食のこばなし

イチゴ

NO.27

なんと石器時代から食べていた

イチゴ栽培の歴史をさかのぼっていくと、なんと石器時代までたどり着きます。ヨーロッパの遺跡からイチゴの種子が出てくるからです。もちろんそのころは野生のイチゴを食べていたのでしよう。イチゴはどんな悪い環境でもけなげに育ったことから、ヨーロッパでは悪に染まらない正義の象徴となりました。

現在のような栽培イチゴは、17世紀の中ごろ、イギリスやオランダで生まれたものです。当時、北アメリカ原産のバージニア・イチゴと南アメリカ原産のチリ・イチゴが交雑され、栽培に適した雑種として誕生しました。栽培イチゴはたちまち、ヨーロッパ全域へと広がり、やがてアメリカから全世界へと広がっていったものです。

 

日本へイチゴが導入されたのは、江戸末期のころです。オランダから長崎に持ち込まれました。しかしすぐには定着せず、本格的に栽培が始まったのは明治に入ってからです。1899年 (明治4年)、フランスから導入されたゼネラル・シャンジーという品種が育成されました。新宿御苑の創設に加わった福羽逸人(ふくばはやと)によって栽培され、作出した「福羽イチゴ」は皇室に献上され、「御苑イチゴ」とか「御料イチゴ」とも呼ばれ、当初は門外不出として珍重されました。しかし徐々に東京周辺に「福羽」として広がっていきました。

 

人力車夫が育てた石垣イチゴ

静岡県の石垣イチゴは、東照宮の宮司が人力車夫にアメリカ人からもらったビクトリア種のイチゴを贈ったことから始まりました。もらった車夫は、自宅の裏の石垣の傾斜地に植えたのです。駿河湾に面した斜面は、海面からの反射光を受けて真冬でも霜が降りない温暖な環境にあり、甘味の強いイチゴが育ちました。その栽培方法が評判を呼び、市場にも出荷されるようになり、いつしか石垣イチゴは高級品として取引されるようになったのです。

イチゴはもともと、5、6月ころの季節の果物でしたが、栽培方法の変化と品種改良が進んで、いまでは通年、食べられる果物になっています。季節はずれのイチゴはハウス栽培であり、花が咲き始めるころには、ミツバチをハウスの中に放ちます。ミツバチはイチゴの花の蜜を吸い、そのときに体にたくさん花粉をつけて別の花へと飛んでいって受粉させるのです。そのおかげで大きな形の甘いイチゴが収穫できるというわけです。

疲れ目にも効くイチゴ

イチゴの栄養成分といえば、なんと言ってもビタミンCが豊富なことです。 7粒食べると一日の必要量は摂取すると言われています。ただし一度にたくさん食べても、生体が必要とする以外は体外に排出してしまいます。ビタミンCの効能については、いまさらここで詳しくは触れませんが体内で合成できない栄養素です。ビタミンCはアスコルビン酸ともいわれ、骨や腱などの結合タンパク質であるコラーゲンの生成に必須となっています。

人体の免疫機能を高めたり、コラーゲンの合成を促進したり、病気の予防と健康維持に必要な栄養素です。16世紀から始まった大航海時代の船員たちは、新鮮な野菜や果物が食べられなかったために壊血病になりました。これはビタミンCが不足したためであり、コラーゲンが合成されないので血管がもろくなり、出血を起こすのが壊血病でした。

ビタミンC不足のときの症状として、いらいらしたり顔色が悪くなります。貧血、筋肉減少、心臓障害、呼吸困難なども出てくると言われています。また皮膚のメラニン色素の生成を抑えて日焼けを防ぐ作用があり、毛細血管や歯・軟骨などを正常に保つ働きがあります。さらにストレスやかぜなどへの抵抗力を強める働きもあります。抗酸化作用があるので老化防止になり、がんや動脈硬化の予防にもなっています。

イチゴの赤い色素はアントシアニンであり、網膜にあるロドプシンというたんぱく質の合成を助ける効果があり、疲れ目にもいいそうです。またイチゴは低カロリーですから、ダイエットにも血糖値の高い人にも優しい果物なのです。熟したイチゴはかなりの甘味がありますが、これはイチゴの成熟とともに果実に糖分が備蓄されていくからです。

ところでイチゴは果物ではなく、農学上は野菜に分類されています。しかしバラ科のイチゴ属とされており果物として扱われることもあります。野菜でもあり果物でもあるのがイチゴなのです。

 

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

いちごの食品成分

出典:食品成分データベース (mext.go.jp)

 

平成30年(2018年)における、都道府県別のいちごの生産量(収穫量)

順位 都道府県 収穫量 割合
01位 栃木県 24,900t 15.40%
02位 福岡県 16,300t 10.10%
03位 熊本県 11,200t 6.90%
04位 静岡県 10,800t 6.70%
05位 長崎県 10,200t 6.30%
06位 愛知県 9,670t 6.00%
07位 茨城県 9,150t 5.70%
08位 佐賀県 7,910t 4.90%
09位 千葉県 6,730t 4.20%
10位 宮城県 4,460t 2.80%
11位 群馬県 3,160t 2.00%
12位 埼玉県 3,150t 1.90%
13位 香川県 3,080t 1.90%
14位 宮崎県 2,640t 1.60%
15位 愛媛県 2,520t 1.60%
16位 岐阜県 2,470t 1.50%
17位 福島県 2,390t 1.50%
18位 山口県 2,370t 1.50%
19位 奈良県 2,320t 1.40%
20位 三重県 2,000t 1.20%
21位 北海道 1,830t 1.10%
22位 兵庫県 1,810t 1.10%
23位 新潟県 1,210t 0.70%
24位 青森県 1,180t 0.70%

出典:地域の入れ物