食のこばなし

ニシン

NO.93

海面が盛り上がるニシンの大群

北海道の余市や小樽にあるニシン御殿を訪れた人は、その昔ニシン漁でにぎわった往時の様子が眼前で展開されているような錯覚を覚えます。網元の住宅と漁に従事する労働者(ヤン衆)が宿泊していた部屋、沖合にニシンの大群が来るのを見張る見張り台など和洋折衷の豪華な造りに引き込まれます。

ニシンを「春告魚」と書きます。春になると寒流の回遊魚となって北海道沿岸に現れました。大群が押し寄せてくると海の色が白くなったと言われています。これを「群来(くき)」呼んでいました。

メスが藻に産卵し、付着した卵にオスが精子をかけます。放出した精子の色で、海の色が白くなったと言われています。大群が海面を盛り上げ、海中に刺した竿が倒れないほどニシンが折り重なるように泳いでいたと言われています。

最盛期には85%が肥料だった

江戸時代から大量に獲れたニシンですが、当時は保存方法がないため食料としてはほんの僅か消費されるだけでした。大部分は農作物の肥料となって、菜種、藍、綿花栽培などの価値の高い肥料となっていました。

北海道のニシン漁が本格的になるのは、明治2年(1869年)北海道開拓使が設置され、本州からの移民が開始されてからです。渡ってきた和人が漁獲したニシンのほとんどを肥料としたので、ニシン漁の最盛期には、全体の85%を肥料になったということです。ニシンから魚油を絞った残りの締粕(しめかす)が、肥料の大部分でした。

その後、大正末期から身欠きニシン、数の子などの食糧が次第に増え、太平洋戦争中から戦後の食糧難の時代になると、食料が肥料を上回るようになりました。ニシンの漁獲量は、明治30年(1897年)の97万トンをピークに徐々に減少を始め、昭和30年(1955年)には5万トンまで減少して北海道の沿岸から姿を消しました。

それ以降は、日本国内での水揚げ量は100トンにまで激減し、いまではロシアやカナダからの輸入品が大半を占めるようになりました。

特産品になった身欠きニシン

ニシンは、胴ニシン(腹側の身)、身欠ニシン(ニシンの干物)、白子(ニシンの精巣で種に肥料)、笹目(内臓で白子、数の子、エラを除いたアラで肥料用)がニシンを原材料にした商品でした。

冷蔵・冷凍技術の発達していない時代のニシンは、三枚におろして身欠ニシンとなり、これを乾燥させた後、一ヶ月ほど熟成させて出荷されました。干物として加工された身欠ニシンは、本州に運ばれて販売されましたが、京都では独特の「ニシンそば」となって特産品になったものもあります。

身欠ニシンは、米のとぎ汁で渋味を抜くと美味しくなるそうで、アイヌの人たちが戻すときは、番茶で戻したそうです。生ニシンの旬は、産卵期の春から初夏であり、塩焼きのニシンはあぶらがのっているので筆者の大好物です。身が柔らかく骨が多いのが特長ですが、骨は細くて軟らかいのでそのまま食べてしまいます。

関西では身欠ニシンを昆布に巻いたニシン昆布巻きも定番料理であり、これはタケノコ、フキとの相性がいいのでおいしい煮物料理になっています。スウェーデンのニシンの缶詰は、ニシンを塩漬けにし、缶の中で発酵させた漬物の一種で、世界一臭いけれど、おいしいといわれています。

ニシン養殖の研究

いまは輸入ニシンが出回っているのでいつでも入手できますが、ニシンはやはり旬のときに生で食べるのが一番です。日本近海から姿を消してから長い歳月が経ちますが、激減の原因として、海流あるいは海水温の変化、乱獲などがあげられます。

最近になってニシンの養殖の研究も始まり、平成8年(1996年)から13年(2001年)度までの6カ年計画で本格的な「日本海ニシン資源プロジェクト研究」に取組みました。受精卵から稚魚まで育て、放流をして資源を増やす試験も行われています。

ニシンは、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)の含有量が高く、動脈硬化、脳梗塞や心筋梗塞など、生活習慣病の予防に役立ちます。肌荒れを防ぐビタミンA、またカルシウムの吸収を良くするビタミンD、貧血を防止する鉄分も含まれています。

文:ばばれんせい  絵:すなみゆか

  都道府県 漁獲量 割合
1 北海道 20,577t 99.6
2 岩手県 31t 0.2
3 宮城県 17t 0.1
4 鳥取県 2t 0

出典:地域の入れ物

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