席児童数分を差し引くと食べ残しはゼロとなり、給食室にとって歴史的な一日になったことを掲載しています。紙面右側にありますゴーヤと太陽のイラストは児童が描いたものです。描いた児童は大変喜んでいました。紙面作成にあたって、児童の発言をふきだしにすることで、読者が読みやすくなるように工夫しています。

 

 

五つ目は、子どもも保護者も知っている内容にすることです。音楽発表会で各学年が発表した曲につながりのある国のスイーツを紹介しています。これはとくに児童、教職員が興味を持ち、数多くの反響がありました。
六つ目は、児童の学習と給食をつなげる内容にすることです。この通信では、5年生が家庭科で学習するみそ汁と給食のみそ汁をつなげました。学習内容をさらに深めてほしいと願い、学習したみそ汁と給食のみそ汁のつくり方に共通点があることや、給食での工夫を「ひみつ」として紹介しています。

 

 

学校と家庭 双方向の情報交流
「食育通信」への反応はスライドでご覧のとおりです。授業でカレーのルーが手づくりであることを説明すると、児童から「通信に書いてあった」との発言があったり、児童の写真を撮影すると、「この写真いつ載るん?」と尋ねてきたりします。保護者からは、「うちの子が載っていました、ありがとうございます」とお礼を言われますし、給食調理員からは、自分たちの仕事のことを伝えてくれてありがとうと言われ、作業時の撮影もとても協力的です。引き続き、見たい、読みたい、語りたい通信を目指して作成をしていきたいと思っています。学校と家庭が双方向に情報できる、魅力的な通信にするために、皆さまからのご意見、ご感想をいただければ幸いです。

 

馬場       ありがとうございました。ただ今のプレゼンテーションは、比較的小規模校で、学校の食育通信を主体としての活動を報告していただきました。おそらく全国の多くの学校給食現場、あるいは学校現場が、今発表にあったような状況が一番多いのではないかと思われます。それでは続きまして、熊本市の松岡珠美先生、引き続きプレゼンテーションをお願いいたします。

 

 

松岡珠美先生の冒頭発言

多様な情報発信でフードコミュニティ作り

 

松岡珠美氏(以下、松岡):      熊本市立西原中学校の松岡です。西原中は、生徒数が580人前後で、熊本城から6キロくらい離れたところにあります。共同調理場方式を取っているため、本校(西原中)のほかに配送校を1校抱えております。こちらのほうが大規模校で、1,000食くらい配送しておりますので、合計で1,600食くらいつくっております。

 

 

私たち栄養教諭がどのような情報を発信しているのか、ピックアップしてみた表をお示しします。献立関係の指導資料のほか、献立表とか、調理場だよりなどの紙配布資料、インターネット上でのホームページに活用するための情報などがあります。

 

 

まず指導資料として本校では、「放送原稿」(毎日)と「電子黒板掲示カレンダー」(毎日)、さらに「食テキ動画」というものを月2回作っております。放送原稿は、本校と配送校共通のもので、食テキカレンダーについても、本校と配送校共通のものをつくっております。

 

 

 

「食テキ(テキスト)カレンダー」と「食育だより」

 

食テキ(食育テキスト)カレンダーの一例を紹介します。示しているのは5月2日の、八十八夜のときの食テキカレンダーですが、自分で茶摘みに行ってきた写真をこういうふうに貼り付けて、日本の食文化について紹介をしたところでした。

 

 給食では熊本市の特産品を使っていますので、月に3回ほど生産者からのメッセージを紹介ということで、カレンダーで発信したりもしています。

 

 

紙配布のものとして、「献立表」と「調理場だより」。これは両面刷りで、献立表と調理場だよりは紙配布でまだ古典的な配り方をしています。ペーパーレスがどんどん進んでいるなか、これは冷蔵庫に貼ってほしいなと思って、このまま紙ベースで印刷をしています。
職員だけを対象にした「職員食育だより」も発行しています。アンケートを取って、給食指導改善のためのアイデア集をつくり、職員向けに配布するなどの活用をしています。昨年は、職員向けの食育だより(5枚綴)を2回発行しました。

 

ネット配信の拠点「食育情報局」
インターネット上で情報発信をしている「食育情報局」を紹介します。学校ホームページの中に「食育情報局」を設け、私が担当してほぼ毎日更新しています。1日平均150アクセス、最近では200アクセスくらいあって、毎日見てくださっている人が増えてきているのかなと感じます。誰を対象にして書いているかというと、大体は子どもに向けた語り口調で書いてはいるのですが、保護者さんにも見てもらえるほか、話題によっては卒業生も見てくれているようで、中学校卒業した後の延長線上の食育といったところも念頭に置いた発信の仕方というのを考えています。

