カツオ
NO.2
季節を運ぶ旬の魚
目には青葉 山時鳥(ほととぎす)初松魚(かつお)
芭蕉とも親交のあった江戸時代の俳人、山口素堂の有名な句です。冷凍技術の発達したいま、カツオはいつでも食卓にのほるようになっていますが、青葉とホトトギスだけは、この季節でなければ登場しません。実は海にいるカツオも、この時期にならないと日本列島近海に回遊してきません。やはり自然の摂理を守る旬の魚なのです。
素堂が名句を詠んだ時代、湘南沿岸にあがった初がつおは、夜駆けで江戸に運ばれ、「まな板に小判一杯 初がつお」とも詠まれるほど高価なものでした。 カツオは 「勝魚」とも書いて縁起のいい魚とされ、人気があったのです。薬味に、スダチとニンニクとねぎをたつぶり使って食べるかつおのたたきは、この時期、最高の酒の肴です。
カツオは、赤道をはさんで熱帯海域から温帯海域まで、群れをなして広く回遊する魚です。水温20度から30度を好み、日本近海にはエサになるカタクチイワシやマイワシを追いながら、南洋方面からの黒潮に乗って北上してきます。泳ぐ速度は時速50キロであり、中には体長1メートル、体重115キロというマグロ並みの怪物もいるようです。
北上したカツオは、6月から7月にかけて産卵し、秋になって水温が下がり始めるとユーターンして南下を始めます。この時期のカツオを「戻りがつお」とも言い、脂の乗った美味しい海の幸として好まれています。
カツオの一本釣り漁は、 カツオを狙うカツオドリの動向を観察することから始まります。カツオの群れを発見すると、エサになるカタクチイワシをまき、 船の周りに散水機で水をまいて海面を波立たせます。エサのイワシが群れているようにカツオに錯覚を起こさせます。そこへ疑似餌のついた竿を入れて一本釣りを始めるのです。カツオ漁の勝負は長くても15分程度、短いときは数分で決着してしまう短期決戦の漁です。疑似餌のついた針には、返しがないので簡単にはずれ、効率よく一本釣りができるということです。
粋な縞模様は新鮮のあかし
カツオの特徴は腹部の縞模様です。海中にいるカツオはこの縞模様がよく見えませんが、死後にはっきりと出てきます。ただ、鮮度が落ちてくると縞模様はポケてくるので、カツオを選ぶ場合は、縞模様がきれいに出ていて目が澄んでいるものが一番です。
カツオを加工したかつお節は、日本料理の美味しさを引き出す伝統的な調味料です。カツオは干すと硬い身になるので、保存食として使われるようになるのです。名前の由来も「硬い魚」が「かつお」になまったとも言われています。かつお節は「かつお干し」 がその由来です。戦国時代には「勝男武士」の字を当てて縁起をかつぎ、戦勝の報償品として与えられました。
かつお節の製法は各地で創意工夫を競い合って成熟していきました。製法で有名なのは、土佐藩(高知県地方) の甚太郎が発明した「焙乾法」という製法です。これは外部への持ち出し禁止の秘法とされていましたが、いつしか紀州(和歌山県地方) から房州 (千葉県地方) へと広がり、ついに全国に広がってしまいました。水分をうまく飛ばし、風味を生かすかつお節の製法には、日本人の創意工夫が凝縮されているのです。
鰹節と昆布が最強の出汁コンビ
かつお節は大変、バランスの取れた栄養成分になっています。私たち人間の生体のたんぱく質は、20種類のアミノ酸を原料に作られています。しかしこのうち9種類は人間の体内では作ることができず、食物として体外から取り入れなければなりません。かつお節には、そのアミノ酸がすべて含まれており、脂肪の少ない高たんばく質の食品です。特に子どもの成長に欠かせないヒスチジンという必須アミノ酸や骨の形成に必要なビタミンDが大量に含まれています。
かつお節のうまみの本体は、イノシン酸です。ちなみに昆布のうまみはグルタミン酸、シイタケのうまみはグアニル酸です。イノシン酸は、かつお節の乾物の中に0.3%ほど含まれています。このうまみ成分とあの独特の香りが、食欲と美味しさを引き立ててくれます。昆布に含まれているうまみ成分のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸は、お互いにうまみを強く感じさせる相乗効果を持っています。昆布とかつお節のだしが、うまみ引き出しの最強コンビというわけです。
文:ばばれんせい 絵:みねしまともこ
初がつお 生可食部100gあたり |
エネルギー | 水分 | たんぱく質 | 脂質 | 炭水化物 | 灰分 | 飽和脂肪酸 | 不飽和脂肪酸 | コレステロール | 食物繊維 | |
114 | 72.2 | 25.8 | 0.5 | 0.1 | 1.4 | 0.12 | 0.21 | 60 | -g | |
kcal | g | g | g | g | g | g | g | mg | ||
ビタミン | ||||||||||
レチノール | D | E | B1 | B2 | ナイアシン | B6 | B12 | 葉酸 | パントテン酸 | C |
5 | 4 | 0.3 | 0.13 | 0.17 | 19 | 0.76 | 8.4 | 6 | 0.7 | -mg |
μg | μg | mg | mg | mg | mg | mg | μg | μg | mg | |
無機質 | ||||||||||
ナトリウム | カリウム | カルシウム | マグネシウム | リン | 鉄 | |||||
43mg | 430mg | 11mg | 42mg | 280mg | 1.9mg |
1年間に食べるカツオの量(2018年)(たたき、刺身用で1柵200gで換算)
順位 都道府県 消費量
1 高知県 6.30柵
2 山口県 3.38柵
3 徳島県 2.37柵
4 宮城県 2.30柵
5 福島県 2.13柵
6 岩手県 1.94柵
7 茨城県 1.90柵
8 愛媛県 1.89柵
9 和歌山県 1.87柵
10 香川県 1.61柵
11 静岡県 1.58柵
12 京都府 1.51柵
13 山形県 1.49柵
14 奈良県 1.45柵
15 東京都 1.40柵
16 三重県 1.33柵
17 沖縄県 1.33柵
18 滋賀県 1.30柵
19 秋田県 1.27柵
20 新潟県 1.27柵
21 宮崎県 1.27柵
22 岡山県 1.25柵
23 大阪府 1.15柵
24 栃木県 1.14柵
25 千葉県 1.10柵
26 埼玉県 1.08柵
27 鳥取県 1.07柵
28 兵庫県 1.04柵
29 鹿児島県 1.04柵
30 岐阜県 1.03柵
31 神奈川県 0.98柵
32 広島県 0.97柵
33 長崎県 0.89柵
34 長野県 0.88柵
35 群馬県 0.83柵
36 福井県 0.79柵
37 大分県 0.79柵
38 石川県 0.77柵
39 青森県 0.73柵
40 熊本県 0.73柵
41 愛知県 0.71柵
42 北海道 0.66柵
43 島根県 0.64柵
44 佐賀県 0.59柵
45 福岡県 0.50柵
46 山梨県 0.45柵
47 富山県 0.44柵
出展:地域の入れ物;https://region-case.com/
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