茶がゆ
NO.68
謎の多い複雑な儀式が行われる奈良の国宝東大寺二月堂・修二会(しゅしょうえ)の「お水取り」は、宗教行事として1200年以上受け継がれてきた日本の文化です。茶がゆは、その伝統の中で営々と伝承されてきた料理であり、それを聞いただけでも誰でも一度は食べたくなります。
料理と言っても、おかゆです。もともとは東大寺の修行僧が考案したものが一般に広がったものであり、今に伝わっている伝統食です。修行層の献立に「ゴボ(ごぼう)」「ゲチャ」が出てきます。「ゲチャ」は米をほうじ茶で煮て、汁を取り去ったもの、「ゴボ」は茶粥の汁の多いものといわれているようです。
番茶を茶袋に入れてまず煮立てます。お茶が出るとそこに洗ったばかりの白米を入れて強火で炊きます。炊き過ぎると、どろどろになるのでその火加減で好みの茶がゆをつくるのがこだわりのようです。
塩を入れる家もありますが、入れない家も多いそうです。最近は、野菜や魚・肉類など様々な具を入れる人もいるようです。人好き好きでしょうか。
奈良から全国に広がり郷土食になる
奈良では茶がゆを「おかいさん」と呼んでいるそうです。煮出したほうじ茶の中に冷やごはんを入れて炊いたもので、さらっとしているのが特徴です。「大和の朝は茶がゆで明ける」と言ったそうですが、いまはほとんど見られなくなったようです。
そのころの茶がゆは夜にご飯を炊き、そのご飯を温かくするために茶がゆにしたそうで、サツマイモやカボチャなどを入れた茶がゆもあったようです。
昔から「大和(奈良)の茶粥、京(京都)の白がゆ、河内(大阪東部)のどろ食い」と言われているそうで、土地柄によっておかゆの炊き方と食べ方が異なっていることが分かります。大和と京都のおかゆは色が違うだけでどちらもさらさらですが、河内のおかゆは泥のようにかたく炊くのが特長ということです。
茶がゆは少ないコメで満腹になるようにしたとも言われています。しかし茶がゆは裕福な家でつくるものであり、お客さんのおもてなしに出したとも言われています。
茶がゆは近畿から中国・北九州地方へと広がりましたが、北前船の交易で栄えた青森県野辺地町にも伝わり、いまでも郷土食として定着しています。お葬式に茶がゆと鶏卵を配る地域もあり、最北の茶がゆ文化として根付いています。
瀬戸内海に浮かぶ周防大島は、長寿の島として有名ですが、島民は昔から茶がゆを食べてきました。ここでは番茶だけでなく漢方にも使うハブ茶を使うそうですが、長寿はこの効用ではないかとも言われています。
学校給食にも登場した茶がゆ
奈良県生駒郡斑鳩町の法隆寺のすぐ近くの小学校で茶がゆを学校給食に出していると聞いたことがあります。学校栄養士が実家の茶がゆの作り方を学校でそのまま再現し、子どもたちに食べさせてみたのです。水150、ほうじ茶1、精白無洗米15の割合で炊いた茶がゆは、大成功だったそうです。
茶がゆは、お茶に含まれるカフェインが豊富であり、こらが脂肪を分解したり、脂肪が体内に吸収されるのを穏やかにする働きがあるので、ヘルシーです。
ある学校での給食週間中のイベントの献立を見せてもらいました。保護者の学校給食の思い出を集めたようなものにびっくりでした。
茶がゆ、牛乳、お雑煮、くじらの竜田揚げ、しばづけ、おたべ
思い出の料理のオンパレードのようで、保護者の笑顔が浮かびます。
茶粥のダイエット効果は?
