Blog食育交歓

No.16「命・生きること」~すべては繋がっている~ 千葉県立富里特別支援学校

「食べて学んで元気印」

~学校給食リレー報告~

 

ここでは全国の学校給食関係者、教員、保護者、生産者、行政関係者、児童・生徒、学生、大会サポート企業・団体からリレーで学校給食・食育をテーマに自由に報告をしていただくコーナーです。全国から届くわくわく「元気印」をお届けいたします。

今回は、第18回大会で食育授業コンテストで優秀賞を受賞した千葉県立富里特別支援学校の栄養教諭・飯田薫先生からの元気印です。

No.16「「命・生きること」~すべては繋がっている~

千葉県立富里特別支援学校・栄養教諭 飯田薫(36歳)

 

「モーモースクール」に参加しました!

 本校は今年度牛乳の消費拡大事業の一環として、千葉県酪農農業協同組合が主催している酪農教育ファーム活動「モーモースクール」に参加しました。これは学校内で実際に牛と触れ合い、育てている酪農家の方の話を聞くことが出来る滅多にないチャンスです。毎日の給食はたくさんの命と、そしてそれを育てている人々が関わって出来ていることが伝えられたらと思い、今回小学部と協力し参加することにしました。子どもたちだけではなく、職員にとってもとても貴重な体験をさせていただきましたので、その内容を御紹介致します。「モーモースクール」では、小学部高学年児童は親牛からの搾乳体験を、低学年児童は子牛との触れ合い体験を実施しました。実施が決まった時から子どもたちだけではなく、職員も「学校に牛さんが来るのですか?」とわくわくしてしまった企画です。

 

 

まずは事前授業で、注意事項の確認や触れ合いの練習を行いました。1~3年生では初めて触れ合う児童も多く、先生が牛さんになりきって触れ合いの練習を行いました。手洗いや消毒のやり方などを説明し、ひとりずつ背中をなでる練習が始まります。牛の着ぐるみでも怖くて近づけない児童も多く、当日はどうなるだろうか・・・と先生方も心配の様子で終わりました。

 

牛乳の栄養、どれくらいカルシウムがあるの?

4~6年生は、主に牛乳の栄養について話をしました。第18回全国学校給食甲子園食育授業コンテストで実施した内容も活用して、「牛乳の栄養」について説明しました。「毎日給食に牛乳が登場するのはなぜ?骨ほね君でどれくらいカルシウムがあるのか見てみよう!」と長いカルシウムグラフの登場です。「わぁ!まだまだ入っている、牛乳ってすごいんだ。」と驚いた様子です。牛さんとの対面も、一層楽しみになりました。

当日、本物の牛に触れ合ったら?!

当日トラックが到着し、牛をつなぐ器具を設置し始めると小学部だけではなく他学部の生徒や先生方も興味津々で様子を見に窓際に集まりました。

早速乳しぼりが始まると、衣装を着た酪農家の方が丁寧に手順を教えてくださいました。「牛はね、ただ牛乳を作っているロボットじゃないんだよ。赤ちゃんのために牛乳を作っている。人間と一緒だね。だから乳しぼりをするときも赤ちゃんがくわえた時と同じような刺激を与えると牛乳が出るんだよ。」と、分かりやすく説明してくださいました。

 

子牛との触れ合い体験では、嬉しそうにそっと優しく触る子、おそるおそる近づく子、やはり怖くて泣いてしまう子など様々でした。それでも終わるころには、「最初は泣いていたけれど、少しずつ近づいて最後はなでることが出来たんですよ!」と、とても嬉しそうにお話してくださった酪農家の方々。その満面の笑顔を見て、感動するとともに伝えなければならない「命・生きること」について改めて考えることとなりました。

 

「命をいただく」ということ

毎日私たちが食べるということは、生きるために誰かの命をいただいているということす。中々壮大なテーマではありますが、「食べ物への感謝のこころ」や「給食が出来るまで」など普段の授業でも指導を行っている内容です。また、本校では通常の給食を食べやすくするためにペースト食や押しつぶし食、移行食などの形態に再調理を行っています。「食べる」という動作を習得しながら、少しでも食の楽しさや喜びを感じられるよう、思いを込めて毎日調理を行っています。

私事のお話になりますが、3年前脳出血で倒れたため私自身もペースト食を食べ、調理をするリハビリを経て仕事に戻って来ることが出来た経緯があります。記憶があやふやだった私を目覚めさせてくれた事、それも「食べる」ことでした。

普段何気なく口にしているものは命をいただき、当たり前のように行っている「食べる」という動作は、本当はとても難しくたくさんのエネルギーを使います。そのことを、身をもって体感した経験です。

本校は障害の特性から食べられる食材が限られている児童も少なくありません。繰り返し毎日の変化を観察しながら、根気強く支援してくださる担任の先生の御協力もあって、子ども達は生きるために必要な経験を積み、食について学んでいきます。

今回、搾乳を行う前におなかの部分に触れる動作がありました。牛に慣れるためという理由もありますが、鼓動を感じ「生きている」ことへの意識づけだったのではないでしょうか。

本校でも寒い冬の時期は牛乳の残りが多くなりますが、当日の「牛さんの恵み献立」(ミルクでまろやかカレーライス、チーズ入りコーンドレッシングサラダ、フルーツヨーグルト)では、「すべてのメニューに牛さんの恵みが隠れているよ。どこかな?」と楽しく給食の時間を過ごすことが出来ました。

今回、とても貴重な体験を提供していただいた、千葉県酪農農業協同組合の方々、ご協力いただいた酪農家の皆様には心より感謝を申し上げます。学校全体でも思い出に残るとても素敵な体験を実施することが出来ました。私自身も栄養教諭として、子どもたちの未来を作る、生きる力を育むために貢献できるよう今後も精進していきたいと思います。