カレー
NO.95
海軍の軍隊食から始まった
たまの休日、子どもと連れ立って外食でもしようとなって、子どもたちに何を食べたいと聞いてみると、決まって答えるのが「カレーライス」。筆者の体験ですが、どこの家庭でも似たり寄ったりのようです。
大人たちは「もっと別なものないの?」と聞いてもやっぱりカレーライス。学校給食でも常に人気上位にランクされているのがこれです。
日本人のカレーライス好きは、世界的にも際だっています。農水省などのカレー粉消費統計から推計すると、日本人は一年間に66回もカレーライスを食べています。週に1回以上のカレー食です。
カレーの原産地はインドとされていますが、それがイギリス海軍の軍隊食として調理され、やがて日本へと入ってきたのです。
「カレーライス誕生の地」を宣言しているのが横須賀市です。明治の初期、イギリス海軍の軍隊食であるカレーシチューを移入した海軍は、カレーをパンにつけて食べていました。あるとき、このカレーに小麦粉を入れてとろみをつけ、ご飯にかけて食べるとこれが美味しい。
それ以来、日本海軍は軍隊食としてカレーライスを導入し、隊員は故郷へ帰ると同じものを作って食べたため、全国へと広がっていきました。
いまでも毎週火曜日になると、この伝統を受け継いで海上自衛隊の隊員は一斉にカレーライスを食べているそうです。
ごちそうから大衆メニューへ
明治時代、カレーライスは贅沢品であり、大正時代にはヨーロッパからのお土産としてカレー粉が珍重されました。昭和2年、東京新宿の中村屋は「高級インドカレー」を売り出して大評判となり、当時は高級レストランでかなり高いお金を出さないと食べられないごちそうでした。
それが大衆的な食べ物として普及したのは、エスビー食品の創業者、山崎峯次郎氏が日本で最初の純国産カレーの製造に成功したからです。これはやがてインスタントカレーにつながり、いつでもどこでも簡単に作れる定番料理へと定着していったのです。ちなみに日本人が作った三大洋食はトンカツ、コロッケ、カレーライスだそうです。
カレーライスに続いて出たのがカレー南蛮。明治42年、大阪のそば店主が、営業不振のためカレーにネギをあしらってそばにかけて売り出したら、これが浪速っ子に大受け。
続いて昭和3年には、東京の洋菓子店が、パンの中にカレーをあんのように包んで売り出したらこれがまた大当たりになったのです。
一晩置くとおいしくなる
おいしいカレーの作り方。これはもう、どこの家庭でも得意のカレー調理法があるようです。独特の味を作るためにいろいろな材料を使っていますが、エスビーカレーの調査によると調味料のベスト3は、ニンニク、ケチャップ、ウスターソースです。
以下、醤油、ハチミツ、バター、チャツネ、生クリーム、ショウガ、チーズまでがベスト10です。中にはチョコレートや砂糖を使う家もあるようです。
カレーライス専門店に聞いたことがあります。カレーのルウを作ってから一晩置くとおいしくなる。これは意外とよく知られています。料理のプロにその理由を聞いてみると、材料に味が良くしみこみ、材料同士がなじむこと。
材料のエキスがルウに溶け出し、油滴が小さくそろってカレーの味と油脂成分がうまくなじんでおいしくなると言うことです。ルウはフランス語の「roux」からきたもので、小麦粉をバターやオリーブ油で炒めたものをルーと呼んでいるところからきたようです。
ご飯の上?それとも別々?
カレーを食べると辛さによって体を冷やしてくれます。辛いスパイスを食べた直後は体温が上がりますが、まもなく下がっていきます。
夏になるとカレーライスが売れるというのは、こんなことからくるのでしょうか。確かに初夏から夏にかけてカレーの売り上げは伸びるそうですが、それは販促の成果ということも言われています。
ライスカレーかカレーライスかで論争したことがありました。ご飯の上にカレーがかけてあるのがライスカレー、ご飯とカレーが別々の容器に入っているのがカレーライス。これは通説ですが、ま、どちらでもいいようです。カレーは辛くても塩分は少ないので、減塩食としても優れているのです。
文:ばばれんせい 絵:すなみゆか
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