食のこばなし

セロリ

NO.76

セロリを初めて見て食べたのは、先輩に連れられて東京・銀座のしゃれたバーに行ったときでした。見慣れない白い細長い茎に、食塩をつけて食べている光景を見て「あれは何だろう」と思ったものでした。食べてみると独特の香りがありますが、慣れるとこれが美味しく感じるようになり、ビールのおつまみの定番となりました。

芳香剤から食用となって世界に普及

セロリの原産地は、ヨーロッパから中近東など広い地域であり、野生種として生育していました。冷涼で湿気の多い地域を好み、古代ギリシャ時代から香料として使われたり、 整腸や強壮剤として利用されていました。食用にせず男性の強精薬に使われていたようです。

香りが強いので、死体の腐臭を取り除くために芳香剤代わりに使われていた記録もあります。整腸剤、香料として珍重されたほか、ミイラの首飾りや、古代ギリシャのお祭りに飾られたということです。

紀元前500年ごろの貨幣にはセロリの葉の柄が刻まれているので、このころには食用になっていたと推測されています。しかし一般の人々の食用になったのは、17世紀になってからのようです。18世紀にはイギリスで量産され、やがてアメリカにわたって品種改良が進み、一般の食卓にもあがるようになったのです。 日本で普及したのは、昭和30年代のことであり食生活が洋風化してからのことです。

「清正ニンジン」と「オランダミツバ」

日本には、1600年の直前、豊臣秀吉の朝鮮出兵のときに加藤清正が持ち込んだという説があります。そのころは 「清正ニンジン」と呼ばれたという記録も残っています。

ニンジンと呼んだのは、ニンジンの葉のような香りをしていたからでしょうか。江戸時代になって、オランダから再度セロリが持ち込まれ、そのころは 「オランダミッパ」と呼ばれました。 ニンジンではなくミツバを連想したのです。セロリの植物学上の分類では、ニンジン、ミツバ、パセリ、アシタバボウフウなどの仲間ですから、連想はどれも当てはまるのです。

茎・葉はサラダなどで生食されますが、漬物、佃煮にも利用されスープ、シチューなど肉料理の香味野菜として使用されています。

特有の香りには精神安定の効果も

セロリはビタミンB1・B2・C・カルシウムと食物繊維が豊富であり、特有の香りはアビオールと呼ばれる香味成分です。

セリの仲間なので香りが強いのですが、この香りは食欲を増進させ、ストレスに対する抵抗力をつけ、イライラを軽減させる精神安定の効能かあるということです。セリのなかまで栄養的にはセリには及びませんが、カリウムが少し多く、カルシウムとリンがほぼ1対1の割合で含まれているとのことです。

栄養は茎より葉

セロリは、茎を好んで食べていますが栄養素はむしろ茎よりも葉の方にあります。香りは葉の方が強いので、肉や魚の臭い消しにはセロリの葉をもいで散らすこともあります。炒め物では茎を好みますが、独特の臭いが嫌いな人は牛乳を入れたスープにすると気にならないとも言われています

筆者はよく中国に行きますが、中国でもセロリの料理がよく出てきます。多くは野菜炒めの類ですが、いつでもどこでも大変おいしく食べています。中国では 「芹菜」とか「胡芹」と書いており、芹がついているところを見ると、中国でもセリの仲間と見られているのでしよう。

野菜の消費の増減は時代とともに変遷していきます。キャベツ・レタス・セロリの順で消費が変化していったという説もあります。 セロリはやがてキャベツのようにホピュラーな野菜になるのでしようか。スーパーなどの売り場では、年中必ず見かける野菜になっています。

文:ばばれんせい 絵:みねしまともこ

 

セロリの食品成分

出典:食品成分データベース

セロリの生産量の都道府県ランキング(令和3年)

順位
都道府県
収穫量
割合
1 長野県 12,600t 42
2 静岡県 5,760t 19.2
3 福岡県 3,460t 11.5
4 愛知県 2,650t 8.8
5 香川県 924t 3.1
6 千葉県 859t 2.9
7 北海道 834t 2.8

出典:地域の入れ物

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