食のこばなし

サンマ

NO.12

記録的な不漁になった今年のサンマ

サンマは秋の味覚の代表選手です。旬の新鮮なサンマを、その姿のまま塩焼きし、大根おろしとすだちを添えるだけですが、天下一品、日本伝統の料理と言えるでしょう。焼いた魚だけでこれほど話題になる魚はサンマぐらいです。

そのサンマが今年は記録的な不漁になり、漁業関係者を不安がらせています。初夏から続いている異常気候と何か関係があるのでしょうか。値段があがって高級魚に格上げになったのではサンマらしくなくなるのですが。

サンマは古くから庶民に好んで食べられてきました。10月中旬ごろが旬であり、世界で一番サンマを食べているのは日本人です。この時期一番脂がのって美味しいとされています。美味しさの表現に、瑞々しさ、甘さ、歯ざわりやのど越しのよさなどたくさんありますが、サンマの場合は「脂がのった焼き魚」の美味しさですからやはり別格です。

サンマの脂肪分は9月に10%、10月に20%と増加して、産卵後には5%に落ちてしまいます。わたの(内臓)の苦味は大人の味です。筆者などはこの内臓を惜しみながら食べますが、最近はこれを食べない風潮が出ているようです。水揚げされたばかりのサンマは、刺身や寿司のネタにもなり、筆者の大好物でもあります。

 

懐かしい七輪の網焼き

サンマは北太平洋に生息し、季節によって広い範囲を回遊する魚で、動物プランクトン、甲殻類、小魚、魚卵などを食べ、通常2年で全長約40㎝になります。冷凍にも適しているので、旬の季節以外にも冷凍物を解凍して売られています。冷凍技術が進んだ近頃は、解凍しても光っていて、「新物」と「冷凍物」の見分けが付かないのが普通です。美味しいサンマの見分け方は、背中が厚く、青黒く、光沢と張りがある、目が濁ってないなどがあげられます。

昔、焼き魚は七輪で網焼きでした。今は住宅事情の変化で、焼き魚の煙や臭いを嫌います。近所迷惑になるので、煙の出ない無臭の魚焼き器が研究開発されて普及していますが、昔は炭火の煙の中で焼くサンマは風物詩でした。

サンマは姿が太刀魚のように刀を連想させ、秋の味覚なので、秋刀魚と表記されます。漱石の「吾輩は猫である」の中では、三馬と書かれています。江戸後期の俗語・口語辞典「俚言集覧」(太田全斎編)によると、「三馬、魚の名。さよりに似たり。塩漬にして江戸に送る」とあります。サヨリと混合されて呼ばれていたときもあり、地方によってはサイラともよばれているそうです。

 

サンマ苦いかしょっぱいか

サンマは安くて美味しいだけでなく、栄養面でもすぐれています。主成分の良質の蛋白質、ビタミン、ミネラルが豊富です。サンマの脂肪分は不飽和脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)が豊富に含まれています。

EPAは血液の流れを良くするので脳梗塞、心筋梗塞などの予防に効果があり、DHAは体内の悪玉コレステロールの減少作用、また脳の活性化にも期待できます。

サンマに添える大根おろしは栄養面でも効果的です。消化を助け、さっぱりと食べられ、焼き魚のコゲにある発がん性を緩和すると言われています。海に囲まれ、海の幸の恵みを受け、生活習慣病の予防に役立ち、介護予防にもつながる長寿国日本を支える食文化の一つでしょうか。

サンマは昔から、単に食べ物としてだけでなく、日本人の心の中にも深く溶け込んでいます。

詩人で作家の佐藤春夫の「秋刀魚の歌」は、「あはれ 秋風よ 情(こころ)あらば 伝へてよ」と感傷的です。そしてあの有名な「さんま苦いか 塩っぱいか」が出てくるのです。

秋はスポーツの秋であり、食欲の秋、芸術の秋そして物思う秋でもあります。小津安二郎の代表作に「秋刀魚の味」という映画があります。秋刀魚は登場しませんが、青春、夏を過ぎて季節は人生の秋。それに重ね合わせて秋の味覚の代表として秋刀魚の名を取ったのでしょうか。人生はほろ苦いものであり、移り変わる自然と日本人の心、無常観を意識した映画だったのでしょうか。

 

今年はどうなる目黒のさんま祭り

「目黒のさんま」という落語があります。城に戻った殿様の前に出されたサンマは、脂抜きされ骨をはずされ、お椀の中に姿を変えて現れたのです。びっくりした殿様が言うには「サンマは目黒に限る」。サンマはシンプルでそのものの味を生かした食べ方に限るというオチでした。

東京都目黒区では「さんま祭り」を毎年開催して、この地の名物となっていますが、コロナ禍と記録的な不漁の今年はどうなるのか心配です。

 

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

食品成分(重量100gあたり)

食品成分 廃棄率 エネルギー たんぱく質 脂質 炭水化物 カルシウム マグネシウム
単位 % kcal g g g mg mg
魚介類/さんま/皮つき/生 0 318 18.1 25.6 0.1 28 28
魚介類/さんま/皮つき/焼き 35 313 23.3 22.8 0.2 37 30
魚介類/さんま/皮なし、刺身 0 311 17.8 25 0.2 15 25

 

 

食品成分 亜鉛 ビタミンB1 ビタミンB2 ビタミンC 食塩相当量
単位 mg mg mg mg mg g
魚介類/さんま/皮つき/生 1.4 0.8 0.01 0.28 Tr 0.4
魚介類/さんま/皮つき/焼き 1.7 0.9 Tr 0.3 0 0.3
魚介類/さんま/皮なし、刺身 1.3 0.6 0 0.32 1 0.3

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

 

平成30年(2018年)における、都道府県別のさんまの漁獲量(水揚げ量)とその割合

順位 都道府県 漁獲量 割合
1 北海道 61,077t 47.40%
2 宮城県 18,078t 14.00%
3 岩手県 15,904t 12.30%
4 富山県 10,907t 8.50%
5 福島県 7,615t 5.90%
6 青森県 4,091t 3.20%
7 長崎県 3,763t 2.90%
8 千葉県 3,636t 2.80%
9 静岡県 776t 0.60%
10 三重県 477t 0.40%
11 石川県 6t 0.00%
12 高知県 2t 0.00%
13 京都府 1t 0.00%
14 福井県 0t 0.00%
14 島根県 0t 0.00%
14 山口県 0t 0.00%
14 福岡県 0t 0.00%
14 鹿児島県 0t 0.00%
  茨城県 X X
  東京都 X X
  神奈川県 X X
  新潟県 X X
  兵庫県 X X
  和歌山県 X X
  佐賀県 X X
  熊本県 X X
  宮崎県 X X
  秋田県
  山形県
  栃木県
  群馬県
  埼玉県
  山梨県
  長野県
  岐阜県
  愛知県
  滋賀県
  大阪府
  奈良県
  鳥取県
  岡山県
  広島県
  徳島県
  香川県
  愛媛県
  大分県
  沖縄県

データが非公表の都道府県は「X」、事業所がない都道府県は「-」となっています。

出典:地域の入れ物 https://region-case.com/rank-h30-product-saury/