ゆず・すだち・カボス
NO.69
ユズと仲間のスダチとカボス
日本料理の名脇役
日本料理に欠かせないワンポイントの調味料が、ユズ・スダチ・カボスです。この3種は近縁種ですが、いずれも地域特産として存在を主張しており、日本にはなくてならない、たくましい調味料です。酢の物、鍋物、土瓶蒸しからお菓子にまで、様々な料理に利用されているこの脇役ですが古い歴史がありました。
中国の揚子江上流が原産と言われるユズが日本に渡来したのは、奈良・平安時代でした。山口県や徳島県には原生林があるようです。寒さにも乾燥にも湿気にも強く、今は青森県あたりまで分布しています。
ユズの効能と効用
ユズの実はクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などを多く含み、皮にはビタミンCが含まれています。昔から女性の肌荒れに効くとされていますが、ビタミンCとの相乗効果で血行の働きも良くするということです。
血糖値の上昇を阻止するということから、注目を集めたこともありました。コレステロール値をコントロールする効果もあるとも言われています。毛細血管の働きを良くするのでシミやソバカスの予防にもなり、小じわを防ぐということです。
苦味の部分はリモノイドという物質で、抗がん作用もあるというし、リウマチや関節炎の鎮痛作用もあるようです。そんな言い伝えから、薬用としても利用されてきました。ユズの葉や果汁、種子を利用した漢方薬や民間薬などは、多種類の物が出ています。出欠止めや歯痛、生理不順などにも応用されてきました。
村が取り組んだユズの特産品
高知県安芸郡馬路村は、別名「ユズの村」と言われているユズの名産地です。1976年から販売している「ゆずぽん酢」は、全国の家庭で日常的に使われるほど普及している大ヒット商品です。ユズを使った、様々な製品を売り出しており、村民と村が一体となった自治体産業として注目を集めてきました。
ふろふき大根に利用するユズみそを作ったことがあります。ユズの皮をすりおろし、ユズの果汁とともにみそ、みりん、日本酒などを加え、甘みを抑えて作りました。熱々の大根にユズみそを塗った冬のおつまみは最高でした。
子供の頃に母親がつくってくれたユズ湯も思い出します。ユズの絞り汁にはちみつと熱湯を入れて混ぜ合わせたものですが、風邪気味の時には必ず作って飲ませてくれました。
親戚筋のスダチは徳島特産
スダチは、ユズの近縁種で、徳島県原産の柑橘類です。古くは貝原益軒の書物にも出てくるようです。大正時代に東京帝国大学農学科の研究者が「スダチ」と命名したそうで「sudachi」という立派な英名もついています。
スダチは若い緑色の果実の方が風味がいいそうです。刺身、焼き魚、湯豆腐などに欠かせない薬味であり、果実を半切りにして添え、果汁を絞って楽しみます。何よりも、さわやかな香りには気持ちをリラックスさせる効果があります。クエン酸を多量に含んでいるので、疲労物質の乳酸を解消する効果があるそうです。
もう一つの近縁種は大分県のカボス
カボスもスダチの近縁ですが、こちらは大分県特産です。ユズの枝替わりから生まれたそうで、枝に鋭いとげがあるのが特徴のようです。大分県日田地方で栽培されていたようで、歴史は比較的浅いようです。
果実は球形で、100gから150gと、スダチの3倍以上のサイズになります。昔から疲労回復にいいとされ、果実を絞って飲み、エネルギー代謝の促進に活用してきました。
多種類に広がっている香酸柑橘類
酸味が強く生食には向かないユズ・スダチ・カボスなどは、総称して「香酸柑橘類(こうさんかんきつ」と言われています。日本料理に欠かせない脇役として、古来から利用されてきました。香りがいいだけでなく栄養素としても様々な効能があり、健康的な柑橘類として利用されています。
香酸柑橘類にはこのほか、レモン、ライム、シトロン、ダイダイ、シークワーサー、キンカンなどがあります。シークワーサーは奄美大島以南の山地に自生するもので、沖縄県では果汁用に加工されたり、古くから漂白や洗濯に利用されてきました。完熟すると黄色の果実になり、生食することもあります。
中国原産のキンカンの歴史
キンカンは、中国・浙江省が原産とされています。浙江省の船が難破して修理のため静岡県清水港に寄港した際に、砂糖漬けの果実をもらい、種子をまいたのがはじまりということです。皮ごと食べても甘いキンカンには、このような歴史があったのです。
文:ばばれんせい 絵:とよだゆき
ゆずの食品成分
出典:食品成分データベース
すだちの食品成分
出典:食品成分データベース
かぼすの食品成分
出典:食品成分データベース
ゆず生産量の都道府県シェア(2018年)
順位 | 都道府県 | 生産量 | 全国シェア | 主要産地名(市町村名) |
1位 | 高知 | 11,111.5(t) | 52.80% | 安芸市、北川村、香美市 |
2位 | 徳島 | 2,220.1(t) | 10.60% | 那賀町、美馬市、つるぎ町 |
3位 | 愛媛 | 2,170.1(t) | 10.30% | 鬼北町、松野町、西予市 |
4位 | 鹿児島 | 1,308.2(t) | 6.20% | 曽於市、大崎町、伊佐市 |
5位 | 宮崎 | 1,152.4(t) | 5.50% | 西都市、小林市、日之影町 |
6位 | 大分 | 757.1(t) | 3.60% | 日田市、宇佐市、杵築市 |
7位 | 和歌山 | 355.7(t) | 1.70% | 紀美野町、古座川町、有田川町 |
8位 | 熊本 | 333.7(t) | 1.60% | 山都町、熊本市、八代市 |
9位 | 山口 | 286.0(t) | 1.40% | 萩市、下関市、長門市 |
10位 | 島根 | 215.7(t) | 1.00% | 益田市、大田市、安芸市 |
– | 全国 | 21,032.7(t) | – | – |
出典:食品データ館
スダチ生産量と全国シェア(2018年)
順位 | 都道府県 | 生産量 | 全国シェア | 主要産地名(市町村名) |
– | 全国 | 4,080.4(t) | – | – |
1位 | 徳島 | 3,999.8(t) | 98.00% | 神山町、佐那河内村、徳島市 |
2位 | 佐賀 | 39.0(t) | 1.00% | 唐津市 |
3位 | 高知 | 23.0(t) | 0.60% | 四万十町、土佐市 |
4位 | 愛媛 | 8.7(t) | 0.20% | 新居浜市、今治市、松山市 |
5位 | 大阪 | 5.4(t) | 0.10% | 和泉市、岸和田市 |
6位 | 和歌山 | 4.5(t) | 0.10% | 紀の川市 |
出典:食品データ館
カボス生産量と全国シェア(2018年)
順位 | 都道府県 | 生産量 | 全国シェア | 主要産地名(市町村名) |
– | 全国 | 3,377.3(t) | – | – |
1位 | 大分 | 3,328.0(t) | 98.50% | 臼杵市、竹田市、豊後大野市 |
2位 | 宮崎 | 24.5(t) | 0.70% | 日之影町、延岡市 |
3位 | 福岡 | 12.1(t) | 0.40% | うきは市、東峰村、添田町 |
4位 | 埼玉 | 11.2(t) | 0.30% | 小鹿野町、秩父市、皆野町 |
5位 | 群馬 | 1.5(t) | 0.00% | 安中市 |
出典:食品データ館
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