フキ
NO.23
どこにでも自生する日本原産の野菜
雪解けを待ちかねたように地中から最初に顔を出すのがフキノトウです。フキノトウは、フキの花のつぼみのことで、まだ葉が出る前に地中から芽を出すように出てくるのです。
フキノトウは、独特の香りと苦味があり、季節の到来を知らせてくれる食べ物です。生のまま、千切りにして味噌汁にはなすと、ぷんとしたいい香りが春の到来を知らせてくれます。栄養分でも、カロチン、ビタミンAなどが豊富だということです。
てんぷらにすると、揚げているうちにつぼみが開いて、若干、苦味が取れてしまうので、てんぷらは低めの温度がコツと教わりました。油でいためると、やはり苦味が薄くなるようです。
フキは、日本原産の山菜であり、日本全国の山野に自生しています。朝鮮半島、中国、シベリア地方の一部にも自生しています。手入れも何もしない庭ほど、フキとドクダミが生えてくると言われています。フキは本当にどこにでも生えている山菜であり野菜なのです。フキの名前の由来は「冬葱(ふゆき)」または「冬黄(ふゆき)」からきたと言われており、冬に出てくる浅葱色の植物なので、そこから名前をとったようです。
フキは根の部分から葉まで長い茎になっており、これを葉柄(ようへい)と呼んでいます。東北から北海道にかけて自生するフキは、大型の秋田フキと呼ばれるもので、葉柄の長さが2メートル、葉の直径が1メートルに達するものもあります。
高さが3メートルもあるフキが自生
2016年開催の第11回全国学校給食甲子園で優勝した北海道足寄町学校給食センターの吉田美優・栄養教諭の献立のご飯は、地元の螺湾(らわん)川に沿って自生しているラワンぶきを焚き込んだ「繊維たっぷりご飯」でした。応募書類に添付されていたラワンぶきの写真を見てびっくりしました。茎の直径は10センチ、高さが3メートルを超え、大きいな葉っぱを広げてまるでジャングルのように群生するラワンぶきの下で、子どもたちが見上げている風景でした。大人よりもはるかに背の高いフキがこの世にあるとは驚きです。
自生している足寄町の地域は、砂質の湿地帯でありミネラル分が豊富です。上流は北海道三大秘湖とされるオンネトーであり、四季を通じて多彩な景色になる神秘の湖として有名です。筆者は一度だけ行ったことがありましたが、ラワンぶきのことは知らず、短時間の見学だったので湖を鑑賞している時間がなかったのが残念でした。
ラワンぶきは、JAあしょろの登録商標であり、種苗は足寄町外への持ち出しを禁止しています。ラワンブキ茶、ラワンブキそば、ラワンブキカクテル、ラワン蕗羊羹、ラワン蕗まんじゆう、ラワンブキのおかず宝螺蕗、らわんぶきの佃煮、フキ寿司、ラワンぶきソフトクリームなど名産品を売り出して観光資源になっています。
中国では解毒作用を利用
スーパーなどで販売されているフキは、多くが愛知早生(尾張フキ)と言われるフキで、葉柄は太めで淡緑色で香りがよく、季節の野菜としてぴったりです。愛知県地方では、江戸時代からフキの栽培が盛んで、早生の品種を選別しては栽培するようになったようです。
また京都地方には、水フキという種類があります。これは柔らかで苦味が薄く、京料理に合っています。京都で食べるお膳にはよく、季節の野菜としてついてくるのでご記憶のある方はいると思います。
フキの葉も佃煮風にして、有効に利用されています。味噌と一緒に甘辛く煮込みますが、フキの風味はそのまま残ります。日持ちするので、食欲がおちたときなど、アツアツのご飯といっしょに食べると食欲増進間違いなしです。
フキは中国では食用ではなく根茎を解毒剤として利用しています。フキの葉には、苦味配糖体や粘液、サポニン、コリン、タンニン、洒石酸などが含まれ、咳止めに用いられているそうです。
ところで、「春の料理には苦味を盛れ」という言葉をご存知でしょうか。早春の食卓には、苦味のある食べ物が季節の風味としてのることが多いことからきた言葉のようです。この季節、ワラビ、ウド、タラの芽、フキ、セリ、ヨモギ、ヨメナなどあくの強いものやえぐ味、苦味のあるものが多く出てきます。
冬の寒さをしのいで芽を出す生命力を感じさせるものであり、春の訪れを感じさせるものばかりです。と同時に、苦味や香りなど旬の風味と個性を生かした料理を作って、食卓を飾りましょうという教えなのです。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
ふきの食品成分
順位 | 都道府県 | 生産量 | 割合 |
1位 | 新潟県 | 19.5t | 19.10% |
2位 | 群馬県 | 14.9t | 14.60% |
3位 | 愛媛県 | 11.5t | 11.30% |
4位 | 秋田県 | 10.9t | 10.70% |
5位 | 山形県 | 8.6t | 8.40% |
6位 | 青森県 | 8.1t | 7.90% |
7位 | 長野県 | 5.2t | 5.10% |
8位 | 福島県 | 4.7t | 4.60% |
9位 | 千葉県 | 1.9t | 1.90% |
10位 | 茨城県 | 1.8t | 1.80% |
11位 | 岡山県 | 1.7t | 1.70% |
12位 | 宮城県 | 1.6t | 1.60% |
13位 | 岩手県 | 1.5t | 1.50% |
14位 | 福岡県 | 1.4t | 1.40% |
15位 | 石川県 | 1.3t | 1.30% |
15位 | 長崎県 | 1.3t | 1.30% |
17位 | 佐賀県 | 0.9t | 0.90% |
18位 | 栃木県 | 0.8t | 0.80% |
19位 | 熊本県 | 0.7t | 0.70% |
20位 | 静岡県 | 0.6t | 0.60% |
21位 | 岐阜県 | 0.4t | 0.40% |
21位 | 兵庫県 | 0.4t | 0.40% |
21位 | 大分県 | 0.4t | 0.40% |
24位 | 和歌山県 | 0.3t | 0.30% |
24位 | 山口県 | 0.3t | 0.30% |
26位 | 福井県 | 0.2t | 0.20% |
26位 | 京都府 | 0.2t | 0.20% |
26位 | 鳥取県 | 0.2t | 0.20% |
26位 | 徳島県 | 0.2t | 0.20% |
26位 | 高知県 | 0.2t | 0.20% |
31位 | 富山県 | 0.1t | 0.10% |
31位 | 宮崎県 | 0.1t | 0.10% |
32位以下のデータなし
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