一般的におかゆはダイエットに利用されています。熱々の茶粥を食べると血行が良くなるので、身体の新陳代謝がよくなりダイエットに持って来いというわけです。
白米1杯分、150gは約250kcalです。これに対しおかゆは150gで、約110kcalですから、同じ量を食べてもカロリーは半分以下です。ただし、消化吸収がよいので、すぐにお腹がすくのが難点です。
筆者の体験から言うと、毎日、おかゆばかりだと飽きてしまいます。栄養分に偏りやすい傾向もあります。歯科医からは、おかゆはしっかり噛むことがおろそかになると注意されたこともありました。
バランスよい食生活が重要ということでしょうか。最後になって話題が、茶がゆから少々それてしましました。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
都道府県 | 名称 |
---|---|
北海道 | いかめし(イカのめし詰め、いかごはん)(森町)、訓子府カツ丼(訓子府町)、豚丼(帯広市)、ゲソ丼(旭川市)、エスカロップ(根室市)、甘納豆の赤飯、黒飯、バターご飯 |
青森県 | 茶がゆ(野辺地町)、いかめし |
岩手県 | 海藻のめのこ飯、ひじきご飯、うにとアワビの炊き込みご飯、いちご煮雑炊 |
宮城県 | はらこ飯、油麩丼(登米市)、ほっき飯(亘理町) |
秋田県 | とろろまま |
山形県 | 水かけご飯(内陸部) |
福島県 | ほっき飯(浜通り) |
茨城県 | |
栃木県 | 合盛り(那須塩原市)、とちぎきらり丼 |
群馬県 | 鳥めし、ソースカツ丼(足利市)、なすの蒲焼重(太田市) |
埼玉県 | 黄金めし(秩父地方) |
千葉県 | はかりめ丼(富津市)、孫茶 |
東京都 | 鰻丼、深川飯(深川丼) |
神奈川県 | |
新潟県 | 醤油赤飯(長岡市)、ひえこめし(佐渡市)、わっぱ飯(新潟市中央区)、めかすこめし(佐渡市)、菜ぞうすい(柏崎市高柳町地区)、かて飯(十日町市)、献残焼き、けんさ焼き(けんさん焼き)(新潟県全域)、とうの木のホロホロ(佐渡市)、ほうまんま(十日町市松之山地区)、あつめし、タレかつ丼(新潟市) |
富山県 | 山菜おこわ |
石川県 | ボラ茶漬け(穴水湾沿岸)、ハントンライス(金沢市)、能登丼(能登地域) |
福井県 | ソースカツ丼(全域)、醤油カツ丼(大野市他)、ボルガライス(越前市)、ぼっかけ、鯛まま |
山梨県 | むかご飯 |
長野県 | 五平餅(南信)、栗おこわ(小布施町)、駒ヶ根ソースかつ丼(駒ヶ根市)、みそ天丼(諏訪市)、塩天丼(諏訪市)、キムタクご飯(塩尻市) |
岐阜県 | 鮎の雑炊、いばらめし、あんかけカツ丼(瑞浪市) |
静岡県 | 孫茶、さくらごはん(西部) |
愛知県 | あめ茶漬け、菜飯、ひつまぶし |
三重県 | ひじき飯、ボラ雑炊(ボラ飯)(木曽岬町、桑名市長島町)、しぐれ肉巻きおにぎり(桑名市) |
滋賀県 | |
京都府 | |
大阪府 | おじやうどん、加薬ご飯、じゃこのぐう飯(岸和田市)、まむし(鰻飯)、豆ごはん |
兵庫県 | いか飯、そばめし(神戸市)、たこめし、かつめし(加古川市) |
奈良県 | 奈良茶飯(豆入り茶飯)、大和の茶粥、おみ(おじゃ) |
和歌山県 | 梅ご飯、茶粥 |
鳥取県 | 赤貝めし、もずく雑炊、いがい飯(鳥取市青谷町夏泊)、豆腐めし(どんどろけ飯)、大山おこわ(汗入おこわ)(大山町) |
島根県 | 鮎めし、うずめ飯、めのは飯、焼き飯茶漬け、ののこめし(いただき)(米子市)、シラウオご飯 |
岡山県 | シャコ丼(笠岡市)、えびめし(岡山市)、とりめし、蒜山おこわ、ふなめし、エビ丼 |
広島県 | あなご飯、うずみ(福山市)、たこめし(三原市)、うずめめし、デビラ茶漬け、なばめし |
山口県 | あぶら飯、茶粥(岩国茶粥)、まぶりめし |
徳島県 | たいめし |
香川県 | おなぎめし、さつま |
愛媛県 | たこめし、鯛めし(北条風鯛めし)、ひゅうが飯(宇和島鯛めし)(南予地方)、焼豚卵飯(今治市) |
高知県 | いよ飯 |
福岡県 | かしわ飯 |
佐賀県 | 雑炊(ずらし)、いよ飯、カツオ飯、シシリアンライス(佐賀市) |
長崎県 | トルコライス(長崎市) |
熊本県 | 高菜めし |
大分県 | 黄飯(臼杵市)、あつめし(りゅうきゅう)(佐伯市)、きらすまめし(臼杵市)、うれしの(鯛茶漬け)(杵築市)、ひゅうが丼(保戸島)、ひじき飯(保戸島) |
宮崎県 | 肉巻きおにぎり、日向鯛茶漬け、ハム巻おにぎり(北浦町)、串間活〆ぶりプリ丼ぶり(串間市) |
鹿児島県 | えのころ飯、鶏飯(奄美大島)、たまごおにぎり(徳之島) |
沖縄県 | バクダンおにぎり、ジューシー、タコライス、オニササ(石垣島) |
出典:地域の入れ物
カテゴリ