食のこばなし

ダイコン

NO.21

ピラミッドを作った労働者の食べ物

おでん屋に入ると真っ先に注文するのがダイコンです。味がほどよくしみこんだ熱くて分厚いダイコンを、ふうふういいながら食べる光景は、日本の冬の風物詩でしょう。春の七草のひとつである「すずしろ」はダイコンのことを言います。

ダイコンは多彩な品種があり、かつては白首ダイコンが主流でしたが、いまは青首ダイコンに集約されてきました。尾張地方のダイコンだった甘くてみずみずしい青首ダイコンは、どんな土質でも育ちやすい特徴があるため、あっという間に全国に普及していきました。日本で品種改良された世界トップのダイコンではないかと思います。

ダイコンはいまから六千年前の古代エジプトでは、ピラミッドを建設した労働者の食糧に使ったとも言われています。やがてエジプトから中国に広がり、日本ではすでに奈良時代の古文書に記録が出ていますから、古くから日本人の食卓にのぼっていた野菜だったのです。

胃液の分泌を促し腸の働きを整える

「ダイコンおろしに医者いらず」ということわざがあるように、ダイコンは豊富な栄養素を持っています。「モチにダイコンおろし」「ダイコンを食べると夏負けしない」と言われてきたのもジアスターゼやビタミンCが豊富に含まれているので消化、整腸によく体力を増強するからです。でんぷんの消化を助けるジアスターゼの効能を期待して、からみモチ、おろしそば・うどんなどがあります。プロテアーゼというたんぱく質分解酵素もあります。またビタミンAも多く含まれています。

ダイコン独特の辛味はアリルイソチオシアネートというからし油の成分です。胃液の分泌を促し腸の働きを整えてくれます。こうした栄養素や辛味成分は、ダイコンの部位によって含まれている割合が違っています。

ダイコンの首に近い部分は、甘味が強くて固いので、ナマのまま、せん切りや薄切りにして食べるのに適しています。ダイコンの中央部は甘味も強く柔らかいので、おでんの材料とかふろふきダイコンなどダイコンの味を堪能するのに最適です。ダイコンの先端部分は、辛味が強く、強い筋が入っているのですりおろしたり細かく切って使います。

ダイコンの葉は、カロチンを多く含み、カルシウムや鉄分などのミネラル、葉酸、ビタミンC、Eなどを含んだ栄養万点の黄緑色野菜です。筆者の大好物であり、細かく刻んで油いためしています。いための仕上げにちょっとだけ醤油をたらすのがコツで、これを納豆に混ぜたり、熱々のご飯にかけて食べています。

ダイコンおろしはフタをして保存

ダイコンおろしは、焼き魚やてんぷらの薬味にしたり、ステーキやハンバーグにも合います。料理人に聞いた話ですが、ダイコンおろし器は銅製がいいそうです。銅のあたりが柔らかくて歯が鋭いのでダイコンの細胞が壊れにくく、おろしのうまみがそのまま出てくるということです。また皮付きでおろすのがいいそうで、おろしで出た汁は栄養価が高いので捨てないで食べることだということです。

また、ダイコンおろしは、ふたをしないで放置しておくと栄養分が減っていくそうで、ビタミンCなどは、30分で15%、1時間もすれば半減してしまうと言うことです。また、ダイコンおろしのしぼり汁に蜂蜜を加えて飲むと、セキどめやノドの痛み、二日酔いに効くそうです。

日本には一般家庭で食べている青首ダイコンのほかにも、各地に郷土野菜として珍重されているいろいろなダイコンがあります。たとえば大阪府守口市近郊で作られている守口ダイコンは、直径が2.5センチ、長さは1.5メートルもある世界一細長いダイコンです。守口漬けとして名産品になっています。

桜島ダイコンは、鹿児島県桜島の火山灰地で生育する世界最大のダイコンです。早世系は長め、晩成系は球または偏球形であり、重さが10キロもあります。肉質は緻密で煮崩れがしないので郷土料理には欠かせないと言うことです。

京都の聖護院ダイコンは丸型のダイコンで、肉質は緻密なのに柔らかく、煮物や漬物に使われています。東京にも太くて長い練馬ダイコンがありましたが、宅地化が進んで栽培面積が激減し、いまは生産量も微々たるものになりました。

文:ばばれんせい 絵:みねしまともこ

ダイコンの食品成分(可食部100gあたり)

出典:野菜情報サイト野菜ナビ

 

大根の生産量の都道府県ランキング(平成30年)

順位 都道府県 収穫量 割合
1位 北海道 156,900t 11.80%
2位 千葉県 150,500t 11.30%
3位 青森県 122,500t 9.20%
4位 鹿児島県 95,100t 7.20%
5位 神奈川県 80,000t 6.00%
6位 宮崎県 77,900t 5.90%
7位 茨城県 57,200t 4.30%
8位 長崎県 53,600t 4.00%
9位 新潟県 44,300t 3.30%
10位 群馬県 30,900t 2.30%
11位 徳島県 26,200t 2.00%
12位 熊本県 25,800t 1.90%
13位 岩手県 24,700t 1.90%
14位 埼玉県 23,400t 1.80%
15位 愛知県 22,800t 1.70%
16位 福島県 22,000t 1.70%
17位 静岡県 20,700t 1.60%
18位 長野県 19,600t 1.50%
19位 岐阜県 18,300t 1.40%
20位 栃木県 18,000t 1.40%
21位 山形県 16,200t 1.20%
22位 秋田県 16,000t 1.20%
23位 福岡県 15,600t 1.20%
24位 大分県 14,500t 1.10%
25位 兵庫県 14,300t 1.10%
26位 宮城県 11,700t 0.90%
27位 石川県 11,400t 0.90%
28位 広島県 11,200t 0.80%
29位 山口県 11,100t 0.80%
30位 岡山県 10,900t 0.80%
31位 和歌山県 9,710t 0.70%
32位 東京都 9,020t 0.70%
33位 香川県 7,340t 0.60%
34位 福井県 5,880t 0.40%
35位 滋賀県 4,950t 0.40%
36位 富山県 4,200t 0.30%
37位 奈良県 3,500t 0.30%
38位 三重県
39位 京都府
40位 佐賀県
41位 大阪府
42位 山梨県
43位 島根県
44位 愛媛県
45位 沖縄県
46位 高知県
47位 鳥取県

出典:地域の入れ物