シイタケ
NO.53
シイタケ栽培を初めて見る
大分前のことですが、静岡県の伊豆の伊東温泉に行ったとき、旅館の周辺を散歩していて妙な光景に出くわしました。1メートルほどに切った枯れ木を4本一組にして立てかけ、それがなん十組も並んでいるのです。
近づいて見ると枯れ木のいたる所で見事な大きなシイタケがにゃきにょきと生えているのでびっくりしました。
シイタケは、シイ、ナラ、クリ、クヌギなどの枯れ木に自生するキノコとは聞いていましたが、このように栽培しているのを見たのは初めてでした。しげしげと観察していると、ご老人が近づいてきてやおらシイタケの話を始めました。
ホタギにシイタケ菌を接種して育てる
4本一組にした枯れ木をホダギと言うそうで、シイタケ菌を接種してから1年ほど寝かせるとシイタケが生えてくるそうです。シイタケによく似たツキヨタケというのがあるそうで、これは毒キノコだと教えてくれました。山でキノコ狩りをするときには、このキノコが一番危険ということでした。
ご老人の言うことでびっくりしたのは、シイタケを食べると皮膚炎を起こすことがあるということでした。一種のアレルギー反応だということです。また手荒れやひび割れが出た時には、干しシイタケの戻し汁で手を洗うと治ると教えてくれました。
シイタケ酒も造っているとのことで、シイタケを千切りにして日光に当て、ホワイトリカーとハチミツ、レモンの輪切りを一緒に入れて暗いところに1か月ほど置くと出来上がり。毎日、盃に3杯飲んでいるそうで、コレステロールを防御する最高の薬用酒ということでした。
続いて聞いた仲居さんのシイタケ談義
そんなシイタケ談議を聞いたあと、おおきなシイタケを5つほどプレゼントされました。「宿に帰って焼いてもらいなさい。私からもらったと言えば焼いてくれる」と言うのです。
名前は忘れましたが、宿に帰ってその通りに言うと、宿の仲居さんが「はい、はい」と受け取ってすぐに焼いて部屋へ持ってきてくれたのには感激でした。
今度は仲居さんのシイタケ談議を聞きました。
焼くときにはまず石づきを切ります。大きいシイタケは4つに割り、小さ目は2つに割って傘を下にして焼くのがコツだということです。軸に火を通すときはもちろん横向きに焼き、焼き上がりにはポン酢、ショウガ醤油など好みで食べるということでした。
傘を下に焼いているときに、ひだの上にじゅわっとつゆが出てきたら、ぱっと塩を振り掛け、レモン汁につけて食べるのもいいそうで、仲居さんはこれが一番好きだと言っていました。
生シイタケも干しシイタケも、料理をする前に日光に当たるとビタミンDの含有量が増えると言います。
シイタケによるアレルギー反応は、シイタケに含まれているレンチナンという物質だそうで、これは抗がん作用もあるもので、シイタケのエキス分をがんの治療に利用しているとも聞いています。
室町時代に中国から入ってきた
シイタケが中国から日本に入ってきたのは室町時代でした。人工的に栽培が始まったのは江戸時代に入ってからのようです。日本人の創意工夫によって栽培方法もいろいろ開発され、大分県や宮崎県、伊豆地方で盛んに栽培されるようになったということです。
シイタケの成分でよく知られているのはビタミンDです。カルシウムの摂取を助け、骨粗鬆症の予防にもなります。成分の一種のエリタデニンという物質は、コレステロールを抑制し、血圧を下げる効果もあるということです。
ビタミン、ミネラル、繊維質を多く含み、ノンカロリーなのでダイエットにも最適のようです。うまみ成分のグルタミン酸なども多くふくまれているのでだし汁を作る時にも利用されています。ただし、だし汁を取るときは、干しシイタケが主流です。
シイタケの発祥地は大分県で、品質、量ともに日本一です。大分県に行ったときに聞いた話では、大分県の気候風土がシイタケ栽培に適していたからだそうです。山間部の気候は冬と夏の寒暖の差が激しいうえに、梅雨時には雨が多く湿度が高くなり、シイタケ栽培に適しているとのことでした。いまでも日本の干しシイタケの4分の1は大分県の生産だと聞きました。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
しいたけの食品成分
出典:食品成分データベース
生しいたけの生産量の都道府県ランキング(令和元年)
順位 | 都道府県 | 生産量 | 割合 |
1位 | 徳島県 | 8,209t | 11.50% |
2位 | 北海道 | 6,719t | 9.40% |
3位 | 岩手県 | 4,254t | 6.00% |
4位 | 群馬県 | 3,967t | 5.60% |
5位 | 秋田県 | 3,625t | 5.10% |
6位 | 栃木県 | 3,157t | 4.40% |
7位 | 宮崎県 | 3,101t | 4.40% |
8位 | 長崎県 | 3,042t | 4.30% |
9位 | 長野県 | 3,020t | 4.20% |
10位 | 福島県 | 2,853t | 4.00% |
11位 | 新潟県 | 2,558t | 3.60% |
12位 | 岐阜県 | 2,425t | 3.40% |
13位 | 千葉県 | 2,082t | 2.90% |
14位 | 大分県 | 1,794t | 2.50% |
15位 | 島根県 | 1,685t | 2.40% |
16位 | 静岡県 | 1,425t | 2.00% |
17位 | 富山県 | 1,402t | 2.00% |
18位 | 山形県 | 1,282t | 1.80% |
19位 | 岡山県 | 1,168t | 1.60% |
20位 | 和歌山県 | 1,162t | 1.60% |
21位 | 宮城県 | 1,076t | 1.50% |
22位 | 鹿児島県 | 967t | 1.40% |
23位 | 兵庫県 | 840t | 1.20% |
24位 | 茨城県 | 803t | 1.10% |
25位 | 広島県 | 761t | 1.10% |
26位 | 愛知県 | 721t | 1.00% |
27位 | 埼玉県 | 670t | 0.90% |
28位 | 熊本県 | 654t | 0.90% |
29位 | 三重県 | 652t | 0.90% |
30位 | 愛媛県 | 630t | 0.90% |
31位 | 福岡県 | 595t | 0.80% |
32位 | 石川県 | 447t | 0.60% |
33位 | 高知県 | 423t | 0.60% |
34位 | 奈良県 | 366t | 0.50% |
35位 | 山口県 | 339t | 0.50% |
36位 | 滋賀県 | 291t | 0.40% |
37位 | 香川県 | 282t | 0.40% |
38位 | 鳥取県 | 280t | 0.40% |
39位 | 青森県 | 237t | 0.30% |
40位 | 京都府 | 210t | 0.30% |
41位 | 福井県 | 202t | 0.30% |
42位 | 神奈川県 | 179t | 0.30% |
43位 | 東京都 | 163t | 0.20% |
44位 | 山梨県 | 162t | 0.20% |
45位 | 大阪府 | 98t | 0.10% |
46位 | 佐賀県 | 80t | 0.10% |
47位 | 沖縄県 | 54t | 0.10% |
出典:地域の入れ物
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