りんご
NO.45
丸かじりが最高の食べ方
学生時代夏休みになると毎年、長野県東筑摩郡築北村のお寺で合宿をしましたが、毎日出される青リンゴが楽しみでした。土地の人々には、皮をむかずに丸かじりをするのが「作法」になっていました。リンゴの丸かじりは、アゴを鍛え脳の働きを活性化するという教えでした。
リンゴ1個のカロリーは、ご飯をお茶碗で半分くらいということで、食前にリンゴを食べると満腹感になって食事の量が減り、ダイエットにもなるということが言われています。栄養面でも繊維質を含んでいるので整腸作用があり、コレステロールを抑制し、鉄、カリウム、亜鉛、ビタミンCなどを多く含んでいます。微量栄養素の不足しがちな現代人の食生活に、リンゴはぴったりというわけです。ヨーロッパでは「リンゴの医者要らず」という言い伝えがあるそうです。「リンゴが赤くなると医者は青くなる」とも言うそうです。
リンゴは糖尿病、肥満、肝臓病、ガンの予防にいいそうです。筆者の父親は糖尿病でしたが、93歳のとき老衰で他界するまでリンゴジュースの愛飲者でした。死の直前までリンゴジュースを放しませんでした。
リンゴの成分で渋味があるのはポリフェノールと呼ばれる成分です。これは、がんの予防になるといわれています。ポリフェノールは、お茶にも含まれています。赤ワインの色素はポリフェノールの一種であり、がんの予防になると言われています。
世界を取り巻くリンゴのエピソード
リンゴは古今東西、人類の歴史と深くかかわり合っている果物の代表です。リンゴにまつわる話は世界中にあります。というのもリンゴは4000年程前からヨーロッパで栽培されており、りんごに関する伝説やエピソードが多く残っています。古くからごく身近な果物だったからです。
旧約聖書に登場するリンゴは「禁断の果実」です。アダムとイヴはエデンの園でヘビにそそのかされてこれを食べてしまいました。ウイリアムテルとリンゴ、ニュートンと万有引力のリンゴ、白雪姫とリンゴなど話題にこと欠きません。
ニュートンのリンゴの木は1814年に枯れてしまいました。しかし接ぎ木で残った二代目が記念の樹となり、日本にもこの接ぎ木からの苗木が、1964年に贈られてきました。東京・小石川の東大理学部植物園で大事に育てられました。
さらにアメリカから別ルートで、ニュートンのリンゴの木が長野県にも持ち込まれ、県農業経営者協会が小学校の希望校に配布しました。多くの学校にニュートンのリンゴの木が育っています。
栽培りんごの起源は中央アジアが発祥の地といわれ、これがヨーロッパ、中国などへ伝わったと考えられています。ヨーロッパでは原形種とあまり変らない直径3センチ前後の小つぶリンゴの時代が長く続き、りんご酒やジュースの原料として用いられていました。
世界に1万5000種もある「多種果実王」
品種改良が始まったのは16世紀で、18世紀になってやっと生食できる品種が出てきたようです。また、ヨーロッパからアメリカへは初期入植者によって伝えられ、やがて多くの研究者の努力によって大つぶで甘い品種が育成され、現在までに世界中で約1万5000種もの品種が出ています。こんなに種類が多い果物はありません。
このうち日本のリンゴはざっと300種。リンゴは品種改良が盛んなので、ニューフェースが毎年のように出てきます。リンゴの品種改良は、おしべから採った花粉を別の品種のめしべに付着させる「交雑育種」と、突然変異で自然に起きる「枝変わり」と二つに大別されています。
枝変わりは、一本の枝や茎に元とは異なる形質があらわれるリンゴの木だそうで、この性質を利用して、品種改良をします。リンゴ園を経営する人たちは、いくつものりんご種の掛け合わせの中から甘くて色づきを良くしたもの生産し、接木をして増やしていきます。比較的簡単に新種ができるように見えますが、市場へ出てくるまでには10年はかかるようです。
リンゴの原産地はロシア南部のコーカサス地方と言われています。日本では、8世紀ごろに中国から伝わってきたのが最初とされていますが、農園リンゴとなって本格的に栽培されるようになるのは、明治時代になってからです。
リンゴの密ってなに?
リンゴの蜜は、注射器でハチミツを注入して作るーこれを信じている人もいるようですが、もちろん冗談です。
リンゴの蜜は完熟の証拠です。光合成によって葉ででんぷんが果糖の一種のソルビートに変わり、でんぷんの形で果実に蓄えられるのですが、でんぷんに変化しないでそのまま水に溶けて蓄えられたのがリンゴの蜜の正体だそうです。
「ゴマすり」のことを英語では「りんごを磨く人(apple polisher)」と言うそうです。語源は、先生に褒められるために学校へリンゴを持っていく子供にちなんだとういう説をネットで見つけました。正確には分かりません。
磨かなくてもいいリンゴは、自分でワックスを分泌しているので光沢があるのです。このワックスはまったくの無害です。ワックスが出たころが、リンゴの食べごろということです。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
リンゴの食品成分
出典:食品成分データベース
順位 | 都道府県 | 収穫量 | 割合 |
1位 | 青森県 | 445,500t | 58.90% |
2位 | 長野県 | 142,200t | 18.80% |
3位 | 岩手県 | 47,300t | 6.30% |
4位 | 山形県 | 41,300t | 5.50% |
5位 | 福島県 | 25,700t | 3.40% |
6位 | 秋田県 | 23,000t | 3.00% |
7位 | 群馬県 | 7,890t | 1.00% |
8位 | 北海道 | 7,120t | 0.90% |
9位 | 宮城県 | 2,730t | 0.40% |
10位 | 広島県 | 1,450t | 0.20% |
11位 | 岐阜県 | 1,390t | 0.20% |
12位 | 富山県 | 996t | 0.10% |
13位 | 山梨県 | 779t | 0.10% |
14位 | 石川県 | 653t | 0.10% |
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