食のこばなし

キムチ

NO.48

韓国を代表する冬の漬物

かつて日本では、欧米人が来ると、空港で魚臭いと言われたことがあります。その感想に驚いたりいぶかったりしたものですが、独自の食の文化がその国の入り口である空港で外国人に分かるというのは、大変意味があることです。

韓国の空港に降り立つと、キムチの臭いがするというのもそのひとつでしょう。

アメリカの大学に留学した知人が、同じ大学の韓国の研究者からキムチの差し入れをもらうことが最大の楽しみだったと語っていました。それだけ日本人の食生活にもなじんだ漬物なのです。

キムチは朝鮮半島で発祥した越冬用の漬物です。白菜などの野菜を塩と唐辛子とニンニク、とくにはアマエビやイカなどの塩辛、魚醤、コンブなどのだし汁などを合わせて漬け込んで発酵させたもので、唐辛子の辛味、野菜の甘み、乳酸発酵の酸味によって独特の臭いと味を持つ漬物です。

また、リンゴ、ナシ、クリ、ナツメなどの果物類を加えて味をまろやかにしたり、生のカキやイカを加えてコクを出し、うまみに加える工夫もするようになったのです。

 

秘伝の漬け方を競い合う

韓国では、どの家でも独自のキムチの漬け方があり、それぞれ秘伝の漬け方をして味を競い合ってきました。「よいキムチを作る女性はよき妻になる」とも言われてきました。

北海道や東北地方では、イクラを作る秘伝の方法を競い合ってきました。しかしそのような文化もだんだんと遠くなり、いまでは自家製のイクラを作る家が非常に少なくなりました。

韓国でもキムチを漬ける女性が少なくなり、韓国の新聞では65%の若い女性がキムチの作り方を知らないと回答したという報道もありました。キムチ大好きの筆者は、韓国の伝統的な漬物が次第に消えないように願っています。

 

乳酸菌で整腸効果もある

キムチは低カロリー食品であり、繊維分をたくさん含んでいるので腸の働きを活性化させ、糖類やコレステロールの数値を下げて糖尿病や心臓疾患の予防になるといいます。

キムチが熟成すると、乳酸菌が増えて腸内の酸度を下げ、有害菌の生育を抑制して整腸作用もするそうです。ビタミンA、B、Cなども含まれており、唐辛子に含まれているカプサイシンが胃液の分泌を促進し消化を助けます。

にんにくに含まれている成分はスタミナ増進効果がありビタミンB1の吸収を促進して生理代謝を活性化すると言われています。韓国の女性は肌がきれいだと言われていますが、これは「キムチ効果」ではないかという説もあります。

 

体を温めるキムチ鍋

冬の寒い日には、筆者は独自のキムチ鍋を作って振る舞うことがありますが、これが何杯でもおかわりされて好評です。鶏肉とジャガイモ、豆腐、ニンジンなどの野菜類にキムチを程よく入れた鍋なので、簡単に作れて体を温め、しかも栄養満点でもあるのです。

韓国料理にもキムチチゲがありますが、こちらは味噌仕立てが多いようです。筆者のキムチ鍋はしょう油味にするところが特徴です。

日本では80年代から流行

17世紀に記録されているハングル料理書のキムチには、唐辛子を使用したものはなかったということですが、日本から移入された唐辛子を使うようになってから今日のキムチができてきたようです。

キウリのキムチはオイキムチ、ダイコンのキムチはカクテキと呼ばれていますが、筆者は白菜キムチだけでなくこちらのキムチも大好物です。

キムチが日本の食文化の中に存在感を出し始めるのは、1980年代の後半から始まった激辛ブームが大きなきっかけになったようです。90年代から消費量が増えたために韓国から輸入されるようになり、2004年には日本国内で食べられる漬物の中で、浅漬けに次いで第二位になったという記録も残っています。

 

本場の韓国産キムチ

いまでは輸入品ではなく日本国内で製造されたキムチが主流になり、その味も日本人の味覚に合うように様々な工夫がされるようになってきました。一時、韓国や中国からの輸入キムチが、なぜか嫌われた時期もありました。それがきっかけで国産キムチが増えていったのでしょう。

一般的に韓国産のキムチは酸味が強く、発酵した臭いとニンニクの臭いが混じりあって強烈な臭気が伴います。これがたまらないというキムチファンもいます。

筆者も韓国人の知人から本場にキムチをいただいて食べていますが、やはりコクがあっておいしい。伝統の漬物には秘伝の文化がこもっているのではないかと思いました。

 

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

キムチの食品成分

出典:食品成分データベース

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