海藻の王様・ワカメ
NO.29
紙と間違えたカナダの子ども
カナダの小学生が東京の小学校を訪問し、学童の交流会が開かれたことがありました。そのとき学校給食を一緒に食べましたが、その日はワカメご飯でした。
カナダの子どもたちの中には、ワカメを取り除いてご飯だけを食べている子がいました。聞いてみると、ワカメを黒い紙と勘違いしたようで、海藻だよと教えてやったら、大笑いして食べていました。
味噌汁で一番おいしいと思うのは、じゃがいもとワカメと豆腐を組み合わせた具です。豆腐の代わりに油あげという人もいますが 筆者は断然、前者です。ワカメだけを単にしょう油で煮たものも大好物です。 つるつるした食感がヘルシー感を伴って何とも言えないおいしい食べ物なのです。
日本人は、世界で一番海藻を食べる民族といわれています。ノリ、コンブ、ワカメなどは、さまざまな料理となって食卓にのほります。海藻を食べない日はないくらい、食文化に深くかかわっています
ワカメは褐藻類という海藻の一種で、日本近海では北海道の南西部から九州にいたるまで、全国各地で生産されています。生産の殆どは養殖です。収穫時は早春ですが、浜には特有の磯の香りが漂います。
先ごろテレビで鳴門のワカメ漁を特集していました。父親と息子が大量のワカメを水揚げしてきます。種付けか2メートルにまで成長したワカメを葉と茎に分ける “スジ抜き″は母親の仕事でした。
ワカメの一生
ワカメは1年間で一生を終えます。春になると成実葉 (メカプ) から遊走子が放出されます。根上の部分が岩上に着生し、発芽してオスとメスの区別ある配偶体になります。秋に成熟、受精、発芽のプロセスを経て、芽胞体は幼芽となります。
幼芽は冬に生長します。冬がワカメの旬で、春に遊走子を放出した後、枯死します。若いほど味がよいので、収穫は3月から5月が最高です。海藻類は、寒さが厳しいほど生育が良いといわれています。
水揚げをしたらすぐ茹でます。磯のかおりと湯煙で覆われた茹であがったばかりのワカメは、とても美味しいご馳走です。
ワカメは生きた状態では褐色ですが、湯通しすることで、緑色に変ります。緑色のクロロフィルという色素と、茶色のフコキサンチンと言う色素からできており、熱に強い緑色が残るためです。
便利なカットワカメ
天日で干したワカメは生ワカメに比べ、歯ごたえは少し落ちますが栄養価は高く、よく利用されています。天然物と養殖ワカメとは品質的には殆ど差はないということです。
ワカメは下のフサフサしているメカブ、その上の茎の部分、そして葉の部分と3つに分類されます。味に癖がなく、料理も簡単にできることから、みそ汁のほかにもタケノコと組み合わせの若竹煮、酢の物にも欠かせません。
イカ、タコ、貝類とキュウリを使った酢の物は家庭料理の代表であり、酒の肴に良く合います。味覚、色彩、歯ごたえと共に楽しめるのがワカメの特長でしょうか。 シーフードサラダ、海藻サラダとしてもおいしくいただけます。和食以外にも、韓国風スープには溶き卵と一緒にワカメを使います。
ワカメは塩蔵、乾燥で保存されます。乾燥品の長期保存には、通気性を考えた包装や、湿度などを考えて、パックには工夫が必要です。栄養素の効率を上げるためには、紫外線に当てた乾燥品が一番だそうです。 カットワカメは、インスタント製に優れ、即席スープがすぐできてとても便利です。長期の海外旅行などには携帯すると重宝します。茎ワカメは煮物、味噌漬け、炒め物にしてもおいしく調理されます。
歯ごたえがあり、粘りが強く珍味として重宝されています。 ヌメリ成分には、主としてアルギン酸とフコイダンと言う水溶性の食物繊維が含まれているのも好まれている海藻です。
カルシウムも豊富
ワカメはミネラル、ビタミン、繊維質が豊富です。海藻ならではのヨウ素も含まれています。カルシウムが多く、ビタミンA,B1 もかなり含有しており、同時に食物繊維も豊富なことから、便秘予防にもなりますし、高血圧症や、高脂血症などの生活習慣病の予防にも効果的です。
カロリーゼロなので、ダイエットに効果があります。またワカメに含有する褐色の色素フコクキサンチンが、脂肪を燃焼させて肥満を防ぐ動物実験が発表されています。
昔から海藻を食べると毛髪に良いといいます。 メカブのアルギン酸が髪のキューティクルを補修し、フコイダンが毛母細胞を活性化し、育毛を促進するからと言われています。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
ワカメの食品成分
平成30年(2018年)における、都道府県別のわかめの養殖量(水揚げ量)
順位 | 都道府県 | 収穫量 | 割合 |
1 | 岩手県 | 18,220t | 35.90% |
2 | 宮城県 | 16,939t | 33.40% |
3 | 徳島県 | 6,280t | 12.40% |
4 | 長崎県 | 989t | 1.90% |
5 | 神奈川県 | 621t | 1.20% |
6 | 北海道 | 597t | 1.20% |
7 | 熊本県 | 547t | 1.10% |
8 | 愛知県 | 357t | 0.70% |
9 | 大阪府 | 304t | 0.60% |
10 | 島根県 | 222t | 0.40% |
11 | 秋田県 | 179t | 0.40% |
12 | 山口県 | 173t | 0.30% |
13 | 新潟県 | 73t | 0.10% |
14 | 香川県 | 66t | 0.10% |
15 | 青森県 | 52t | 0.10% |
16 | 岡山県 | 51t | 0.10% |
17 | 京都府 | 44t | 0.10% |
18 | 佐賀県 | 39t | 0.10% |
19 | 福井県 | 20t | 0.00% |
20 | 大分県 | 19t | 0.00% |
21 | 千葉県 | 15t | 0.00% |
22 | 石川県 | 6t | 0.00% |
23 | 愛媛県 | 3t | 0.00% |
24 | 富山県 | 2t | 0.00% |
25 | 静岡県 | X | X |
26 | 三重県 | X | X |
27 | 兵庫県 | X | X |
28 | 和歌山県 | X | X |
29 | 鳥取県 | X | X |
30 | 広島県 | X | X |
31 | 福岡県 | X | X |
32 | 鹿児島県 | X | X |
出典:地域の入れ物
データが非公表の都道府県は「X」となっています。
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