食のこばなし

サツマイモ

NO.16

世界新記録の源泉はサツマイモ

「イモを食うと馬力が出るんだよ」と大人たちが話をしているのを子どものころ不思議な気持ちで聞いていました。当時、イモと言えばサツマイモのことでした。ご飯の増量分として使われていたサツマイモは、戦後の貧しかった時代の貴重な主食のひとつでした。

そのころ日本中で話題になっていたのは、水泳長距離レースで次々と世界新記録を書き換えた偉大なスイマーの古橋広之進さんのことでした。食料難の時代だったので満足に食べるものがなく、いつも腹をすかしていた古橋選手が世界新を生んだ馬力のもとは、サツマイモでした。サツマイモはご飯と同じくらいカロリーもあり、消化もいいので世界新へのエネルギーになったのです。そのころ育った筆者も、ご飯代わりにサツマイモをたらふく食べました。ご飯にサツマィモを炊き込んだイモメシも随分と食べさせられたものです。サツマイモは、ご飯のいわば増量材として利用されたのです。

馬力も元気も出るサツマイモの栄養成分ですが、ビタミンやカルシウム、カリウムがたつぶり含まれているので栄養満点といえます。がんや風邪の予防に欠かせないビタミンCは、リンゴの7倍も含まれています。ィモ類では2番目です。ビタミンCは熱に弱いので加熱すると壊れてしまいますが、サツマイモは加熱調理をする際にでんぶん質かノリ状になって膜を作り、これがビタミンCを保護して壊れにくくしているのです。

カリウムは、腎臓からナトリウムを排出するので血圧降下に効きますが、サツマイモにはご飯の16倍も含まれているということです。そのほかにもビタミンB1、E なども含まれています。豊富な食物繊維もサツマイモの特長です。食物繊維は、コレステロールを吸着して体内に吸収されるのを防止してくれます。腸管を通過するときに毒性のある物質を吸着して体外へ排除する役割もありますし、便秘解消にも役立っています。腸内に長くとどまり、腸内細菌の活動とあいまってガスを発生するのでおならがよく出るのでも有名です。

 

薩摩の国から広がった「薩摩イモ」

サツマイモは、中央アメリカ・南メキシコの熱帯地方が原産と言われています。原産地からコロンブルがスペインに持ち込み、やがてヨーロッパ、中国へと広がり、琉球(沖縄県) を経て薩摩 (鹿児島県) に伝わってきました。今から約300年前、薩摩の漁師が琉球に渡ったとき、現地の人々が食べていたサツマイモを初めて見て持ち帰り、畑で栽培しました。近所の人たちにもわけてやりましたが、美味しいサツマイモは、たちまち人気ものとなり「薩摩イモ」として日本全土へと広がっていきました。

江戸時代の蘭学者の青木昆陽は、蘭学者としてたびたび長崎に出かけており、サツマィモを早くから知っていました。昆陽は1735年(享保20年) に将軍吉宗に、飢餓を救う食べ物としてやせ地でも育つサツマイモがいいことを提案し、幕府は栽培法を研究させて全国に広げました。サツマイモを甘藷とも言いますが、昆陽は別名、甘藷先生とも呼ばれたそうです。

 

「石焼きいも」はなぜ美味しいか

筆者は金時といわれるべニサツマが好きです。あのほくほくの味覚感触はたまらなく美味しく感じます。「種子島ろまん」というサツマイモは、甘味があるので、あんことしてよく使用されています。オレンジ色をしたサツマイモは、べニハヤトです。こちらはカロチンが多く含まれ、シャーベットやアイスクリーム、クッキーの原料として利用されています。ところで石焼イモはなぜ美味しいのでしよう。それは熱した石から発生する遠赤外線で時間をかけてじっくり焼くため、澱粉から麦芽糖が作られて甘味が増すからだということです。

「大学イモ」もよく知られています。東京・神田の学生街でよく食べられていたので、東大の貧乏学生が学費稼ぎにふかしたサツマイモを売っていたからこの名が残ったという説があります。東大の赤門前にあったふかしイモ屋が、イモに蜜をからめて売って大当たりをしたことからついた名前という説もあります。若い女性たちにも人気のあるサツマイモは、独特のほのかな香りとともに日本の青春文化にも数々の思い出を残している愛すべき野菜なのです。

 

さつまいもの商品成分

表示される値は、可食部100g当たりに含まれる成分を表す。

  廃棄率 エネルギー 水分 たんぱく質 脂質 炭水化物 配分 カルシウム
単位 % kcal g g g g g mg
さつまいも 9 134 65.6 1.2 0.2 31.9 1 36

 

  マグネシウム 亜鉛 ビタミンB1 ビタミンB2 ビタミンC 植物繊維総量 食塩相当量
単位 mg mg mg mg mg mg g g
さつまいも 24 0.6 0.2 0.11 0.04 29 2.2 0

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)


さつまいもの生産量の都道府県ランキング(令和元年)

  都道府県 収穫量 割合
1 鹿児島県 261,000t 34.90%
2 茨城県 168,100t 22.50%
3 千葉県 93,700t 12.50%
4 宮崎県 80,600t 10.80%
5 徳島県 27,300t 3.60%
6 熊本県 19,300t 2.60%

*上記以外のデータはありません

出典:地域のいれもの