食のこばなし

ワサビ

NO.54

山間の渓流で育っていたワサビ

静岡県の伊豆半島にセミナーで行ったとき、宿のご主人に案内されてワサビの水耕栽培池を見学しました。山間から導入した渓流が流れ込んでくる水耕栽培池は、透明ですがすがしく、栽培地に濃い緑の葉が一面覆いつくしています。よく見ると茎から伸びた葉っぱは直径10センチにもなろうかというハート形になっています。その根茎がワサビなのです。

「この水は、そのまま飲んでも大丈夫です。そのくらいきれいです」という言葉にワサビがこんなに清潔な環境で育っていることに感動しました。採り立てのワサビをいただき、早速、宿で刺身につけていただきましたが、取り立てのワサビはことのほか風味があって満足したものでした。

ワサビは、日本の代表的な食文化の刺身や寿司に欠かせない伝統的なスパイスです。日本を原産とするアブラナ科・ワサビ属に分類される多年草です。原産が日本という植物は、食文化の伝統に花を添える話であり、日本人として鼻が高くなります。

ワサビは成長するまで2年から3年かかります。国内の主要産地は、長野県、静岡県、島根県などです。

魚の生臭さを消したり殺菌作用もある

ワサビは、魚の生臭さを消して食欲を増進させる作用があります。辛味成分が、魚の臭さを分解する効果を持っているからです。だからツーンと鼻に抜けるワサビの刺激は、寿司はもとより刺身になくてはならない風味なのです。

ワサビは根茎をすりおろしたものですが、茎と葉の煮びたしもおいしいです。ただし、これがまたもやすごく辛いので初めて食べた人は目を回します。

 

ワサビの効能は、食欲増進だけではありません。ワサビに含まれているスルフィニルという成分が細胞の抗酸化物質を活性化させることにより、体内やお肌の老化を防ぐアンチエイジング効果が期待できます。現在では、化粧品や健康食品にまでその成分が応用されています。

魚の寄生虫に優れた殺虫効果があることが、東京都衛生食品監視局によって突き止められています。味だけでなく衛生面からもワサビは寿司や刺身に欠かせないのです。

魚の寄生虫のアニサキスは、体内に入ると胃壁に食い込んで激痛をもたらすことがあります。この寄生虫は糸状で細く透明なのでよくよく見ないと見つけられませんが、特にイカの白い身についてるとなかなか見分けられません。

しかしワサビを溶かした食塩水にこの寄生虫を入れると、まひ状態になったり死んでしまうものが続出したという記録がありました。

ワサビ成分を気体にすると防菌、防カビ、害虫駆除に役立つため、特許になったほどです。古いタイプの食中毒菌であるサルモネラ菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌などの増殖を抑える効果が知られています。

 

ワサビは古くから、さわやかな香りとピリリと辛い味が珍重されてきました。ワサビの辛味は、「アリルからし油」と呼ばれる成分で、ワサビをすりおろしたときに細胞が壊れ、酵素が働いて香りと辛味が生まれるのです。

ただし時間が経つと香りと辛味は飛んでしまいます。そんなときは、レモン汁かビタミンCを加えて練ると酵素が働いて、また香りと辛味が戻ってくるということです。

 

西洋ワサビはローストビーフの添え物

日本の伝統ワサビと違ってヨーロッパが原産の西洋ワサビは、明治初年に日本に入ってきました。アブラナ科・セイヨウワサビ属に分類される多年草ですから、ワサビと同じアブラナ科ですが、全く別の植物となっています。

すりおろした根は白く、ワサビとよく似た辛味が特徴です。チューブのワサビや粉ワサビの主原料となっており、ローストビーフの薬味としてよく添えられています。

 

ギザギザ葉っぱのワサビ菜はサラダの食材

ギザギザの葉っぱをしたワサビ菜は、アブラナ科アブラナ属の越年草であり、九州の在来種であるカラシ菜の変異種から生まれた野菜です。今では九州から東北地方まで広く栽培されています。

生食でそのまま食べてもよし、炒めても茹ででもおいしく食べることができます。ビタミンCやB2やβカロテンなどのビタミン類が豊富に含まれています。

露地栽培のワサビ菜は11月頃から翌年3月頃までが旬であり、辛みの成分であるアリルイソチオシアネートは寒い時期に増えるそうです。

緑の葉っぱはお肉やお魚に添えると映えますし、生でシャキシャキの食感を味わう楽しみもあります。サラダの材料にも使えるし、茎を醤油漬けにして楽しむ人も多いようです。

 

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

ワサビの食品成分

出典:食品成分データベース

 

わさびの生産量の都道府県ランキング(令和元年)

順位 都道府県 生産量 割合
1 長野県 788.5t 40.00%
2位 静岡県 486.7t 24.70%
3位 岩手県 411.5t 20.90%
4位 島根県 67.1t 3.40%
5位 高知県 56.8t 2.90%
6位 東京都 33.0t 1.70%
7位 北海道 17.4t 0.90%
8位 山口県 11.7t 0.60%
9位 徳島県 11.2t 0.60%
10位 栃木県 9.5t 0.50%
11位 鳥取県 8.4t 0.40%
12位 大分県 6.5t 0.30%
13位 青森県 5.5t 0.30%
14位 山形県 4.7t 0.20%
15位 新潟県 4.3t 0.20%
16位 宮城県 4.0t 0.20%
17位 佐賀県 3.9t 0.20%
18位 山梨県 3.1t 0.20%
19位 秋田県 2.4t 0.10%
20位 愛知県 2.3t 0.10%
20位 広島県 2.3t 0.10%
22位 岐阜県 2.2t 0.10%
22位 兵庫県 2.2t 0.10%
24位 石川県 1.8t 0.10%
25位 和歌山県 1.7t 0.10%
26位 岡山県 1.4t 0.10%
27位 福島県 0.6t 0.00%
28位 福井県 0.3t 0.00%
28位 三重県 0.3t 0.00%
30位 茨城県 0.2t 0.00%
30位 群馬県 0.2t 0.00%
32位 奈良県 0.1t 0.00%
33位 埼玉県 0.0t 0.00%
33位 富山県 0.0t 0.00%
33位 鹿児島県 0.0t 0.00%

出典:地域の入れ物