食のこばなし

サトイモ

NO.90

サトイモ

古い古いおつきあい

子どものころ、学校の帰りがけに雨にあい、とっさに道路わきの畑に駆け込み、サトイモの葉をちぎって傘代わりにして見つかり、農家の人からひどく怒られたことがありました。サトイモの葉っぱは、傘を逆さにしたように上に丸く広がっているので傘代わりにしようとした悪童のいたずらでした。サトイモを見ると、その光景をときどき思い出します。

サトイモは、日本人の起源と共にあるといわれるほど、日本人になじみのある野菜であり、稲よりも古い時代に中国から渡来したと言われています。古くからサトイモを食べる風習がどこにでもあるようですが、日本人とは古い付き合いがあるのです。

筆者はサトイモと大根のせん切りと油揚げの味噌汁、これが大好きです。サトイモだけを甘辛に煮たものも好きです。これにひき肉を絡めたものも大好きです。サトイモの茎にあたる葉柄は「ずいき」とか「いもがら」と言われますが、まだ若いサトイモの葉柄をみそ汁に入れると、独特のえぐみと風味があってこれがおいしい。

原産地は東南アジア

サトイモの原産地はインド東部から東インドシナと言われており、南方の主食とされるタロイモの仲間です。パプアニューギニアの人々はタロイモをたくさん食べ、動物タンパクはお祭りの時の豚肉くらいですが、筋肉隆々の体格をしています。これは腸内細菌が私達とは違う種類であり、炭水化物を食べても体内で筋肉を作る作用があるのではないかとも言われています。

熱帯原産ですから本来は寒さに弱い植物ですが、日本に渡ってきたサトイモは縄文時代から食用にされていました。サトイモを葉で包んで蒸し焼きにして食べていた遺跡も発見されています。

こうしてサトイモは、だんだんと寒さに強い種が日本列島になじみ、現代まで種をつないできたのでしょう。

サトイモでロマンス

陰暦八月十五日の中秋の名月には、秋一番に出てくる小芋を供えますが、これは皮ごとゆでたキヌカツギであり、これもサトイモの仲間です。キヌカツギは「衣被」と書き、平安時代に身分の高い女性が外出するときに顔を隠すために衣をかぶったことからきています。皮を軽くつまむとつるんと出てくる白いサトイモに、軽く塩をつけて食べる素朴な味わいも好まれています。

知人にサトイモの思い出を聞いたら七夕が出てきました。サトイモの葉にたまったコロコロした水玉をすずりに集めて墨をすり、筆で短冊に願い事を書いて青竹の七夕様に飾ります。すると願い事がかなうという故事を思い出したということです。その昔は、墨でカジノキ(クワ科の落葉高木)に書いたそうで、カジノキの若い枝の皮は、和紙の原料になっているそうです。

「芋煮会」を思い出した知人もいます。東北地方でサトイモの収穫期の秋になると河原などで焚き火をしてサトイモ、肉、こんにゃくなどを大きな鍋で煮て楽しむ行事です。芋煮会で異性と知り合い、ロマンスに発展させようと胸を焦がした時代もあったそうです。出会い系サイトなどなかった時代は、サトイモが仲立ちをしていたのです。

ぬめりが脳を活性化

サトイモの主成分は、でんぷんとタンパク質です。もちろん食物繊維も豊富です。他の芋類に比べてカリウムが豊富です。カリウムは塩分の成分であるナトリウムを排泄してくれるのでサトイモは高血圧を予防するようです。そのほかにもカルシウム、鉄、ビタミンB2、Cも豊富に含まれています。

サトイモ独特のヌルヌルのぬめりはねばねば物質です。

ガラクタンというと「ガラクタ」の親分みたいな名称ですが、これが脳細胞を活性化してボケや老化を予防してくれると言うからガラクタどころではありません。このようにサトイモのぬめりは、重要な成分なのです。ぬめりはなるべく残して料理することをお勧めします。

サトイモは日本人と共に生きてきた野菜ですから、いろいろな言い伝えも残っています。たとえばサトイモの皮を煎じて作った汁が神経痛に効くそうです。

サトイモの切り口でイボをこするとイボが自然に取れちゃうと言うことも聞きました。痔になったら、サトイモをおろして卵白と混ぜて軟膏を作り、患部に貼り付けるとか、サトイモのおろしがヤケドに効くとか、サトイモほど万能な野菜はないかもしれません。

文:ばばれんせい 絵:すなみゆか

順位 都道府県 収穫量 割合
1 埼玉県 17,900t 12.9
2 宮崎県 13,600t 9.8
3 千葉県 13,200t 9.5
4 愛媛県 8,880t 6.4
5 栃木県 7,350t 5.3
6 鹿児島県 7,240t 5.2
7 新潟県 6,410t 4.6
8 神奈川県 5,040t 3.6
9 熊本県 4,820t 3.5
10 愛知県 4,170t 3
11 岐阜県 3,950t 2.8
12 静岡県 3,790t 2.7
13 群馬県 3,140t 2.3
14 福井県 2,850t 2.1
15 東京都 2,730t 2
16 茨城県 2,680t 1.9
17 大分県 2,310t 1.7
18 福島県 2,050t 1.5
19 三重県 1,970t 1.4
20 山形県 1,890t 1.4
21 兵庫県 1,880t 1.4
22 広島県 1,570t 1.1
23 福岡県 1,550t 1.1
24 奈良県 1,340t 1
24 島根県 1,340t 1
26 京都府 1,320t 1
27 山口県 1,190t 0.9
28 富山県 1,110t 0.8
29 長野県 1,080t 0.8
30 山梨県 1,070t 0.8
31 鳥取県 1,040t 0.7
32 香川県 916t 0.7
33 秋田県 888t 0.6
34 大阪府 839t 0.6
35 岩手県 774t 0.6
36 滋賀県 716t 0.5
37 佐賀県 659t 0.5
38 宮城県 645t 0.5
39 長崎県 639t 0.5
40 岡山県 631t 0.5
41 高知県 593t 0.4
42 徳島県 357t 0.3
43 和歌山県 266t 0.2
44 石川県 214t 0.2
45 青森県 58t 0
46 沖縄県 38t 0
       
       

出典:地域の入れ物

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