食のこばなし

ウメ

NO.6

縄文時代に中国から渡来

梅の収穫がそろそろ終わり、梅干をつくる時期になりました。梅と梅干と日本人は、切っても切れない民族的なつながりがあります。樋口清之先生の名著「梅干しと日本刀 日本人の知恵と独創の歴史」(祥伝社新書)にあますところなく書かれています。

梅の木は、日本古来からの樹木と思われてきましたが、歴史をさかのぼっていくと中国から渡来した樹木でした。平安時代の貴族で漢詩人でもあった菅原道真は、宇多天皇に重用されて出世し右大臣にまで上り詰めました。しかしこれをねたんだ左大臣らの策謀で九州の太宰府に左遷されます。そのときに詠んだ「東風(こち)吹かば思いおこせよ梅の花 主(あるじ)無しとて春な忘れそ」というは歌は、都落ちする心情をうたったあまりにも有名な歌です。

冬の寒さに耐え、桃や桜に先駆けていち早く開花して春の訪れを告げる梅は、当時から日本人の心に宿る花でした。万葉集には梅の花を読んだ歌が百十九首あり、桜の四七首を大きく上回っています。当時は花見といえば梅の花見であり、平安時代には貴族の紋章として梅の花が使われるようになります。着物の文様や焼き物のデザインや絵画の題材など美術の世界で梅は存在感を増していきました。

中国から渡来したのは縄文時代だったというのが定説のようです。中国では、花よりも実の方が大切にされ、漢方として利用されていたようで、梅は肺の組織を引き締め、腸や胃の働きを活性化させ、体の中の虫を殺す効用があるとされていました。紀元前二世紀ごろの墓の土器から、梅干と思われるものが発見されています。

 

「メイ」と「メ」と「ウメ」

中国では、梅を「メイ」と発音しますが、その語感が優しく花もきれいなので女性の名前によくつけられています。日本語の「ウメ」という発音は、この「メイ」から来たもののようで、韓国では梅を「メ」というそうです。また古代の中国では、梅の実は恋愛のシンボルとなっており、女性が男性に求愛するときは梅の実を相手に投げる歌が残っているそうです。

日本の梅は最初、かれんな花をつける鑑賞樹木として人々に愛されますが、やがて実もまた愛されるようになり、鑑賞に優れた花梅、食用に優れた実梅とに二分されるようになります。花梅は紅梅、白梅と言われるように見栄えのする花弁と独特の香りも好まれています。花梅も実をつけますが、タネが大きく果肉も薄いとされ、梅干などの材料になるのは実梅の方です。実梅は、花の色も白か淡い紅であって紅色の濃いものはないようです。開花も遅いものが多く、花弁もほとんどが一重になっています。

梅干が初めて書物に登場したのは平安時代の中頃とされ、鎌倉時代の「世俗立要集」にも中国や朝鮮の医薬書から学んだ梅干の効用が書かれています。日本最古の医学書の「医心方」にも梅の薬用が書いてあり、村上天皇が梅干入りの昆布茶で病気が改善されたことが書かれています。

 

梅干の七徳で病害を排除

鎌倉時代には、すでに戦場に出ていく兵士たちが携行するようになっており、江戸時代になると兵士は食料袋に入れるのが普通になっていました。戦闘で息切れした場合に、梅干をなめて体調をととのえたり、生水を飲んだときに殺菌用として食べたということです。江戸時代になると、梅干は庶民がよく食べるようになり全国に広がっていきます。

江戸時代の「薬膳摘要」という本には、梅干の七徳が書かれています。七徳とは、①毒消し、②腐るものを防ぐ、③病気を避ける、④味を変えない、⑤息遣いによい、⑥頭痛に効く、⑦流行病に効くとあります。江戸時代末期にコレラが大流行したときには、梅干をコレラ予防に利用して大きな効果があったことが記録に残っています。コレラ菌は酸に弱いことが幸いしたものでしょう。

「紀州の梅干」として有名な和歌山県は、日本全国の梅の収穫量の六割を超える一大産地です。薄皮で柔らかく、果肉が厚い大粒の梅干で「南高」が有名です。二番目の産地は群馬県で、こちらも大粒で果肉の厚い「白加賀」が有名です。小梅になると山梨県で、小梅生産量は全国一です。

近年は梅干だけでなく、梅酒、梅ジュース、梅ジャム、梅エキスなどさまざまな食品として応用されており、日本の梅は、伝統的な食文化としてしっかりと根付いているようです。

文:ばばれんせい 絵:みねしまともこ

 

うめの栄養成分

エネルギー 水分 たんぱく質 脂質 炭水化物 灰分 飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸 コレステロール 食物繊維
28kcal 90.4g 0.7g 0.5g 7.9g 0.5g -g -g 0 2.5g

 

 ビタミン

カロテン E B1 B2 ナイアシン B6 葉酸 パントテン酸 C
240μg 3.5mg 0.03mg 0.05mg 0.4mg 0.06mg 8μg 0.35mg 6mg

 

 無機質

ナトリウム カリウム カルシウム マグネシウム リン
2mg 240mg 12mg 8mg 14mg 0.5mg

五訂日本食品標準成分表より

 

平成30年(2018年)のウメの都道府県別収穫量

順位 都道府県 収穫量(t)
1 和歌山県 73,200
2 群馬県 5,740
3 三重県 2,090
4 神奈川県 1,810
5 長野県 1,770
6 奈良県 1,590
7 宮城県 1,510
8 福井県 1,490
9 茨城県 1,470
10 埼玉県 1,440
11 山梨県 1,430
12 大分県 1,220
13 福岡県 1,200
14 福島県 1,090
15 栃木県 1,020
16 愛知県 892
17 静岡県 812
18 鹿児島県 802
19 広島県 697
20 千葉県 650
21 山口県 455
22 徳島県 436
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出典:地域の入れ物 https://region-case.com/rank-h30-product-ume/