 

 

今年、同じホームページ上で「イーターズアイ(eater’s eye)」というコーナーも始めたんですけど、これも毎日更新しています。

 

 

一例を示しますが、掲載するのは給食の時間の様子とか、あと食材ですね。子どもたち食材を見ることができませんので、食材の紹介とか、調理の様子とか、あとは学校の食育の取組みなどを紹介しています。

 

双方向性を目指して

「食育情報局」は今年、フォームズ(Forms)と呼ばれるアンケート機能を使って、視聴者がコメントを寄せられるようにしました。いたずらがあるかなと最初は二の足を踏んでいたのですが、いたずらは一つもなくて、皆さんきちんと記名して、しっかりコメントしていただけています。

 

 

一般的なブログやツイッター(Twitter)のような双方向性まではいかなくても、それに近い1.5方向性くらいは実現できるようになったかなと感じています。

私が考えている情報というのは、調理に似ているかなと感じています。素材があって、下ごしらえをして、料理を食べるといったこの工程が、元情報を受け手の学びになるような情報に私たちが変換をし、それを発信するといった工程と似ているなと思っています。

 

ードリテラシー向上が栄養教諭の役割
栄養教諭があつかう情報として、献立とか、食材とか、栄養価とか、いろいろなイベントとかありますが、お母さんたちはふつう見られません。そういった様子を発信するネタというのがたくさんあって、栄養教諭が発信しなければ注目されない話題というのを、どのようにしてフードリテラシーの向上といったところを目指して発信できるかといったところが、私たちの役割ではないかなと思っています。

その情報が、受け手のフードリテラシーの向上。そして、情報によるフードコミュニティの形成につながればと願っています。食育の土台となるのはやはり家庭ですので、家庭を食育に巻き込むツールになればということで、そこを目指して、今後も頑張っていこうと思っています。

 

 

 

 

馬場       ありがとうございました。大変重層多岐にわたる活動内容でございまして、よく一人でここまでやっているなというふうに感心して聞いておりました。それでは先に進めて、埼玉県本庄市の向井先生、お願いします。

 

 

向井未来実先生の冒頭発言

多言語発信で国際化にも対応

 

 

向井未来実氏(以下、向井):本庄上里学校給食センター栄養教諭の向井です。本給食センターは、埼玉県本庄市にある本庄地域と上里町の小中学校18校に、約7,000食を3コース、3献立で提供しています。職員は両市町の一般職員4名、アレルギー対応給食調理員2名、栄養教諭、栄養士3名、アレルギー対応給食担当の栄養士1名です。調理は民間委託をしていて、委託調理員、配送員、約60名という職員構成です。食を通して子どもたちの心身の健全な育成を図るという基本理念のもと、安全安心でおいしく楽しい給食を目指しています。

 

 

四本柱の情報発信
本センターでは主に、ホームページ、給食だより、食育だより、ツイッター(Twitter)の四つから、食に関する情報を発信しています。発信間隔ですが、ホームページは、献立表や食物アレルギー情報、食材産地情報を1カ月ごとに更新。献立写真は、毎日Bコースの写真を撮って載せています。給食だよりは献立表の裏面に載せ、月1回。食育だよりは食育月間の6月と、彩の国ふるさと学校給食月間の11月の年2回。ツイッターは毎日更新しています。

 

 

情報発信の対象は、児童生徒、保護者、教職員、地域の方々。ホームページやお便り以外にも、各学校の学校保健委員会、給食試食会、地域イベントなどで情報提供をする場面があります。

 

ホームページは、ページ作成と更新管理をおこなう会社に依頼して作成しています。主な掲載内容は、献立予定表。こちらは学校に配布していますが、ホームページからも見られ、印刷もでき、過去の献立も見ることができます。それと給食カレンダー、各月の明細献立表、食材の産地、給食レシピ、給食センターの1日の紹介、食物アレルギー情報、食育の取組みなどです。その他にも、給食計画、試食会と見学会の案内、給食に関するQ&Aなどを掲載しています。

 

 

これは給食カレンダーのページです。1カ月ごとに献立が載っていて、クリックするとその日の献立の写真が見られるようになっています。この写真はその月の担当の栄養教諭、栄養士が写真を撮って毎日アップロードしています。保護者の方から、献立名だけではなく、子どもが食べているもの、今日どんなものを食べたのかがわかってうれしいと言っていただいています。

