アボカド
NO.59
「カリフォルニアのトロ」は森のバター
ロサンゼルスに取材で行ったとき、現地の寿司屋でアメリカ人の友人が「トロ巻き」と注文しました。出てきた巻物のネタが見た目、ヘンです。にやっと笑った友人が「アボカドです。ここではトロと呼んでいるんだ」と言う。
アボカドが珍しかった時代でした。巻物を醤油につけて食べてみると、悪くはない。言われてみるとトロの脂身を思い出させる食感です。アボカドを「森のバター」と呼ぶことは、フランスに長年住んでいたファッション関係の方から聞いていたので、なるほどと思ったものでした。
アボカドの料理を初めて食べたのは、1980年ころにパリのレストランでした。口にした瞬間、珍しいチーズかなと思いましたが、知人に聞いたら果物だというので、びっくりした思い出があります。そのとき初めて「森のバター」と呼ばれているとも聞いて二度びっくりしました。
アボカドは、いまでは日本でも普通に見られる食材となり、調理方法もいろいろ広がっています。脂肪分が豊富な果物であり、カロリーは100グラム当たり191キロカロリーもあります。
果物というよりは、野菜と思っている人が多いようです。フルーティな瑞々しさに甘味、酸味がないので普通の果物とは違って、ねっとりした脂っこさが特徴になっています。世界一栄養価の高い果物として、ギネスブックにも載っています。アボカドは、クスノキ科ワニナシ (鰐梨)属の常緑高木で、原産地は中南米です。鰐梨という字が使われていますが、皮の表面がワニの皮膚と似ているからのようです。
急増する日本でのアボカド消費量
低温に弱く、熱帯、亜熱帯に生育します。紀元前500年ころから栽培されていると言われており、700種以上の品種があるそうです。その中でも脂肪分も多く味もよく栄養価の高い、ハス種に人気があります。
日本に入ってきたのは100年ほど前です。市販されているものは、メキシコからの輸入品が多く、そのほかアメリカ、 ニュージーランド、ブラジル、チリなどもあります。輸入量は増加していますが、価格は安定しています。
国内産アボカドは、和歌山県などで栽培されたものがあり、晩秋から冬の時期に市場に出ているようです。
果実の成熟に10か月から15か月要する上、大量の栄養分が必要のようです。土地の栄養分を食い尽くして果実を実らせるため、いったんアボカドを生産すると、その後に他の種類の果物を生産することは難しいと書いてある情報もありました。
その上アボカドの生産・流通課程で発生する二酸化炭素の排出量(カーボンフットプリント:Carbon footprint)は、バナナの2倍、コーヒーの3倍もあるという文献も出ています。
しかしアボカドは価格が高いので生産地では森林を破壊して農地化して栽培するために自然破壊につながるという課題も出ているようです。アボガドの生育には大量の水分を必要とすることも生産地での水資源の不足が大きな課題として指摘されています。
栄養分と食物繊維が豊富
アボカドの糖分は5.2%で、ヒーマンや大根よりも甘みが少ない果物です。エネルギーは果物の中でも特に高く、ハナナのほぼ2倍もあります。
脂肪の主成分は、リノレン酸、オレイン酸、リノール酸などでコレステロールを下げる不飽和脂肪酸ですが、飽和脂肪酸も含まれています。飽和脂肪酸はほとんどがパルチミン酸で、わずかにステアリン酸が含まれます。脂肪の大半は不飽和脂肪酸であるため、コレステロールの心配はありません。
老化防止に役立つビタミンEや、カリウム、ビタミンB₆ 、葉酸、マグネシウム、リンなどのミネラルも豊富です。血流を良くして、脳梗塞、心筋梗塞、動脈硬化の予防に役立ち、食物繊維も多く含まれています。
アボカドは、観葉植物として楽しむことができます。取り出した種子をよく洗い、水につけておき、時折水をかえていると発芽するそうです。1週間ほどで、土に植え替えて生長を楽しむことができます。
アボカドオイルは、食用と美容用とで使われており、食用のオイルはオリー ブオイルと同じように使います。その他にもシャンプー、石鹸、アロマ、スパイス、お茶などに利用されています。
メキシコでは、ワカモーレというアボカドデップをトルティーヤに載せて食べるのが、日常食となっています。市販されているアポカドは、樹上では柔らかくなったものではありません。未熟なうちに収穫し、追熟させると皮か緑色から黒味がかってきます。
食べごろの選び方のポイントは、皮が黒くよく熟したもの、表皮を軽く押して、柔らかさを感じ、弾力性があって皮に張りとつやがあるものを選部のがコツのようです。
文:ばばれんせい 絵:みねしまともこ
アボカドの食品成分
出典:食品成分データベース
都道府県別のアボカド生産量と全国シェア(2018年)
順位 | 都道府県 | 生産量 | 全国シェア | 主要産地名(市町村名) |
---|---|---|---|---|
– | 全国 | 9.5(t) | – | – |
1位 | 和歌山 | 7.3(t) | 76.8% | 海南市、和歌山市、紀の川市 |
2位 | 愛媛 | 1.5(t) | 15.8% | 松山市 |
3位 | 鹿児島 | 0.7(t) | 7.4% | 日置市 |
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