コンブ
NO.74
湯豆腐のコンブからうまみを発見
日本では伝統的に出汁をとるときにコンブを使用しています。コンブがうまみを出すことを体験的に知っていたからです。このうまみ成分を発見したのは、東京帝大の池田菊苗博士でした。
湯豆腐を調理するときにコンブを入れて出汁をだします。池田博士は、湯豆腐を食べたときにだしのコンブに興味を持ち、1908年にうまみ成分はグルタミン酸であることを発見しました。池田博士が、うまみ成分を原料とした調味料の製造方法を発明したことはあまりにも有名です。
沖縄と北海道を結ぶコンブ
沖縄県と北海道は、日本列島の最南端と最北端に位置しています。それなのにこの二つの地域住民は、心情的につながりが深いと言われています。
確かに両地域の住民の往来が他の地域に比べて頻繁であり、札幌-那覇間の航空便は毎日飛んでいます。札幌雪祭りには那覇からチャーター便が飛ぶほどです。
亜熱帯の気候風土にある沖縄県民は雪に憧れ、亜寒帯地域にかかっている北海道民は沖縄に憧れているからでしょう。
そんな事情があるのか、沖縄と北海道はコンブという食べ物でもつながっているのです。コンブの生産は、90%以上が北海道です。しかしコンブの消費者のトップは、北海道ではなく富山県であり、次いで那覇県になっているのです。
特に沖縄県民のコンブ好きは有名で、年間購入量は全国平均の1.5倍になっているのです。沖縄県人は北海道料理に憧れがあるのか、北海道料理を売り物にしているレストランが繁盛しているようです。
北海道で採れたコンブが、沖縄県まで南下していったルートを「コンブロード」などと呼んでいます。コンブは室町時代から北海道を起点として船で南下するようになり、江戸時代にはコンブ船がどんどん南下して、ついには沖縄県まで到達していったのです。コンブはさらに清(中国)へと渡っていきましたが、沖縄はその中継点としても重要な役割を果たしました。
コンブの素材を生かした沖縄料理
コンブは、だしととる材料として利用されることが多いのですが、沖縄料理ではコンブを素材として生かした独特の料理があります。
沖縄県に行ったとき、コンブを千切りにして油でいため、豚肉と一緒に煮込む「クープ(コンブ)イリチー」をいただきました。コンブと豚肉はまことに相性がよく、大変おいしい。しかも栄養価が満点です。
コンブは大事な栄養素に富んでいます。まずカルシウムですが、これは牛乳の7倍以上も含まれているのです。もちろん食物繊維も豊富です。あのヌルヌルした成分はアルギン酸で、胃や腸で消化されず、腸内の余分なコレストロールを体外に出す働きがあります。便通をよくし、がんを防ぎ、肥満を防ぐ効果があるのです。
コンブのダイエット利用法もあります。コンブを食べると胃の中で水分を吸収してふくれるため、満腹感が出ます。しかも低カロリーでありながら、ビタミンやミネラルがたっぷり含まれていることが大きな魅力なのです。
沖縄県は長寿県として有名ですが、がん死亡率がもっとも低い県でもあるのです。これはコンブをたくさん食べるから、がんにもなりにくいのではないかという説もでています。
これだけではありません。コンブに含まれているラミニンという特殊なアミノ酸は、血圧を下げる働きがあるのです。ヌルヌルのアルギン酸も高血圧の予防になっているという研究結果も発表されています。
また、甲状腺から分泌されるホルモンの成分にヨードがありますが、コンブはこのヨード分を多く含んでいるので、甲状腺障害が起きるとコンブを食べることを勧められます。
甲状腺ホルモンは、副腎の機能を活性化させ、皮膚の新陳代謝を促進してつやつやお肌を維持すると言われています。コンブを食べていると髪の毛が黒くなると言われていますが、これは科学的に根拠がないということです。
保存しているコンブを取り出すと、表面に白い粉をふいていることがあります。これは内部にあるコンブのうまみ成分が表面に押し出されて結晶化したものだそうで、これを洗ってしまってはうまみを逃がしてしまうのです。硬く絞った濡れふきんで、さっと表面を拭く程度でいいということです。
だしをとるときに日本では伝統的にかつお節も使いますが、かつお節のうまみ成分は、イノシン酸と言われています。コンブのグルタミン酸とカツオ節のイノシン酸は相性がいいそうで、だしを出すにはコンブとかつお節が黄金コンビだということです。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