 

 

外国出身居住者にも対応
本庄市では、広報本庄や家庭ゴミの分け方、出し方といった、様々な情報をカタログポケットというサイトを利用し、多言語(日本語以外に9言語)で配信しており、その一つに給食献立表があります。給食センターも本庄市のサイトにリンクしていますので、様々な言語で献立表を確認いただくことができます。

 

こちらは明細献立表です。1カ月ごとにアレルギー対応給食担当の栄養士が作成しています。その日に提供する献立の材料と1人分の量がわかります。食物アレルギーのある児童生徒のための参考資料として、各学校に配布をしていますが、ホームページにも掲載しているので誰でも見ることができます。月ごとの食材の産地も掲載しています。加工食品、調味料以外の食品の産地です。農作物は、地域の農協の方の協力のもと、地場産物を優先して使用しています。

 

 

食物アレルギーへの対処
給食センターでは、乳、卵、甲殻類に対する食物アレルギー対応給食をおこなっています。そのための資料として、給食センターと教育委員会で作成した食物アレルギー対応の手引き、原材料配合表、明細献立表、アレルギー対応給食の写真を掲載しています。この情報は食物アレルギー担当の栄養士が帳票類を作成し、掲載しています。

 

 

 

フォロワー増えつつあるツイッター

2011年12月からツイッターを使い、日々の給食を中心に、給食センターのイベントなどについてもつぶやいています。月の担当の栄養教諭、栄養士が、調理場の様子や食材の写真を撮影し、毎日の給食について載せています。アレルギー対応給食があるときは、アレルギー対応給食担当の栄養士も発信しています。つくっているところの動画や、アレルギー対応給食に関するツイートは、とくに注目されることが多いです。給食に関する情報を、堅すぎず、親しみやすい表現で気持ちを込めて発信するようにしています。

 

 

「いいね」やリツイートが多いとこちらもうれしいです。フォロワー数も少しずつ増えていて、見てくれている人が増えてきていると感じています。センター方式の給食ではつくり手の顔が見えないので、少しでも身近に感じてほしい、知ってほしいという気持ちを持っています。不特定多数の人々への発信になるので、軽率な発信にならないように、文章と写真は気を付けています。

 

 

課題は双方向の情報交流
「給食だより」、「食育だより」についてですが、子どもたちにも読みやすいように、小学校と中学校で表現を変えたり、難しい漢字にはルビを振るようにしたりしています。地場産物の紹介記事は、生産者の方のお話をもとにつくるようにしています。生育状況を見せてもらったり、大変なことや食べる人への思いなどを聞いたりして記事にしています。こちらも月ごとに献立を作成した栄養士がつくっています。

 

ホームページを見た他市町村から、食物アレルギー担当に関する問い合わせがあり、情報交換をさせていただいたり、保護者や先生からツイッターを楽しみにしていると話していただいたりします。保護者をはじめ、卒業生やその他の人から、メールや電話での問い合わせもあります。情報発信はいくつかの方法でいろいろな人に向けていますが、こちらから一方的になりがちです。もっと手軽に、双方的なやりとりをできるようにするのがこれからの課題です。

 

馬場       ここまで学校現場、あるいは給食センター現場からの報告という形でプレゼンテーションをいただきました。続きまして、吉成先生から、情報発信について様々な観点からご発言をお願いいたします。

 

 

吉成勝好先生の冒頭発言

「待たれる、読まれる、役立つ」情報発信目指して

学校現場からの情報発信のあり方について長年関わってきた立場から発言させていただきます。読者に心待ちにされる、実際に読んでもらえる、そして受信者にも発信者にも役立つことが実感できる食育情報の発信のためにはどうしたらよいか、3人の方の素晴らしく示唆に富む実践発表に触発され、私なりに六つの面からヒントを考えてみました。

 

 

第1のヒントは通信のネーミングです。魅力的な、親しまれる通信名にしたいと思います。全国にはステキな名前の食育通信がたくさんあります。以下は私のコレクションの一部ですが、たとえば「ぱくぱくだより」、「もぐもぐ通信」など、いいですね。学校の特色や子どもたちの実態、食育のねらいなどから、独自の通信名を考えてみたらいかがでしょうか。

 

