食のこばなし

エビ

NO.96

美味しいエビ料理が多数

日本人は、世界一のエビ好きとして知られています。エビを食材にしたさまざまな料理がどれもこれもおいしいので、昔から高級水産食材として利用されてきました。代表的なエビは、クルマエビです。味も姿もよく、体長は15センチほどのものがよく使われています。

クルマエビの寿司、天ぷら、焼きエビなどが代表的な料理であり、これを嫌いな人はほとんどいないでしょう。ただし、エビのアレルギーの方もいるので、すべての人というわけにはいきません。

エビはもともと高級食材でしたが、冷凍技術が進むにしたがって、天然物のエビだけでなく、養殖エビ、冷凍エビとなって庶民の食卓にものぼるようになりました。生食用のほかに干しエビとして調味料、甘露煮、佃煮、珍味、スナック菓子としてエビせんべいがあり、釣り餌用としても利用されています。エビで鯛を釣る「エビ鯛」という言い方は有名です。

エビの種類はどのくらいあるか

エビの種類はなんと約3000種と言われています。河川から深海まであらゆる水環境で棲息しています。日本近海には450種あるうちの約180種類が商業漁獲対象です。遊泳型にはクルマエビのほか、甘エビやボタンエビのようなコエビ類があり、歩行型にはイセエビなどがあります。

エビの体は頭胸部と腹部からなり、複眼の間には額角(がっかく)という尖った角があります。頭胸甲内の歩脚の近くにエラがあり呼吸をしています。頭胸部には13対・26本の脚があり、前の方から周囲の様子を探る役割をしている触角(2対)、餌を咀嚼する大あご(1対)小あご(2対)、餌をつかんだりちぎったりする器官の顎脚(3対)、歩くための歩脚、または遊泳肢(5対)です。体表はキチン質の殻に覆われています。

卵から生まれた幼生期は、水中を漂うプランクトン生活を送り、脱皮を繰り返して変態し、小さなエビの形になります。波の穏やかな内湾に、昼間は目だけを出して砂泥の中に棲息し、クロダイ、タコ、人間から身を守り、獲物を待っています。雑食性で、小魚類、多毛類、藻類、動物の死骸など何でも食べます。

エビ養殖の父と言われた人

藤水元作は1933年大学卒業後、世界で初めてクルマエビの人口産卵と幼生の飼育に成功しました。このことがきっかけとなり、アメリカのテキサスで、2種のクルマエビ属の大量飼育技術が確立されます。藤水は「エビ養殖の父」と言われるようになります。

1960年以降は、卵からかえして育てる完全養殖がおこなわれるようになり、大量に安定した量が供給されるようになりました。

東南アジアを中心とするエビの養殖では、マングローブ林の伐採、汚染された湿地など環境問題が指摘されています。海外のエビ養殖の多くは日本とアメリカ向け輸出用の生産が大半を占めています。

クルマエビは庶民的で日本人の味覚に合った中型のエビを代表する食材で、輸入量もエビ全体の9割を占めています。晩秋から冬にかけてが旬で、日本の一世帯当たりの年間消費量は2480gでアメリカの約2倍です。国内生産は4~5千トンで、天然物と養殖物が半々です。

甘みのひみつはアミノ酸

グルコサミンは、エビカニの甲羅の主成分です。チキン質よりとれる天然アミノ酸で、チキン質をさらに分解して呼吸しやすい状態になったものです。

クルマエビなどを加熱すると、殻のなかのタンパク質と結合していたアスタキサンチンがタンパク質と遊離して酸化し、アスタシンに変わることにより赤色となります。

アスタキサンチンは抗酸化物質として最近、飲食類、健康食品などに添加されるようになりました。現在はバクテリアを増殖してアスタキサンチンを抽出する技術が確立し、その技術を中国に無断で使われて国際問題になったこともあります。

エビの甘みの主体はアミノ酸であり、タウリン、フロリン、グリシン、アラニン、アルギニンが多く、特にグリシンが多いので、甘みを強く感じます。

エビやカニの血管系は動脈だけの開放系です。呼吸色素に銅がついた、ヘモシアニンという無色透明の血液なので、血管を切って外に出てきても見えないだけなのです。

エビの背ワタは、腸管の一部で、苦みが有り、砂を含んでいることもあるので調理時に取り除きます。エビの姿は、長いヒゲと腰曲がりから長寿をイメージする縁起のよい食品として、伝統的にお祝いや正月飾りによく使われています。

 

文:ばばれんせい 絵:すなみゆか

順位 都道府県 漁獲量 割合
1 佐賀県 2,303t 17.8
2 兵庫県 1,585t 12.3
3 北海道 932t 7.2
4 石川県 824t 6.4
5 広島県 753t 5.8
6 富山県 714t 5.5
7 福井県 533t 4.1
7 静岡県 533t 4.1
9 愛知県 485t 3.8
10 愛媛県 446t 3.5
11 新潟県 331t 2.6
12 熊本県 324t 2.5
13 長崎県 281t 2.2
14 鹿児島県 266t 2.1
15 千葉県 253t 2
15 香川県 253t 2
17 山口県 251t 1.9
18 徳島県 249t 1.9
19 福岡県 215t 1.7
20 三重県 207t 1.6
21 鳥取県 194t 1.5
22 大分県 150t 1.2
23 和歌山県 148t 1.1
24 山形県 118t 0.9
25 岡山県 106t 0.8
26 宮崎県 101t 0.8
27 茨城県 79t 0.6
28 秋田県 63t 0.5
29 高知県 59t 0.5
30 大阪府 44t 0.3
31 神奈川県 37t 0.3
32 青森県 16t 0.1
33 沖縄県 11t 0.1
34 福島県 10t 0.1
35 東京都 9t 0.1
36 京都府 8t 0.1
36 島根県 8t 0.1
38 宮城県 4t 0
       
  出典:地域の入れ物

 

 

 

 

 

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