Blog食育交歓

夏休み第6回食育ワークショップを開催しました

テーマ:「学校給食甲子園入賞レシピを作ってみよう!食育も学んだよ」

主 催:認定NPO法人21世紀構想研究会 全国学校給食甲子園

対象者:小学4年生から高校生(保護者同伴、調理ができる場所とオンライン環境が必要)

日 時:2022年8月6日(土)午前11時00分~午後2時00分(3時間)

参加費:無料

食材について:金芽米、じゅうね、きざみ緑茶、粉茶は事前送付、その他の食材の準備と食材費はご負担をお願いしました

講 師:菊地万里子先生(岩手県奥州市立胆沢学校給食センター上席主任栄養士、第14回・第16回全国学校給食甲子園決勝大会出場)

作り方・ご家庭で作りやすい分量(4人分)配布用レシピpdf

 

 

8月6日(土)、第6回食育ワークショップをオンライン(ZOOM)を使って開催しました。

講師は昨年第16回決勝大会に出場した岩手県奥州市立胆沢学校給食センター・上席主任栄養士の菊地万里子先生です。この日は奥州市スタジオから菊地先生と東京渋谷の事務局スタジオをつなぎ、参加者は岩手、千葉、東京、神奈川、大阪の6チーム12人が参加しました。

今回の食育ワークショックは給食甲子園入賞献立「郷土料理と姉妹都市」がテーマ。

献立は「金芽米ごはん」「なかよし茶葉っと」野菜のじゅうね和え」姉妹都市を結ぶ静岡県掛川のお茶をつかった「とりささ身の香り焼き」にチャレンジしました。

 

岩手県奥州市スタジオの大きなモニター

 

 

午前10時45分からオンラインの接続準備が始まりました。この日は小学4年生3人、小学6年生2人、中学3年生1人と保護者の参加です。調理前にだし汁をとること、調味料の計量の事前準備をお願いしました。

開始時間11時には6チームがご自宅のキッチンに立って笑顔で勢揃い。事務局から1チームずつご紹介をして、いよいよ調理開始です。

 

調理スタート!

岩手スタジオの菊地先生から「お米の金芽米2合を炊きます。炊飯器のスイッチを入れてください。」最初にじゅうねあえの野菜を切ります。「小松菜はざく切り、にんじんは千切りにします。」にんじんを子どもたちが画面で見せながら千切りの大きさの確認をしていきます。

野菜のじゅうね(えごま)和えの食材と画面からにんじんの千切りを確認

 

はっと作りに挑戦

「次ははっと2種類を作りますよ。小麦粉をふたつにわけて片方はそのまま、もう片方には粉茶をいれて水をすこしずつ、手を使ってよーく練ってください。できあがった2種類のはっとは少しねかせておきます」

なかよし茶葉っとの材料と小麦粉を練ってつくった2種類のはっと

 

「なかよし茶葉っとの具材、野菜を洗いましょう。皮をむきだいこん、にんじんはいちょう切り、ごぼうは半月切り、生椎茸はうす切り、ながねきはななめ薄切りに、生揚げは拍子切りにします。」ここでも包丁をつかって時々画面で切った野菜を見せながら先生と確認です。この下拵えの調理作業には時間を要しましたが、全員の子どもたちががんばりました。

菊地先生から画面を通して野菜の切り方を教えていただき具材を準備

 

切った野菜をだし汁の鍋に入れて煮ていきます。「あくは取っていいですか?」と質問が入ります。オンラインで菊地先生がこたえていきます。

「さぁ次は別の鍋に湯を沸かして、ねかせておいた2種類のはっとを一口大にのばして熱いお湯のなかに入れます。大きさはこのくらい。」手元のカメラアップで示します。「浮きあがってきたら、すくいあげて冷水に入れます。ぬめりをとりましょう。鍋で煮ている野菜がやわらかくなっていたら生揚げ、なめこ、はっとを加えて調味料で味付けをしてできあがりです。」

きざみ緑茶のはいった衣とお茶の香りがたっぷりの焼き上がり

 

