食のこばなし

アサリ

NO.30

東京・江東区門前仲町は、昔の風情を残した一角ですが、海にちなんだ屋号などが残っています。臨海小学校という学校もありますし、港屋というお煎餅屋さんもあります。深川という地名も残っています。その昔、東京湾で漁をする猟師たちが住まいを構える猟師町でした。

この地域の名物として「深川めし」があります。 「深川丼」とも言っています。この飯は野趣に富んだおいしいどんぶり飯で、筆者の大好物です。作り方はいたって簡単。ざっくりと切ったネギと生のアサリを甘辛く煮込んでどんぶり飯にぶっかけるだけ。醤油味と味噌味がありますが、どっちもおいしいくお勧めです。

この地域は、江戸時代に埋め立てられた場所であり、門前仲町には地名の通り大きな神社とお寺があり、その周辺に、深川めしを売り物にしているお店があります。簡単に作れて栄養があっておいしい。この三点セットがそろっているので、今に伝わっているのでしょう。

「漁る」からついた名前

アサリの語源は「漁る=あさる」からきているようです。淡水が流れ込むような内湾では、アサリはいくらでもとれる海の幸だったのです。近年はその内湾ものが品薄になって、輸入アサリが増えてきましたが、養殖ものも出回っています。

内湾の沿岸に近い少々汚れた砂泥地に生息するアサリは、黒っほい色をして丸みを帯びています。沖合いの比較的きれいな海底に生息するアサリは、海の香りがして身が柔らかいと言われています。

しかし筆者はどちらかというと、砂泥地にいるアサリの方に軍配を上げます。

日本三景の一つである宮城県の松島湾に浮かぶ小島の周辺の泥底にいたアサリを、山ほどとったことがあります。海底を足で漁るといくらでもアサリがいる。あっという間に山ほどとって浜辺で即席味噌汁にしたら、これが驚くほどおいしかった思い出があります。

 おわんに盛るとふんわりと香ってくる磯の香り。ふっくらしたアサリを口に含むと、独特のコクのある味が噛むたびにジワリといい汁が舌にしみこんで、幸せ感を運んでくる。

ただ、砂を吐かせていないのでおわんの底には、驚くほど砂がたまりますが、こんなこと気にならない。このときアサリを生で食べてみましたが、海水の塩分とほどよく合っていて、とてもおいしく食べました。

砂出しのコツ

ところでアサリの砂出しのコツは海水と同じくらいの塩水にアサリを入れて水温25度前後に暖めることだそうです。こうするとアサリが活発に動いて砂を吐き出すとのことですが、吐かせたら早めにあげて調理することが大事です。そうしないと活発に動いたアサリが、体力を消耗しておいしさも逃げてしまうということです。

「ボンゴレ・ビアンコ」にも

地中海沿岸の料理にもアサリはよく使われています。「ボンゴレ・ビアンコ」は日本人にもなじみのある料理です。 ポンゴレはイタリア語でアサリのことで、貝殻つきのスパゲティです。 ローマの老舗レストランの 「サバティーニ」が、最初に作って提供したと言われています。

イタリアではなぜ、貝殻つきなのでしようか。食べるときに面倒だから、身だけ使う方がいいのではないでしようか。と言ってもアサリ汁や味噌汁は殻つきですから、やはりアサリは殻のまま料理するのが世界の定番なのでしよう。アサリは世界中の海浜にいる最古の食料でもあるのです。

 「ボンゴレ・ロッソ」というスパゲティもあります。 ロッソは赤という意味だそうで、トマトソースをベースにしたアサリのスパゲティです。

アサリの旨み成分

アサリの旬は春と秋です。関東では5月と10月が産卵期でその直前は身がしまっておいしい時期です。アサリのおいしい成分は、コハク酸とタウリンだということです。

コハク酸は、貝類に含まれている独特のうまみ成分として知られており、炭酸ガスを発砲するので入浴剤の材料としても利用されています。メッキなどの工業用としても使われています。

タウリンは、生体内の胆汁の成分である胆汁酸と結合して消化を助けたり、神経伝達物質として働いています。私たちの生命活動の免疫系の重要な役割をしているのです。

文:ばばれんせい 絵:みねしまともこ

あさりの食品成分

 

平成30年(2018年)における、都道府県別のあさりの漁獲量(水揚げ量)

順位 都道府県 漁獲量 割合
1 愛知県 2,741t 35.40%
2 福岡県 1,735t 22.40%
3 北海道 1,364t 17.60%
4 静岡県 978t 12.60%
5 熊本県 527t 6.80%
6 長崎県 168t 2.20%
7 東京都 52t 0.70%
8 広島県 51t 0.70%
9 宮城県 45t 0.60%
10 神奈川県 17t 0.20%
11 福島県 15t 0.20%
12 千葉県 10t 0.10%
13 三重県 8t 0.10%
14 山口県 6t 0.10%
15 大分県 5t 0.10%
16 岩手県 5t 0.10%
17 徳島県 3t 0.00%
18 佐賀県 2t 0.00%
19 石川県 1t 0.00%
20 青森県 1t 0.00%
21 京都府 0t 0.00%
22 兵庫県 0t 0.00%
23 岡山県 0t 0.00%
24 島根県 0t 0.00%
25 愛媛県 0t 0.00%
26 福井県 0t 0.00%

出典:地域の入れ物