食のこばなし

ナス

NO.3

日本を代表する夏野菜

ナスは日本人の大好物です。日本のナスの年間生産量は、四十二万トンで世界第三位であり、ナスの料理もたくさんあります。

長ナス、丸ナス、米ナス、小ナスなど種類も豊富であり、煮ても焼いても日本人の口に良く合います。筆者は、米ナスの田楽とか焼きナスをたっぷりのしょうが醤油で食べるのが大好きです。

ナスはキュウリと並んで、夏野菜の風物詩でした。しかしいま温室栽培の普及で、一年中いつでも食べられるようになりました。

季節の魚、野菜、果物の旬のはしりには、「初物」という言葉がありました。その年、最初に食べるのを初物と言って食卓の話題になったのです。しかしいま、多くの生鮮食品の世界で初物は、死語になってしまいました。

私たちは生活の利便性と引き換えに、自然に息づく多くの匂いを失ってしまったのです。

ナスの原産はインドです。中国、中東、北アフリカでは、五世紀には栽培されていたとのことです。日本では西暦七五〇年に入ってきたという記録が、正倉院に残っているそうです。

ナスにまつわる豊富な話

お盆になると、仏壇のお掃除をしてご先祖さまをお迎えしますが、仏壇にはお供えやお飾りをします。お供えは、季節の野菜や果物ですが、お飾りには夏の野菜を代表するナスとキュウリで作った牛と馬を置きます。

ナスとキュウリにオガラを刺して足を作り、トウモロコシの毛でしっぽを作ります。小豆の眼、南天の葉の耳、さやえんどうを鞍にし、そうめんの手綱を作って出来上がりです。

筆者の田舎の仙台市の叔母が、こんなことを言っていたのを思い出します。ご先祖さまは馬に乗り、荷物は牛の背に乗せて来られるようにという意味だということです。七夕祭りでも、ナスの牛とキュウリの馬をお供えにしますが、それがお盆でも引き継がれたということです。

最近は馬と牛の代わりに、ミニチュアカーが飾られるという話を聞いたことがあります。ご先祖様も車で来る時代なのです。時代とともに、飾り物も変革していくのでしょう。

ナスは日本人の心の古里ですから、多くの諺や言い伝えが残っています。

「親の意見となすびの花には、千に一つも仇(あだ)はない」

なすび(ナス)の花には無駄がないことにたとえて、親の意見には無駄や誤りがないことを言ったものです。

「秋ナスは嫁に食わすな」

秋口になるとナスは形が小さくなり、えぐみもタネも少なくなり肉がしまって味が良くなります。おいしいナスを嫁に食わすのは惜しいという、しゅうとめの気持ちを表すという説があります。嫁としゅうとめの確執からきたのでしょう。

一方で、秋ナスはタネが少ないので、嫁が食べると子ダネが耐えると心配したしゅうとめの老婆心という説もあります。これなら嫁も救われます。

「一富士、ニ鷹、三なすび」というのは、初夢に見ると縁起がいいものの順番です。富士は雄大、鷹はつかみ取る、ナスは「成す」に通じるからと言われています。

ナス料理の醍醐味をご披露

ナスは、油いために良くあうし、みそ汁の具にも合います。漬物でも、ぬかみそ漬け、塩漬け、粕漬け、みそ漬け、からし漬けなど、どれもナスの風味を生かした漬物になっています。

仙台の長ナスは、とりたてを二時間ほど塩漬けにして食べますが、ぱりっとした歯ざわりとナス独特の甘味は最高です。

筆者は、キッチンに入って、自分で作るナス料理があります。レストランのシェフから教えてもらった、とっておきの「蒸しナスのピリ辛冷製」を披露しましょう。

まず、ナスを蒸します。蒸しあがったら味がしみこむように、竹串で切り込みを入れておきます。

次ににんにく、しょうが、ネギ、赤唐辛子をみじん切りにし、ゴマ油でいためます。ぷんとしたいい香りが出てきたら、醤油、砂糖、酢を入れて煮立て、あつあつのナスの上からかけます。

これを冷蔵庫に入れて二、三日おくと味がしみこんで美味しさ抜群です。

ナスは食べるだけではありません。外国では、あの可憐な紫色の花の美しさやナスの実の濃紺のつややかさを、鑑賞して楽しむところもあるということです。見たことはありませんが、鑑賞ナスとして、赤いナスや黄色のナスもあるということです。

                                                                         文・ばばれんせい え・とよだゆき

 ナスの可食部100gあたりの成分

エネルギー 水分 たんぱく質 脂質 炭水化物 灰分 飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸 コレステロール 食物繊維
22 93.2 1.1 0.1 5.1 0.5 0.03 -g 1 2.2
kcal g g g g g g mg g
ビタミン
カロテン E K B1 B2 ナイアシン B6 葉酸 パントテン酸 C
100 0.3 9 0.04 0.04 0.6 0.06 19 0.3 6
μg mg μg mg mg mg mg μg mg mg
無機質        
ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム リン        
Tr 220mg 18mg 17mg 30mg 0.3mg        
五訂日本食品標準成分表より        

 

 1年間に食べるナスの量(2018年)都道府県別ランキング

順位 都道府県 個数
1 秋田県 18.3個
2 神奈川県 16.7個
3 青森県 16.1個
4 京都府 15.9個
5 奈良県 15.9個
6 宮城県 15.8個
7 東京都 14.2個
8 山形県 13.9個
9 滋賀県 13.9個
10 福井県 13.4個
11 島根県 13.3個
12 埼玉県 13.0個
13 岩手県 12.9個
14 福岡県 12.4個
15 長崎県 12.3個
16 三重県 12.1個
17 佐賀県 12.1個
18 新潟県 12.0個
19 広島県 11.7個
20 富山県 11.6個
21 福島県 11.5個
22 北海道 11.3個
23 栃木県 11.3個
24 石川県 11.2個
25 長野県 11.2個
26 愛知県 11.0個
27 岐阜県 10.9個
28 熊本県 10.8個
29 千葉県 10.5個
30 静岡県 10.4個
31 茨城県 10.1個
32 鳥取県 10.1個
33 徳島県 9.8個
34 大分県 9.8個
35 兵庫県 9.6個
36 大阪府 9.5個
37 山口県 9.4個
38 香川県 9.1個
39 宮崎県 8.5個
40 愛媛県 8.4個
41 和歌山県 8.3個
42 岡山県 8.3個
43 高知県 7.7個
44 山梨県 7.6個
45 群馬県 7.5個
46 鹿児島県 7.4個
47 沖縄県 6.4個

 出展:地域の入れ物;https://region-case.com/