ゴールが近づいてきましたよ!鶏肉の香り焼きです。小麦粉に刻み緑茶をいれて衣を作ります。「衣はこのくらい」とカメラアップで確認です。とりささ身をボールの衣にからめてフライパンで両面をこんがり焼いていきます。芳ばしいお茶の香りが漂います。

「できた!できた!」あちこちの画面から聞こえてきます。「さぁみなさんうつわに盛り付けをしましょう。」「いただきます」のごあいさつをして試食タイムに入りました。

 

 

 

 

食育のおはなし「つないでいこう!私たちの郷土料理」

午後1時30分からZOOMを再開。画面に戻ってきた子どもたち一人ひとり試食の感想を聞くと「おいしかった!」「お茶の香りがした」「お米の金芽をみつけた」おいしい笑顔があふれていました。

共有画面に切り替え、菊地先生から「つないでいこう!ー私たちの郷土料理ー」をテーマに食育のおはなしです。まず菊地先生が暮らす奥州市についての紹介からはじまりました。

 

 

 

奥州市は岩手県の南部、南の方にあって、西側を奥羽山脈、東側を北上山地にはさまれていて、盆地の地形になっています。市を縦断するように大きな北上川が流れて奥州市全域が自然に恵まれています。この大自然により、たくさんの地場産物ができています。

 

奥州市の主な農産物は、お米(ひとめぼれ、江刺金札米(えさしきんさつまい)、金色の風など)、全国でも有名な前沢牛、奥州牛、江刺りんご。伝統産業の「南部鉄器」は歴史も古く平安時代後期に藤原清衡が滋賀県より鋳物師を招いて始めたとされています。

秋には、その鋳物で作られた大きな鍋を使い、公園で「芋の子汁」を作り市民に振舞われるイベントもあります。

右下の写真は、「奥州宇宙遊学館」にある大きな白いアンテナです。「奥州宇宙遊学館」の所長、本間希樹所長はブラックホールの撮影に世界で初めて成功したプロジェクトの一員で有名な方です!その他にも奥州市でいま、最も熱い人といえば、ご存じ大リーガーの大谷翔平選手。大谷選手のふるさとでも有名な奥州市です。

 

 

さて、今日みなさんと一緒に調理した献立のお話にもどりましょう。本日の献立は金芽米ごはん、とりささ身の香り焼き、岩手野菜のじゅうねあえ、なかよし茶葉っと、牛乳でしたね。

お茶を練りこんだ「はっと」が奥州市の郷土料理でした。小麦粉を練って、のばして・・・どうでしたか?この「はっと」は、岩手県内、地方によって呼び方が違います。

「すいとん」とか、「ひっつみ」、「つめり」、「とってなげ」などと呼ぶ地域もあります。むかしお米が食べられなかった時に、小麦粉を使い作って米の代わりにして食べたという話も聞きました。また、あまりのおいしさに農民が米の生産を怠るのではないかと心配したお殿様が食べることを禁止したこと「ご法度」から「はっと」と呼ぶようになったという言い伝えがあります。

みなさんの住む町、都府県にはどんな郷土料理がありますか??少し教えてもらえないでしょうか?教えてもらえたらうれしいです。参加者と対話がはじまりました。

 

 

みなさんの住む町の郷土料理を先生も調べてみました。たくさんあって、そして、どれも「食べたい!」って思うようなものばかりでした。東京は深川めし、佃煮、もんじゃ焼き。大阪は白味噌雑煮、丁稚ようかん、小田巻き蒸し。神奈川はけんちん汁、のらぼう菜のおひたし、かて飯、千葉は金山寺みそ、なめろう、岩手県はきりせんしょ、がんづき、すき昆布の煮物などです。みなさんの住んでいる町の郷土料理も、個性があり、そして、どれもが食材を工夫して調理していておいしそうですね。

 

 

さて、そもそも、郷土料理はどんな料理なのでしょうか?

