食のこばなし

水餃子と焼き餃子

NO.88

中国には焼き餃子がない

日本では餃子と言えば、焼き餃子のことを言います。ところが餃子発祥の地の中国では、水餃子のことを言います。それを知ったのは、いまから25年ほど前に北京に取材に行ったときでした。

滞在しているホテルの隣りに餃子を看板に掲げる食べ物屋さんがあり、ランチ時には行列して待っており、すべて中国人ばかりでした。なぜ、そんなに人気があるのかある日、並んで入ってみました。

驚いたことに、どのテーブルのお客さんも、大きな皿にてんこ盛りした水餃子にかぶりついています。メニューには、50種類くらいの水餃子の名前と具の内容が書いてあります。

肉だけでも、牛、羊、豚、鶏、魚などがあり、これにニラ、キャベツ、ハクサイ、キノコなどをアレンジしたもので、覚えきれないほど多様な餃子の種類です。適当に注文しましたが、皿に30個ほど盛り付けた水餃子が出てきました。

周囲の人々の食べ方にならって、黒酢を振りかけ赤トウガラシとニンニクを付け込んだタレも振りかけて食べ始めたら、これがびっくりするほど美味しい。中国の人々は、水餃子を30個ほど平らげ、ランチにしています。最後に皿に残ったタレにお湯を注いでもらい、おいしそうに飲んでいます。

お湯をついでくれる人が店内を回っています。このお湯は、水餃子を煮た後のお湯であり、日本でいえば「蕎麦湯」のようなものだったのです。

それからはすっかり水餃子ファンになり、北京市内にあるいくつかの水餃子専門店を回りました。

焼き餃子は日本が発祥だった

日本のことをよく知る中国人に言わせると、日本の焼き餃子は餃子ではないと言うのです。「焼き餃子は、南の方に行くと食べている」とも聞きました。また人によっては、南の方は餃子を煮てワンタンにしたとも言っていました。

中国大陸は大きいので北と南では気候風土がまるで違う。北京より以北の人たちは、餃子と言えば水餃子のことを言います。

水餃子は、旧正月を祝う定番の料理であり、どこの家でも競い合って美味しい水餃子をたらふく食べて、お正月を祝うということでした。

今回、改めて餃子の歴史を調べてみました。そこでいま先端を行くChatGPTに「焼き餃子の発祥の地はどこですか?」と聞いてみました。

ChatGPTの答え

「焼き餃子の発祥の地は、日本です。焼き餃子は、中国の水餃子から派生して、日本で独自のスタイルとして発展しました。日本の焼き餃子は、主に餃子の一側を焼き、もう一方は蒸すことによって作られます」

そうだったんだ! ChatGPTがすべて正答とは限りませんが,筆者が考えていた通りの回答でした。やはり焼き餃子は日本が発祥だったんだ。中国の友人は「焼き餃子はね、残った餃子を翌日に食べるとき、傷んでいるかもしれないので、焼いたものなんだ」というのです。

確かに中国でも気候の暖かい南の方では、傷んでいることを用心するのか、焼き餃子を食べているということを聞いていました。

中身は同じだが煮るか焼くかの違いだけ

餃子の具材を中国人は餡(あん)と言います。豚肉、キャベツ、にら、キノコ、ニンニク、しょうがに各種調味料などが代表的なもので、さらに好みで様々な肉と野菜がアレンジされるので100種類はありそうです。

餡を包むのが円形の薄い皮です。この皮の作り方には、中国の各家庭で秘伝の業(ワザ)があるようで、小麦粉をコネコネするだけではなく、綿棒で丹念に伸ばしてはこねることを繰り返しています。

我が家で餃子パーティをしたときに、中国人はすべて自分で皮を作っていました。市販の皮を使うことに抵抗があるようで、「これぞ秘伝の皮」という顔つきでした。

日本と中国の餃子の違いは煮るか焼くかだけのように思えます。しかし食べたときの食感がまるで違います。焼き餃子はパリッとした皮の食感と餡の中身を楽しむのですが、水餃子は皮と餡を一緒に食べることで独特の食感を楽しむことができます。

日本の焼き餃子は、主としてご飯のおかずですが、中国の水餃子は、食事そのものです。てんこ盛りの水餃子を30個や40個、たらふく食べて満足することが餃子文化になっているように感じます。

 

紀元前からあった餃子

餃子の起源は古く、中国人に聞いたところでは、紀元前3000年ごろが餃子の起源とも言われているそうです。最古の餃子は紀元前6世紀の遺跡で発見されているそうです。

日本で餃子が広がったのは、戦後、中国東北部(旧満州)から引き揚げてきた人々が、中国で教えてもらった餃子を日本でも作って食べ始めたからという説が有力です。

昭和22年(1947年)に東京・渋谷駅前に引揚者によるフリーマーケットができたとき、「有楽」というお店が餃子をだしたところ大盛況だったことから、一挙に広がったようです。

余談ですが、筆者が東京理科大学知財専門職大学院教授をしていたとき、研究室に中国人留学生が所属してきました。彼は成績優秀で、修士論文発表会で第3席になり大手企業の知財本部に就職しました。

5年ほど勤務し、家庭の都合で中国料理店の経営者に転進しました。そこで水餃子を売り物にして通販展開したところ、ファンがあっという間に広がっていきました。

清緑園の水餃子 https://shop.sugamo-gyouza.jp/

北京で筆者が最初に水餃子を食べたときから、日本人の口に合うのはこれだと確信しましたが、その予感が静かに広がっているようです。

世界には餃子に似た食べ物が各地にあります。韓国の「マンドゥ」とかモンゴルの「バンシ」、ロシアの「チチラー」、イタリアの「トルテリーニ」などがあります。

文:ばばれんせい 絵:すなみゆか

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