Blog食育交歓

No.14「第17回全国学校給食甲子園出場!そしてこれから」石川県加賀市立錦城小学校

「食べて学んで元気印」

~学校給食リレー報告~

ここでは全国の学校給食関係者、教員、保護者、生産者、行政関係者、児童・生徒、学生、大会サポート企業・団体からリレーで学校給食・食育をテーマに自由に報告をしていただくコーナーです。全国から届くわくわく「元気印」をお届けいたします。

今回は石川県加賀市立錦城小学校の栄養教諭・西田郁先生から元気印が届きました。

 

No.14「第17回全国学校給食甲子園出場!そしてこれから

石川県 加賀市立錦城小学校栄養教諭 西田郁(63歳)

 

西田郁先生(左)と調理員の宮本康代さん「調理コンテスト」開始直前

 

「第17回決勝大会へ出場」

私はこれまで長い年月学校給食に携わってきました。その間、特に力を入れて取り組んできたのは、個別的な相談指導、その中でも食物アレルギー対応です。対象となる児童やその保護者と面談を重ね、給食時間の見守りを続け、いかに安全に給食を提供できるかを給食室一丸となってやってきました。その結果、児童からも保護者からも信頼を得ることができ、食物アレルギー以外にも肥満傾向についての相談を受けたりして、仕事の幅が広がりました。その取り組みを栄養教諭・学校栄養職員の全国大会で発表できたことは忘れられない出来事です。しかし、昨年第17回全国学校給食甲子園の決勝大会に出場できたことは、それを越える素晴らしい経験となりました。出場選手の中では一番最年長、学校給食に長い年月携わってきた中でも最も心に残る出来事でした。

 

「調理コンテストおいしく、きれいに」目標達成

『日頃、一緒に仕事をしている調理員の方と大きな舞台で調理をすることができる。』出場が決まった時は、そのことがうれしく、ワクワクした気持ちで、早くその舞台に立ちたいと思ったくらいでした。

決勝大会へ向けて給食委員会の子どもたちと担当の一川先生、 青木校長先生が応援動画を作成

 

練習を重ねるうちに、『本当に時間通りできるのだろうか?』『どのように役割分担すれば衛生的な調理になるだろうか?』と迷ったり不安になったりもしました。本番は緊張もしましたが、ふたりで集中して全力を出し切ることができたと思っています。60分が終了したときは、思わず顔を見合わせて「楽しかったね」と呟いた私たちでした。大会ですからもちろん優勝目指して頑張ってきましたが、「おいしく、きれいに」の目標が達成でき、女子栄養大学特別賞をいただけたことに感謝の気持ちでいっぱいです。また、大会の後には、保護者の方からメッセージをいただいたり、子どもたちから寄せ書きをもらったりと喜びが何倍にも膨らむ思いでした。

 

ICTを活用した「食育授業コンテスト」に挑戦

そして自分にとって大きな出来事だったのは、調理のコンテストだけでなく、食育授業コンテストに挑戦できたことです。コロナ禍が続く中、学校でもICTの活用が進み、自分の周りでもICTを活用した食育に取り組む方が増えてきていました。そんな状況の中、自分自身は『食育は対面で、子どもたちの反応をみながら進めていってこそ意味がある。』との思いが強く、一歩進める勇気がありませんでした。

しかし、中学校から小学校に異動して、給食時間に教室を訪問すると、子どもたちは白衣で現れた私の近くに寄ってきて、「今日のこのおかずおいしそう。」とか「これはどうやって食べるの?」と話しかけてきます。黙って静かに配膳する約束がある中で、子どもたちにきちんと言葉で返事をしてあげられないことが辛く、教室へ行くのを躊躇してしまうことも多々ある毎日でした。

そんな中で、ICTを活用した食育授業コンテストにも出場できることになり、今まで避けて通ってきたことを後悔しました。まっさらな状態からのスタートです。伝えたいことは決まっていても、どのようにICTを活用したらいいのか戸惑いながら、とにかく一歩ずつ進むしかないと心に決め、ICT支援員の方や、職場の担当の教職員のお力を借りつつ、挑戦することとなりました。子どもの反応が見えない中、伝えたいことをうまく表現するスキルが足りないもどかしさ。そして5分間という短い時間に、指導したいことをぎゅっと詰め込むことの難しさ。生産者の方を訪問したり、構成をやり直したりと最後の最後まで迷い、悩み、練習を重ねて本番を迎えました。本当に拙い発表ではありましたが、協力してくださった先生方から、「加賀市の良さと先生らしさが出ていました。」と言っていただいた時は、挑戦してよかったなという気持ちでいっぱいでした。

 

「苦手な分野だからこそ、自分でアクションをおこさなきゃ」

その後、食育授業コンテストに参加された方の動画がホームページにアップされ、早速拝見して皆さんのレベルの高さに驚きました。ストーリー仕立てのものだったり、時間をさかのぼる構成だったりと工夫が凝らされ、皆さんがいかにICTを活用されているかを目の当たりにすることになりました。決勝大会が終わった後も食育授業のことが頭から離れず、どうしたらもっと伝わる授業になるのだろうかと考え続けました。そして出た答えは、『苦手な分野だからこそ、もっともっと経験を重ねていこう』ということです。

そこにはICTをどのように活用していくかという大きなハードルがありますが、とにかく経験を重ねていくことなら自分にもできると思い、取り組むことにしました。

動画の構成については、これまで作成してきた給食新聞(中学校では食育新聞)をもとにしようと決めました。

給食新聞クイズや給食室の様子を載せています 教科との関連も目指しています

 

「小さなスタート!食育への関心が教職員仲間へつながる」

早速1月、2月、3月とテーマを決め動画を作成して、実際に先生方に活用していただいています。もちろん、満足のいく動画には至っていませんが、回数を重ねていくと「次はこんなことをしてみたい」という気持ちが湧いてきます。また、動画撮影に協力してくださる先生から「今度はこの角度から撮ってはどうでしょう?」とか児童と一緒に動画を視聴された先生から「マイクはこれを使った方が音質が良いのでは?」などのご意見をいただいたりと、この取り組みを通して食育への関心が教職員にも広がっているようにも感じています。また、子どもたちからも動画の感想やリクエストが届いています。

 

まだまだスタートラインにすら届いていない小さな歩みですが、ここから一歩一歩重ねていくことが新しい自分への挑戦であり、それが子どもたちへの食育の充実につながっていくと信じて進みたいと思っています。

これまで大切にしてきた調理員の方と給食づくりのスキルを発揮できる素晴らしい舞台であるとともに、コロナ禍を経ての新たな食育の可能性を教えていただけたこの給食甲子園という大会へ調理員の宮本康代さんと出場できたことに心から感謝 しております。

計り知れない魅力があるこの給食甲子園という大会との出会いを心の糧に、これからも日々の積み重ねを大切に進んでいきたい、そして『また出場したい!』心からそう思っています。