食のこばなし

ビール

NO.85

酷暑に飲む冷えたビールは最高

筆者の近所のコーヒーショップにいくと、広間から女性客が何人もビールをグイっと飲んでいました。今夏の酷暑は歴史に刻むほどの異常気象だから当たり前と思いましたが、それにしても女性が昼間からグイッは頼もしい。

あるとき気が付いたら、そのコーヒーショップで一番安いのが190円のビールの小瓶でした。注文を受けるカウンターの掲示に、デカ文字で190円とあり、その店で一番安い飲み物でした。飛ぶように売れるのは当然であり、筆者も知った以上はもうこれ以外は注文しなくなりました。

暑いさなかにガンガンに冷えたビールをぐいっと飲み干す一瞬は、生きている証を感じさせてくれます。冷えたビールは当たり前と思っていましたが、30年ほど前に当時の旧ソ連に行った時、現地の人々は常温でビールを飲んでいました。少し前までは中国でも冷えたビールはなく、レストランで飲む場合は、事前に冷蔵庫に入れておくように注文を出すか、氷を入れたコップにビールを注いで冷やし、飲むようにしていました。

パンを砕いて自然発酵がビールの起源

ビールの誕生には諸説あるようですが、紀元前8世紀までさかのぼるということのようです。人類文明のあけぼのとも言えるメソポタミア文明にはすでにビールの原型が飲まれていました。

ナイル川流域の肥沃な土壌で育った大麦を乾燥させ、粉にしてパンを焼きあげこのパンを砕いて水を加え自然発酵させたのがビールの原型になったということです。古い文明の遺跡から、製造や飲用の痕跡が出てきて分かったのです。

中世のヨーロッパでは、当時の知識人であった修道士や僧侶が醸造知識にも優れていたことからビール醸造にも工夫が重ねられ、徐々に今に近い上等なビールが修道院などで作られるようになっていきました。

11世紀後半になるとビールにホップを使用するようになり、品質が飛躍的に向上したのです。ホップは多年草のつる性の植物であり、夏に収穫したものを使用しています。ホップによってビールに独特の芳香と苦味を与え、過剰なたんぱく質を沈殿させるのを利用して、清く澄んだビールが作られるようになったのです。その頃のビールは医療用として飲まれ、栄養補給にも利用されていたようです。ビールの語源は、ゲルマン語で穀物から来たという意味の「ベオレ」からきたと言われています。

ビールの保存法で貢献したパスツール

ビールがこんなにおいしい飲み物になった貢献者は、細菌学者のルイ・パスツールでした。パスツールは、葡萄酒の再発酵を防止する低温殺菌法を発明しましたが、ビールにもこの方法を導入したために変質しないで長期間保存することが可能になったのです。おいしいビールの起源になったのです。

日本にビールが入ってきたのは、欧米の船が来航するようになってからです。ぺりーが来航した嘉永6(1853)年には、漢方医の川本幸民がオランダ書にあるビールの醸造方法を見ながら自宅でビールを醸造したと言われています。

明治3年には、アメリカ人のコープランドが横浜で本格的にビールの醸造を行い、居留外国人向けに販売したとの記録も残っています。その2年後には、大阪の渋谷正三郎が日本人として初めてビールの醸造・販売を始めました。

それから間もなく甲府や札幌などでもビール醸造が始まり、一時は全国で100社余りのビール醸造業者が生まれました。明治前期のハイカラ族は、ビールを飲んで文明開化を楽しんだのです。

世界中どこでも地ビールがあります

ビールの定義は酒税法で定められています。麦芽・ホップ及び水を原料にして発酵させたものであり、アルコール分が20度未満であることがその大略の定義です。

ビールは、消費者の嗜好が多様化してきたことやライフスタイル・食事の多面化などによって多くの種類が作られるようになったのです。原料の使用方法、酵母の種類、熱処理の仕方などによって、多種類のビールが市場に出てきています。

世界中どこへ行っても地ビールがあるので楽しめますが、筆者が好きなのは、ドイツのケルン特産のケルシュ・ビールです。色が濃く、アルコール分は4~5パーセントほどです。アメリカのビールは副原料のトウモロコシを多量に使ってホップの苦みを抑え、炭酸ガスの含有を高めて清涼感を強くした低アルコールビールであり、こちらも大好きです。

アルコール度が10パーセント以上のビールもあります。ベルギーのビールにはこの種が多く、飲んだ感じは普通のビールと同じなので、いつもの調子で飲んでいるとたちまち酔いが回って大慌てということもあります。

酵母には栄養も豊富

ビール酵母はビールを醸造するときに使う微生物であり、麦芽汁の栄養分で増えていき、麦芽汁をアルコールと炭酸ガスに変えていきます。ビールが出来上がった頃には栄養分をたっぷり含んだ酵母になっているので、この状態のビール酵母からアルコール分や苦み分を除去して乾燥させたものはサプリメントとして利用されています。

ビールにはビタミン・ミネラルも豊富に含まれており、ホップには鎮静・催眠・抗菌作用などがあります。ビールを飲むと「ビール腹」に代表されるように肥満になると言われていますが、科学的な根拠はなく、おつまみを食べ過ぎるので肥満になるというのが本当のようです。

文:ばばれんせい 絵:すなみゆか

令和3年(2021年)都道府県別ビールの生産量

     順位 都道府県 数量
 1 茨城県 271,545kl
2 大阪府 211,995kl
3 愛知県 186,963kl
4 神奈川県 179,760kl
5 千葉県 126,480kl
6 福島県 105,678kl
7 北海道 80,180kl
8 静岡県 77,086kl
9 宮城県 71,621kl
10 群馬県 64,023kl
11 京都府 61,094kl
12 兵庫県 60,737kl
13 岡山県 52,105kl
14 東京都 43,947kl
15 大分県 41,372kl
16 滋賀県 38,966kl
17 愛媛県 37,185kl
18 沖縄県 28,389kl
19 熊本県 10,678kl
20 長野県 5,611kl
21 新潟県 4,267kl
22 栃木県 3,242kl
23 埼玉県 2,181kl
24 岩手県 1,530kl
25 山梨県 1,133kl
26 石川県 331kl
27 和歌山県 188kl
28 山口県 160kl
29 秋田県 151kl
30 鳥取県 145kl
31 宮崎県 132kl
32 奈良県 122kl
33 富山県 104kl
34 島根県 90kl
35 香川県 76kl
36 山形県 74kl
37 青森県 71kl
38 広島県 65kl
39 鹿児島県 43kl
40 福井県 20kl

出典:市域のいれもの

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