アユ
NO.60
清流の女王と言われてきた夏の風物詩
東京の首都圏を流れる多摩川は、かつて家庭からの排水に汚染され、汚染された代表的な都市河川となりました。元々の清流を取り戻すために、アユが遡上する川を再現する運動が展開され、大きな反響がありました。
アユは古来から、清流の夏の風物詩として楽しませてきました。アユ釣りに投じる光景は、見ていてもすがすがしく映ります。春先、堰を越えて上流へと遡上する稚アユの乱舞を見ていると、ぴちぴちと跳ね返る美しい姿が生命の躍動を感じさせてくれます。将来の前途有望な人材を「若アユ」と表現したり、アユを「清流の女王」と表現する日本人はことのほかアユが大好きなのです。
アユは「年魚」と呼ばれるように1年で一生涯を終わる、はかない命の淡水魚です。秋口には川の中流域で産卵すると、アユは間もなく生涯を閉じます。産卵された卵は自然と孵化して、体調5センチほどに成長した翌年の春に上流へと遡上するのです。
遡上したアユは、川の石の表面についた珪藻、緑藻などのコケ類を食べて成長していきます。アユの葉はコケを石からこそげ取るのに便利なように櫛状にできています。6月から9月ごろにかけて、川の石のコケを自分のエサ場にして「縄張り」を持つようになります。
この縄張りに他のアユが入ってくると、猛然と突進して追い出そうとします。縄張りの強いアユは、古来から琵琶湖のアユと言われているそうです。
友釣りという漁法をあみだした
アユの縄張りの習性を利用してあみだされたのが、アユの友釣りです。おとりのアユを針につけて川の中を泳がせ、縄張りを主張するアユの追い出しを誘って別の針に引っ掛けて釣る方法であり、日本独特の釣りになっています。
釣り人は、おとりアユを釣り上げたアユと次々と交換していくのが自慢の腕前になっています。友釣りという手法は世界でも例がないそうで、日本独特の釣り文化になっています。
アユを食べるとスイカやキュウリの香りをかぐことがありますこれはエサが珪藻類だから、その香りが魚体に移ったもののようです。だからアユを「香魚」とも呼んでいます。
筆者の好物は、アユの塩焼きとアユ茶漬けです。塩焼きのアユの骨は、頭に少し硬い部分があるほかは大体やわらかくて、骨ごと全部食べてしまいます。アユのはらわたは、苦味とほのかに香りを感じて、上品な風味を伝えてきます。
アユの内臓を塩辛にしたものを「うるか」と言います。江戸時代に長良川の鵜匠が創作した珍味であり、白子で作る白うるか、はらわたで作る苦うるか、卵巣で作る子うるかなどがあります。
奈良時代から伝わる鵜飼
岐阜県の長良川の鵜飼いは有名であり、筆者も岐阜県の学校栄養士の皆さんに案内されて見学に行ったことがあります。鵜匠は烏帽子に腰みのをつけ、鵜を巧みに操作しながらアユを捕獲します。この鵜飼の歴史は深く、奈良時代から伝わっているものです。「日本書紀」や「古事記」にも出てくるということです。
アユは日本列島全域に生息しています。ただ沖縄のアユだけは、リュウキュウアユと呼ばれて、分類では別のアユとされています。近年は、産卵から孵化、稚魚生育まで人工的に行い、稚魚になってから放流する養殖アユが普及していますが、天然アユも広く生息しています。
学校給食にも出てきたアユ
アユは季節を告げる風物詩ですから、その料理は高級であり高価でもあります。しかしアユのよくとれる地方では、学校給食にも登場しています。
岐阜県加茂郡白川町の給食センターでは、年に1回、地元の飛騨川でとれたアユの塩焼きを出して子どもたちに喜ばれています。学校栄養士の先生によると、「魚が苦手な子ども達も、アユは郷土の魚なので抵抗なく食べてくれます」ということで、骨ごと食べてしまう子どももいるそうです。
山形県舟形町の4つの小中学校でも、地元の小国川でとれたアユを地元漁港の協力もあって塩焼き、から揚げ、甘露煮などにして学校給食に提供され、子どもたちに喜ばれています。
から揚げのポイントは二度揚げだそうで、170度くらいで揚げて冷ました後、190度くらいでもう一度からっと揚げると、骨ごと食べられるようになるそうです。
アユは「鮎」と書きますが、なぜ「魚へんに占い」という字なのでしょうか。これは奈良時代に戦勝を占ってアユ釣りをしたことからついたとのことです。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
アユの食品成分
出典:食品成分データベース
順位
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都道府県
|
漁獲量
|
割合
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1 | 滋賀県 | 373t | 17.9 |
2 | 茨城県 | 358t | 17.2 |
3 | 栃木県 | 351t | 16.8 |
4 | 神奈川県 | 324t | 15.5 |
5 | 岐阜県 | 169t | 8.1 |
6 | 愛媛県 | 101t | 4.8 |
7 | 高知県 | 98t | 4.7 |
8 | 富山県 | 57t | 2.7 |
9 | 大分県 | 54t | 2.6 |
10 | 福井県 | 27t | 1.3 |
11 | 山形県 | 23t | 1.1 |
12 | 新潟県 | 18t | 0.9 |
12 | 熊本県 | 18t | 0.9 |
14 | 島根県 | 16t | 0.8 |
15 | 徳島県 | 15t | 0.7 |
16 | 広島県 | 14t | 0.7 |
17 | 山口県 | 13t | 0.6 |
18 | 岡山県 | 12t | 0.6 |
19 | 東京都 | 8t | 0.4 |
20 | 京都府 | 7t | 0.3 |
21 | 宮崎県 | 6t | 0.3 |
22 | 兵庫県 | 5t | 0.2 |
22 | 和歌山県 | 5t | 0.2 |
24 | 秋田県 | 3t | 0.1 |
24 | 三重県 | 3t | 0.1 |
26 | 福島県 | 2t | 0.1 |
26 | 福岡県 | 2t | 0.1 |
28 | 青森県 | 1t | 0 |
28 | 宮城県 | 1t | 0 |
30 | 岩手県 | 0t | 0 |
30 | 埼玉県 | 0t | 0 |
30 | 千葉県 | 0t | 0 |
30 | 石川県 | 0t | 0 |
30 | 長野県 | 0t | 0 |
30 | 愛知県 | 0t | 0 |
30 | 奈良県 | 0t | 0 |
出典:地域の入れ物
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