食のこばなし

緑茶

NO.52

中国では4世紀から栽培していた

お茶の原産地は東南アジアと言われており、茶樹には葉の小さい小葉系と大きい大葉系があります。小葉系は中国、大葉系はインド種とされています。

中国では有史以前からお茶を飲んでいたそうで、4世紀ごろから栽培を始めました。4世紀と言えば、日本では古墳時代です。日本にもこのころからお茶の自生種があったようですが、お茶を飲む習慣がないので栽培はまだしておりませんでした。お茶の栽培種は仏教と共に700年代の奈良時代に中国から伝えれました。

日本でお茶を飲むようになったのは、聖武天皇が100人の僧を内裏に招き、般若経を講じさせた後で中国茶を振舞ったことからということです。本格的にお茶が普及したのは、平安時代に天台宗の開祖、最澄が唐かり茶の種子を持ち帰り、次いで真言宗の開祖である空海も種子を持ち帰って移植したことから始まったということです。

 

日本茶の代表は「やぶきた」

日本のお茶はこうして広がっていきましたが、いま私たちが飲んでいるお茶は、ほとんどが「やぶきた」という種なのです。ひところ、日本のお茶の栽培面積のうち、75%がやぶきたでしたが、いまや90%以上がやぶきたになったそうです。なぜそうなったのでしょうか。

明治維新直前に医者の家に生まれた静岡県の杉山彦三郎は、30歳になったころからお茶の品種改良に取り組みました。杉山はまず、お茶の木の熟成する時期がばらばらであることに眼をつけ、これを早期、中期、晩期とグループごとに分けました。このようにグループごとに栽培すると熟期のいいお茶の芽を摘むことができると考えたのです。

お茶の木の生育をじっくりと観察し、あちこちに点在するいいお茶の木を見つけては試験園に移植して育て、増やす方法を考えました。杉山は、お茶の木の生の葉を噛んでみて、渋味や苦味のある茶は捨てて、甘味のあるものだけを選びました。

こうして選んだ茶の木を3年ほど観察し、優れたものだけを残して育種していったということです。育種学からみると単純な方法ですが、長い歳月をかけて辛抱強く実行して初めて成果があります。遺伝学の創始者であるメンデルを思い出させる品種改良でした。

 

お茶の品種評価で認められた「やぶきた」

明治42年(1909年)、茶業組合中央会の大谷嘉兵衛会頭は杉山の情熱に打たれ、私財を投じて試験移植地2.7ヘクタールを購入して杉山に提供しました。杉山はこの試験地に多くの茶の木を集め、優良系統を増殖していきました。

杉山は実に百種以上の品種を育成したということですが、孟宗竹の藪の跡地に拓いた茶園の北側で見つけた茶樹が「藪北」(やぶきた)と言われています。

やぶきたが出現したのは明治41年だということですが、世間に評価されて広がったのは昭和9年に静岡県の農業試験場で高い評価を受けてからでした。樹勢が旺盛であり葉が大きく、葉色は濃い緑で香りがいいということが高く評価されたのです。

杉山は昭和16年に亡くなりましたが、やぶきたは杉山の遺志を継ぐように広がり、昭和28年(1953)に農林省の登録品種になってから、急速に全国に広がっていきました。このときから「やぶきた」が正式名称になったのです。

 

がんにかかりにくくなる

お茶のおいしさを決めている成分は、適度な苦味と渋味と甘味の調和です。カテキン、カフェイン、アミノ酸類がバランスよく含まれていると味のいいお茶になるということです。「やぶきた」はその代表なのです。

お茶を日常的によく飲んでいる人は、がんにかかりにくいと言われています。お茶の成分と様々な効用を調べてみました。カテキンは発がん抑制効果や抗酸化効果があります。血中コレステロールを低下させたり血圧の上昇を抑制する効果もあるそうです。血糖値の上昇を抑える効果もあるということです。

フッ素も多く含まれていますが、これは虫歯を予防する効果があります。カフェインは覚醒作用がありますが、利尿作業もあるということです。ビタミンC,B,Fや血圧降下作用のあるガンマアミノ酪酸も含まれています。

