食のこばなし

ブドウ

NO.38

品種改良で王座に駆け上がったシャインマスカット

日本ほど四季折々の果物に恵まれている国はないと思います。夏から秋を越え冬にかけて店頭に出てくる果物類をざっとあげてみると、イチジク、ブドウ、ナシ、ザクロ、カキ、リンゴ、モモなどがあります。この中でも筆者が最も親しんでいる果物はブドウです。

昔は何と言っても「甲州ブドウ」が一番人気でしたが、時代とともに品種改良が進んだいま、シャインマスカットなる新種が現れ、あっという間に王座に座ってしまったように思います。かつてトップブランドだった甲州ブドウは、ワインの原料となって今なお存在感を出していることは嬉しい限りです。

シャインマスカットなるブドウは、一体どうして出現したのでしょうか。

品種改良では世界一の日本

農産物の品種改良には、日本で農業に携わってきた人々の工夫とこだわりが凝縮されています。これには縄文時代から農耕民族として築いてきた農業文化と深い関係があります。

日本の国土は沿岸から平野、山地、森林と広がっており、海と河川の漁業も盛んに行われてきましたが、民族としては農耕民族と教えてもらいました。農耕民族は、特に農産物の品種改良に取り組み、他の人よりも収穫が多く、病害に強く、美味しい農作物をいち早く作って広げるという文化を築いてきたということです。

シャインマスカットを品種改良して作ったのは、広島県安芸市にある農研機構(旧農林水産省果樹試験場安芸津支場)でした。多くの農産品の品種改良に取り組んでいる機構で、日本人の食文化を作ってきた縁の下の力持ちです。

種なしで大粒で甘くて皮まで食べられるシャインマスカットを作って品種登録をしたのは2006年でした。品種登録とは、農産物の商標登録のようなものであり、これを外国でも登録しておかないと誰でも作ることができる国際的なルールでした。

シャインマスカットは、接木で増やしていきますが、まさかこの品種が外国で広がるとは予想していなかったので、中国や韓国を始め諸外国での品種登録をしませんでした。

工業生産で言うと、世界各国で特許を取らないと全く同じ特許技術で真似をされても文句が言えないように、品種改良でも接木で同じ品種を栽培しても文句が言えない時代になったのです。

20世紀の後半から世界は知的財産権で競争する時代になり、工業生産物だけでなく農業生産物にまで知財制度が行き渡るようになり、何でも最初に発明した人が国際的なルールに従って権利化した人が勝ちという時代になってしまいました。

世界に広がってしまったシャインマスカット

 

いま中国や韓国で、日本産と全く同じシャインマスカットが市場でもてはやされていますが、値段は日本産の半分から3分の1程度です。このシャインマスカットも元はと言えば、日本で栽培されていたシャインマスカットの子孫ですが、それを証明したところで意味がなくなってしまいました。

さてブドウはタネがあるから面倒だという人がいますが、いまでは品種改良の技術が向上して、タネなしブドウが主流になってきました。代表的な品種がデラウエアです。ぎっしりと実をつけた濃紅色の房を見ただけで、糖分の高い酸味の利いたブドウ独特の味が思い出されます。

巨峰はブドウの王様と言われるだけあって、一粒が11グラムから15グラムもあります。紫黒色の見た目と上品な香りは秀逸です。糖分もデラウエアとほぼ同じです。

タネなしピオーネは、巨峰とカノンホールマスカットを交配した品種であり、つぶは巨峰よりも大きいブドウです。香りもよく、何よりも夕ネなしになっているので、消費者の人気が高くなっています。

ところで、タネなしブドウはどのようにして作るのでしょうか。これはジベレリンという植物ホルモンを使用してタネが残らないように処理するのです。ブドウ栽培農園では、タネなし処理を「ジベ処理」と呼んでいます。

ブドウの花が満開になる2週間ほど前になると、ジベレリン溶液に花房を浸します。それからブドウの花の開花の約10日後にもう一度ジベ処理をするのです。こうすることでタネがなくなり、しかもブドウのつぶが大きくなり、色もよくなるのです。ただし、ジベ処理のタイミングが難しく、早くすると実がつかなくなり、遅すぎるとタネが入ってしまうのです。

赤ワインは心臓病の予防効果

ワインを味わう人が多くなりましたが、日本人のワインの年間消費量は、まだフランス人やイタリア人の20分の1程度です。1990年ごろからアメリカ人の間でもワイン党が増えてきたのですが、これにはワケがありました。フランスでの疫学調査によると、赤ワインを飲んでいる人は心臓病による死亡率が低いことが分かったのです。

さらに赤ワインを多く飲んでいる人は、飲まない人に比べて認知症が少なく、アルツハイマー症や老年性痴呆症の発症が極端に少ないことが分かってきました。赤ワインに多く含まれている渋味の色素のボリフェノールやリスベラトロールが、動脈硬化や発癌の予防効果があるのです。

では、赤ワインの適量はどのくらいでしょうか。毎日ワイングラスで1、2杯飲んでいると心臓病の発症を減らし、3、4杯飲んでいる人は、アルツハイマー症の発生がぐんと減っているそうです。

また白ワインもカリウム含量が多く、血圧を下げたり骨そしょう症の予防になっています。ただし、飲みすぎれば害があるのは当然ですから、飲み過ぎないことが大事です。

文:ばばれんせい え:みねしまともこ

 

ぶどうの食品成分

出典:食品成分データベース

ぶどうの生産量の都道府県ランキング(平成30年)

順位 都道府県 収穫量 割合
1 山梨県 41,800t 23.90%
2位 長野県 31,100t 17.80%
3位 山形県 16,100t 9.20%
4位 岡山県 15,300t 8.80%
5位 福岡県 7,300t 4.20%
6位 北海道 5,180t 3.00%
7位 大阪府 4,830t 2.80%
8位 青森県 4,490t 2.60%
9位 愛知県 4,040t 2.30%
10位 岩手県 3,250t 1.90%
11位 広島県 3,150t 1.80%
12位 福島県 2,640t 1.50%
13位 大分県 2,530t 1.40%
14位 兵庫県 2,290t 1.30%
15位 島根県 2,210t 1.30%
16位 新潟県 2,020t 1.20%
17位 茨城県 2,010t 1.20%
18位 秋田県 1,940t 1.10%
19位 宮崎県 1,730t 1.00%
20位 埼玉県 1,330t 0.80%
21位 香川県 1,300t 0.70%
22位 群馬県 1,240t 0.70%
23位 石川県 1,120t 0.60%
24位 愛媛県 1,040t 0.60%
25位 滋賀県 567t 0.30%
26位 鳥取県 560t 0.30%
27位 富山県 230t 0.10%

出典:地域の入れ物