ダイズ(大豆)
NO.20
豆まきは人里に降りて来た鬼退治
今年の立春は2月3日です。立春には豆まきをして家内安全と健康を祈ります。この行事はもともと、室町時代から始まった宮中の行事だったものが、江戸時代に庶民の行事として広がっていったものでした。
豆まきは、鞍馬の山奥に住んでいた鬼が、人里に降りてきたので三石三斗の豆をまいて鬼の目をつぶした故事にならったものとも言われています。古来から親しんできた豆まきの豆は大豆なのです。
大豆は北東アジアが原産地で、日本へは中国から渡ってきました。弥生時代の土器の中からも発見されているので、大昔から日本人の大事な食べ物だったのです。肉食をあまりしなかった私たちの祖先は、大豆を栽培してさまざまな食材として欠かせないものになっていきました。日本では昔から、神社やお寺に「五穀豊穣」を祈願する風習がありました。この五穀とは、米、麦、キビ、栗そして大豆のことなのです。
大豆の栄養成分の30%はたんぱく質ですが、そのようなことも知らなかった時代でも、祖先の人々は大豆の栄養分を体で感じるようになっていったのでしょう。
食生活になくてはならない大事な食材
大豆を一躍有名にしたのは明治8年にオーストリアで開催された万国農業博覧会だったという記録が残っています。このとき日本は、大豆とてんぐさを出展しました。するとドイツの学者の眼にとまり、大豆の栄養成分を調べてくれました。驚いたことに牛肉に近いたんぱく質や脂肪分を含んでいることが分かり、学者は「畑の肉」と命名したと言われています。
日本人の食生活で大豆ほど重宝されているものはないでしょう。大豆を原料とする製品には、味噌、醤油、豆腐、納豆、モヤシ、湯葉、きな粉、食用油、マーガリンなど私たちの食生活に密着しています。
大豆に豊富に含まれているたんぱく質ですが、これは生きていくためにはなくてはならない栄養分です。筋肉はもとより血液も皮膚も作る大切な栄養成分です。たんぱく質は、20種類のアミノ酸からできています。アミノ酸は生体が合成するものもありますが、9種類のアミノ酸は生体ではどうしても合成できないものです。だから食物として外部から摂取しなければなりません。
この9種類のアミノ酸を含む食品は大変貴重なものであり、卵、肉、魚介類とともにその中には大豆も入っているのです。肉や魚などの動物性たんぱく質は脂肪分も多いので、過剰な摂取はどうしても肥満のもとになったり高コレステロールの原因になってしまいます。
大豆の成分の中でも最近注目されているのが、イソフラボンという成分です。若さを保ち、更年期障害を緩和し、骨粗しょう病や乳がん、子宮ガンを予防すると報告されています。
アメリカの大豆は日本が祖先!?
植物性のたんぱく質と動物性のたんぱく質の摂取比率は、双方半々がもっとも理想的と言われています。肉食中心の欧米人の食生活では、どうしても動物性たんぱく質が多くなってしまいますが、日本人の食生活は、ほぼ半々になっています。和食はその点からも理想的な食生活なのです。だから最近はアメリカなどでも日本食や豆腐、豆乳などがブームになっています。筆者のアメリカの友人も毎朝、豆乳を欠かさず飲んでいます。
世界の大豆生産国は、なんと言ってもアメリカと中国です。中国へ行くと、大豆料理が多数あります。アメリカの大豆は、1854年にペリー提督が日本に開国を求めてきた際に大豆を持ち帰ったのものがもとではないかと言われています。いまアメリカから大豆を輸入していますが、その大豆は日本が古里だったのです。
ビールのおつまみの定番ともいえる枝豆は、大豆が未成熟なうちに枝ごと収獲したものです。栄養分は大豆に劣らず高く、しかも大豆に含まれていないビタミンCが豊富に含まれています。さらに枝豆には肝臓をアルコールから守るメチオニンと言う成分が含まれており、ビタミンB1やCとともにアルコールを分解してくれます。枝豆とビールは、このようにすこぶる相性がよかったのです。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
大豆の栄養成分(可食部100g)
出典:食品成分データベース
順位 | 都道府県 | 収穫量 | 割合 |
1位 | 北海道 | 88,400t | 40.60% |
2位 | 宮城県 | 15,100t | 6.90% |
3位 | 秋田県 | 13,900t | 6.40% |
4位 | 福岡県 | 8,830t | 4.10% |
5位 | 滋賀県 | 7,830t | 3.60% |
6位 | 山形県 | 7,670t | 3.50% |
7位 | 新潟県 | 7,670t | 3.50% |
8位 | 青森県 | 7,660t | 3.50% |
9位 | 富山県 | 6,500t | 3.00% |
10位 | 岩手県 | 6,310t | 2.90% |
11位 | 佐賀県 | 6,260t | 2.90% |
12位 | 愛知県 | 5,030t | 2.30% |
13位 | 栃木県 | 3,560t | 1.60% |
14位 | 三重県 | 3,520t | 1.60% |
15位 | 茨城県 | 3,310t | 1.50% |
16位 | 岐阜県 | 3,220t | 1.50% |
17位 | 熊本県 | 3,090t | 1.40% |
18位 | 長野県 | 2,840t | 1.30% |
19位 | 福井県 | 2,190t | 1.00% |
20位 | 石川県 | 2,060t | 0.90% |
21位 | 兵庫県 | 1,800t | 0.80% |
22位 | 福島県 | 1,490t | 0.70% |
23位 | 岡山県 | 1,260t | 0.60% |
24位 | 大分県 | 1,260t | 0.60% |
25位 | 島根県 | 990t | 0.50% |
26位 | 山口県 | 915t | 0.40% |
27位 | 鳥取県 | 750t | 0.30% |
28位 | 愛媛県 | 585t | 0.30% |
29位 | 埼玉県 | 547t | 0.30% |
30位 | 広島県 | 439t | 0.20% |
31位 | 鹿児島県 | 406t | 0.20% |
32位 | 群馬県 | 387t | 0.20% |
33位 | 千葉県 | 375t | 0.20% |
34位 | 京都府 | 347t | 0.20% |
35位 | 宮崎県 | 344t | 0.20% |
36位 | 山梨県 | 268t | 0.10% |
37位 | 長崎県 | 207t | 0.10% |
38位 | 静岡県 | 191t | 0.10% |
39位 | 奈良県 | 102t | 0.00% |
40位 | 神奈川県 | 55t | 0.00% |
41位 | 香川県 | 46t | 0.00% |
42位 | 高知県 | 30t | 0.00% |
43位 | 和歌山県 | 26t | 0.00% |
44位 | 大阪府 | 17t | 0.00% |
45位 | 東京都 | 8t | 0.00% |
46位 | 徳島県 | 7t | 0.00% |
47位 | 沖縄県 | 0t | 0.00% |
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