お茶は日本文化の中で愛飲されるようになり、しかも健康にもいいという科学的な効能もはっきりとしてきた優等生ということになります。

・参考文献                      

「農業技術を創った人たち」(西尾俊彦著、家の光協会)

「食べ物起源事典」(岡田哲編、東京堂出版)

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

緑茶の食品成分

出典:食品成分データベース

茶葉の生産量の都道府県ランキング(令和元年)

順位 都道府県 収穫量 割合
1 鹿児島県 137,300t 38.40%
2位 静岡県 129,300t 36.20%
3位 三重県 28,600t 8.00%
4位 宮崎県 16,600t 4.60%
5位 京都府 13,100t 3.70%
6位 福岡県 9,310t 2.60%
7位 熊本県 6,150t 1.70%
8位 佐賀県 5,530t 1.50%
9位 埼玉県 4,020t 1.10%
9位 愛知県 4,020t 1.10%
11位 長崎県 3,440t 1.00%

出典:地域のいれもの

緑茶の消費量の都道府県ランキング(令和元年)

順位 都道府県 金額 杯数
1 長崎県 長崎市 2,784円 655g 218.3杯
2位 石川県 金沢市 1,366円 574g 191.3杯
3位 静岡県 静岡市 3,301円 547g 182.2杯
4位 三重県 津市 1,317円 538g 179.2杯
5位 滋賀県 大津市 1,420円 514g 171.5杯
6位 熊本県 熊本市 2,163円 478g 159.2杯
7位 鹿児島県 鹿児島市 2,977円 471g 157.0杯
8位 京都府 京都市 1,694円 471g 156.9杯
9位 宮城県 仙台市 2,465円 469g 156.2杯
10位 奈良県 奈良市 1,048円 442g 147.4杯
11位 神奈川県 横浜市 2,337円 402g 134.1杯
12位 埼玉県 さいたま市 2,238円 383g 127.7杯
13位 東京都 東京都区部 1,808円 325g 108.2杯
14位 山口県 山口市 1,008円 316g 105.3杯
15位 佐賀県 佐賀市 1,740円 314g 104.5杯
16位 千葉県 千葉市 1,643円 304g 101.2杯
17位 大分県 大分市 1,550円 297g 99.1杯
18位 茨城県 水戸市 1,220円 295g 98.2杯
19位 福岡県 福岡市 1,239円 294g 98.1杯
20位 群馬県 前橋市 1,574円 290g 96.6杯
21位 大阪府 大阪市 1,161円 272g 90.6杯
22位 栃木県 宇都宮市 1,476円 271g 90.3杯
23位 岩手県 盛岡市 1,185円 269g 89.6杯
24位 愛媛県 松山市 798円 265g 88.4杯
25位 山梨県 甲府市 1,537円 265g 88.3杯
26位 新潟県 新潟市 1,242円 258g 85.9杯
27位 長野県 長野市 1,384円 257g 85.8杯
28位 愛知県 名古屋市 1,288円 257g 85.7杯
29位 広島県 広島市 905円 242g 80.7杯
30位 和歌山県 和歌山市 638円 240g 79.9杯
31位 山形県 山形市 1,296円 237g 78.9杯
32位 北海道 札幌市 1,186円 226g 75.4杯
33位 富山県 富山市 886円 226g 75.4杯
34位 福島県 福島市 1,226円 224g 74.6杯
35位 兵庫県 神戸市 1,016円 204g 68.2杯
36位 徳島県 徳島市 1,062円 197g 65.7杯
37位 島根県 松江市 1,261円 196g 65.5杯
38位 秋田県 秋田市 1,528円 186g 62.0杯
39位 宮崎県 宮崎市 1,308円 186g 61.9杯
40位 香川県 高松市 734円 166g 55.3杯
41位 福井県 福井市 820円 161g 53.7杯
42位 岐阜県 岐阜市 858円 157g 52.4杯
43位 青森県 青森市 839円 153g 50.9杯
44位 高知県 高知市 621円 144g 48.1杯
45位 沖縄県 那覇市 498円 141g 46.9杯
46位 岡山県 岡山市 657円 125g 41.7杯
47位 鳥取県 鳥取市 898円 117g 39.1杯

出典:地域のいれもの