 第2のヒントは、「企画」の大切さです。通信で取り上げる内容、コンテンツに関しては、誰に向けて、何を、どのように書くか。とくに重視したいのは、自分の自治体、自校の子どもの食の現状とか課題、それに対する家庭への食改善への支援。先ほど西原中学校で「フードリテラシーの向上」ということを話されましたが、これは企画として素晴らしい着眼で、私も目を見張りました。大きな問題提起だと思います。

 

 

三現主義で取材を

第3は「取材」です。発信のためには、まず受信が必要ですが、取材と言い換えるとよりはっきりすると思います。常時観察、常時取材ということをよく言いますけども、ともかく周りをよく見ること。ネタは身近に転がっています。そして、何かありましたら三現主義、つまり、現場に行く、それから実際の実物を見る、そして当事者の話を聞くということが大事だと思います。また、本を読む、新聞、テレビ、映画を見ること。教職以外のお友達とのおしゃべりの中で意外と企画のヒントがつかめることもあります。ある学年とか学級を継続して観察する定点観測をしてみると、いいネタがつかめると思います。

 

 

 

見出しの重要さ

第4は「見出し」です。たくさんの情報の中で、何はともあれ読んでもらうためにはそれなりの工夫が必要です。それが見出し、キャッチコピーです。先ほどの川口東小の食育だより、とってもいい見出しがたくさんあるので感心しました。見出しのつけ方にはいろいろあります。一番重要なことをズバリ言う。具体的な数字とか固有名詞を入れる、専門用語や難解な言葉は使わないなど様々なことがありますけど、私たちは見出しづくりの素人ですよね。新聞や雑誌、ネットなどでいい見出しを見つけたら、そこからまねしたり、学んだりすると、自分の見出し感覚を鍛えることができるのではないかなと思います。

 

 

双方向性のための工夫を

第5、私が情報発信の課題としてこれから特に重視したいと思うのは、双方向性ということです。一方通行ではやはり不十分ですね。双方向性のある通信のためにはいろいろな手立てがあります。調査をしてみる、アンケートを取る、子どもや保護者に話を聞く、読みものを入れたり、読者の声の欄をつくったり、クイズを出したり、投稿ポストを設けている学校もありますね。読者の声を収録した号外とか付録とか、声を集めた特設のページを作ったりすることも考えられます。この面で感心しましたのは、一方通行になりがちな給食センターで、これからは双方向性を志向していきたいという上里学校給食センターの例。素晴らしいことだと思いました。

 

 

 

紙媒体とネット利用の棲み分けを

第6のヒントです。これからは、紙媒体とWeb、ネットをどう結びつけていくか、棲み分けるかということが大きな課題になると思います。先ほど発表になりました西原中学校、すごいですね。紙もネットも様々なものを網羅していると思います。ただ、全国の栄養教諭の皆さんがそのままマネするのはなかなか難しいでしょうね。どう対処すればよいか、これからのどの学校、どのセンターでも課題となると思います。 紙、ネット双方を比べてみましょう。紙の場合は手渡ししますので、子どもが家に持っていけばほぼ確実に届けることができます。ネットは、どこでもいつでも開くことができますが、閲覧率、フォロワーの数からいうと、全体からいえば非常に少ないので、みんなが見るということがなかなかできていない現実があります。ネット環境が整えられていない家庭もあります。また、紙の場合は紙面が限られていますから、たくさんは載せられません。精選した、これぞというものを載せようという意識で作るので、一見して「これを読んでもらいたい」ということがすぐわかります。ネットの場合は、情報量はほぼ無限に入れられます。写真もたくさん、動画も・・・と、これはすごく優れた点ですが、逆にいうと、あまりにも情報量が多い。それを全部見るには時間もかかったり、鬱陶しくなったりして、敬遠されるということがあります。

 

 

発信前のチェックも重要

何よりも、我々人間がやることですから、間違いとか問題のある情報、誤報ということもあります。紙の場合は回収や訂正が割に容易にできますが、ネットでは一度出たものは取り返しがつきません。アッという間に拡散をしてしまいます。ですから、発信前のチェックがすごく重要ですし、もし何か問題があったときにどう対処するかということも、事前に備えておかなければいけないと思います。それぞれの良さと欠点を認識しつつどのように連携するか。連携の例の一つとして、紙の通信にQRコードを載せて、それをチェックすると動画が見られる、画像もたくさん見られるということをしている通信もあります。それから、今話題のChatGPTなどを、これからの通信づくりにどのように盛り込んでいくかも、大きな課題になるのではないでしょうか。

 

 報告・後半はこちらへ