こんぶの食品成分
単位:重量100gあたり
出典:食品成分データベース
令和元年(2019年)に、都道府県民1人が、1年間に何gの昆布を消費しているのかを掲載しています(だし昆布で換算)。
※合わせて、都道府県民1人あたりの支出金額(消費金額)も掲載。
順位 | 都道府県 | 金額 | 数量 | |
1位 | 北海道 | 札幌市 | 1,003円 | 166.1g |
2位 | 山口県 | 山口市 | 846円 | 112.5g |
3位 | 富山県 | 富山市 | 808円 | 89.7g |
4位 | 福井県 | 福井市 | 729円 | 87.3g |
5位 | 香川県 | 高松市 | 642円 | 84.9g |
6位 | 石川県 | 金沢市 | 478円 | 81.9g |
7位 | 青森県 | 青森市 | 503円 | 78.7g |
8位 | 京都府 | 京都市 | 520円 | 77.0g |
9位 | 岩手県 | 盛岡市 | 408円 | 75.4g |
10位 | 山形県 | 山形市 | 458円 | 72.4g |
11位 | 奈良県 | 奈良市 | 453円 | 69.7g |
12位 | 宮城県 | 仙台市 | 422円 | 66.7g |
13位 | 長崎県 | 長崎市 | 405円 | 66.4g |
14位 | 沖縄県 | 那覇市 | 406円 | 63.9g |
15位 | 島根県 | 松江市 | 450円 | 62.6g |
16位 | 鹿児島県 | 鹿児島市 | 471円 | 62.0g |
17位 | 茨城県 | 水戸市 | 338円 | 59.8g |
18位 | 大阪府 | 大阪市 | 478円 | 58.4g |
19位 | 長野県 | 長野市 | 403円 | 58.0g |
20位 | 福島県 | 福島市 | 375円 | 57.8g |
21位 | 滋賀県 | 大津市 | 379円 | 55.7g |
22位 | 佐賀県 | 佐賀市 | 357円 | 53.5g |
23位 | 秋田県 | 秋田市 | 345円 | 51.2g |
24位 | 兵庫県 | 神戸市 | 326円 | 50.6g |
25位 | 東京都 | 東京都区部 | 308円 | 46.6g |
26位 | 神奈川県 | 横浜市 | 299円 | 45.9g |
27位 | 静岡県 | 静岡市 | 335円 | 45.3g |
28位 | 栃木県 | 宇都宮市 | 346円 | 45.3g |
29位 | 千葉県 | 千葉市 | 324円 | 45.0g |
30位 | 群馬県 | 前橋市 | 319円 | 41.9g |
31位 | 熊本県 | 熊本市 | 240円 | 39.9g |
32位 | 大分県 | 大分市 | 312円 | 39.4g |
33位 | 三重県 | 津市 | 285円 | 39.1g |
34位 | 埼玉県 | さいたま市 | 284円 | 38.2g |
35位 | 高知県 | 高知市 | 257円 | 38.1g |
36位 | 福岡県 | 福岡市 | 308円 | 37.1g |
37位 | 愛媛県 | 松山市 | 254円 | 36.1g |
38位 | 和歌山県 | 和歌山市 | 282円 | 34.4g |
39位 | 宮崎県 | 宮崎市 | 230円 | 34.2g |
40位 | 愛知県 | 名古屋市 | 227円 | 31.3g |
41位 | 広島県 | 広島市 | 250円 | 31.1g |
42位 | 鳥取県 | 鳥取市 | 237円 | 31.0g |
43位 | 山梨県 | 甲府市 | 186円 | 30.1g |
44位 | 新潟県 | 新潟市 | 230円 | 29.3g |
45位 | 徳島県 | 徳島市 | 200円 | 28.2g |
46位 | 岡山県 | 岡山市 | 231円 | 24.7g |
47位 | 岐阜県 | 岐阜市 | 175円 | 22.2g |
出典:地域の入れ物
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