郷土料理とはみなさんが住んでいる地域の産物、「地場産物」と言いますね。

その産物を上手に活用して、四季折々の自然の恵みを大切にして元気に生き抜くために知恵をしぼり、工夫して、その土地に合った食べ物にしたものです。そして、その食べ物を今日まで受け継がれてきました。これは、その土地の歴史や、文化、食文化と一緒に受け継がれています。

郷土料理は「そこに暮らす人々の知恵の結晶」といえると思います。

郷土料理を知ることで①土地の風土や歴史、風習を知ることができます。②むかしの人々が大切にしていた日々の暮らしが見えてきます。現代に生きている私たちは、郷土料理、歴史、生活の様々なことを大切に守り、未来につないでいく必要があります。

今日、みなさんと一緒に作った奥州市の郷土料理でした。郷土料理はほかにも全国にはたくさんあります。おじいさん、おばあさんに聞いてみたり、本で調べたりするのもいいですね!

 

 

さて奥州市には姉妹都市が全国に3カ所あり、そのひとつが静岡県掛川市です。掛川市は、お城と歴史の町と呼ばれています。この写真は掛川市さんからお借りしたものです。

掛川市は温暖な気候なので、いちごやメロン、そしてお茶の栽培が盛んです。右側の写真は、茶畑の写真です。このような鮮やかな茶畑は、雪国岩手では見ることはできません。

今日、調理してもらったお茶は、こちら掛川市の掛川茶でした。みなさんの住む町にも姉妹都市があると思います。日本のどこの町なのか?または、世界の国の町とも姉妹都市を結んでいるところもあります。姉妹都市のことを調べてみたり、どうしてその町と姉妹都市になったのかという経過を調べるたりするのも素敵です。

 

今はなかなかコロナで県外や外国に行くことが難しくなっているかもしれません。でも、自分の町のこと、郷土料理のこと、そしていろいろな町のことを「考えること」「想いを寄せること」はできます。もしかしたら、「今」だからこそ出来ることなのかもしれません。

 

今日はこのような機会をいただきオンラインでみなさんとも出会えることが出来ました。そしてみなさんの住む町のことを知ることが出来ました。今日参加されたみなさんは、「食」そして、「食べること」を大事にされているみなさんだと思います。これからもぜひ、その気持ちを大切にしていただけたらと思います。

本日はありがとうございました。

 

子どもたちからの感想

3時間にわたる食育ワークショップの最後に子どもたちから感想を聞いてみました。

☆はっとを作るのが楽しかった。もう一度作ってみたい。

☆とても楽しかった来年も参加したい。

☆鶏肉とお茶が合うことを知らなかった。

☆先生の食育のおはなしで献立名の意味がわかった。

☆もちもちしておいしかった。金芽米のお米の金色がみえました。

☆お茶の香りがおいしかった。

 

チャレンジ参加証

今回食育ワークショップへ参加してくれた子どもたちへ主催者より「全国学校給食甲子園調理チャレンジ参加証」をお送りしました。

 

まとめ

オンラインでは3回目のZOOMを使った食育ワークショップを開催しました。参加者から調理について質問がリアルで対応できたこと。粉もの、たくさんの具材を包丁で切る、煮る、焼く調理作業は声をかけあって調理行程を終え完成することができました。

食育のおはなしでは岩手県奥州市の郷土料理「はっと」について歴史と食を学ぶことで、参加者が住む地域の郷土料理について探求するきっかけになりました。姉妹都市とのつながりを通して、お茶の葉をつかった献立が誕生した温かな交流を知ることができました。また先日大記録を達成した奥州市出身の大リーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が少年時代「はっと汁」の給食を食べて大きくなった。ワクワクするお話を聞いて今回同じ献立を作ったことを、とても誇らしく思いました。

来年度も学校栄養士の先生、自治体関係者ともオンライン等のご協力いただき連携して全国どこからでも参加できる夏休みの食育イベントを計画、実施してまいります。

この度は食材など奥州市の生産者、流通業者の皆様、施設の皆様にお世話になりました。

 

参加者の皆様、講師の菊地万里子先生ありがとうございました。

 

報告:全国学校給食甲子園事務局 峯島朋子(2022年8月12日)