Blog食育交歓

2022.3.10 Thu

日本の偉大なソフトパワー学校給食と食育 その3(最終回)

21世紀構想研究会はなぜこのテーマに取り組んだか ーその3(最終回)

2005年に食育基本法、栄養教諭制度が始まった翌年の2006年から、この学校給食甲子園を創設しました。このとき全国学校栄養士協議会(全学栄)の後援をお願いするために理事会で説明をしましたが承認されず、意気消沈して理事会から退出しました。その後、理事会から再度、検討した結果後援するとのお返事をいただき、開催が実現したものでした。

第1回大会は全国から1514応募がありましたが、これは全学栄の組織的な支援があったからでした。第1回大会の栄えある優勝は、長野県伊那市の埋橋恵美先生でした。大優勝カップはたちまち大きな話題となりました。その後、高校野球と同じように深紅の大優勝旗を授与することになり、2回目からは株式会社日本一の染谷幸雄社長が寄贈した大優勝旗も授与することになりました。

大会は毎回、感激のドラマを生み出しました。ところが15回、16回大会はコロナ禍で東京での決勝大会を開催することができず、献立、食育活動の書類審査だけになりました。それでも応募件数は1000件をはるかの超えるものでした。

14回までは調理をして1時間に6食をつくり、それを審査委員が彩り、食味、地場産物の活かし方などで採点して褒賞を決めていました。子ども審査委員が食べて褒賞を決めることもやりました。

第13回大会の場合を見ると、1701の献立をスライドで見るように1次、2次、3次、4次と絞っていって、第4次審査でブロック別に12代表を選定します。そうして決勝戦はこの12代表で競うことになります。

応募数する学校給食の献立は、毎年これだけ応募数があります。第7回を頂点にして下り坂になっていますけども、大体このへんで1300から1400あたりが下げ止まりではないかと思っております。

学校給食の献立を1000件以上も毎年応募してくるというのは世界に例がありません。第16回大会12代表が選定され、リアルで調理はできませんでしたが献立と食育活動の書類審査によって褒賞を決めました。

表彰式はセンター会場を東京の日本記者クラブにして12代表の会場をサテライト会場としてオンラインで結びました。

13会場が一体化した形で表彰式をおこないました。16回大会は、茨城県ひたちなか市立美乃浜学園という、小中一貫公立校の保立貴博先生が優勝しました。スライドで見るように校長先生と教育長、市長さんが囲んでいます。

準優勝は佐賀県白石町学校給食センターが獲得しました。表彰式ではこのマスコット人形がよく登場してなごませてくれるました。12代表がそれぞれオンラインでつながり表彰式でみんなでお祝いをしました。

ノーベル賞受賞者の大村智先生が提供すする大村智特別賞を出しております。また多くの企業と21世紀構想研究会の会員になっている、株式会社日本一、野口医学研究所、武蔵エンジニアリング、株式会社藤江、それから女子栄養大学、教職員生涯福祉財団などからも個別に賞を出しています。

また調理員特別賞があります。株式会社藤江の創業者である中野麗子さんが、縁の下の力持ちで働いている調理員を顕彰しようと特別に設置していただきまして中野麗子賞を個別に出しております。

企業ではキッコーマン、キューピー、日本調理機株式会社等々、私たちのこの運動を支えてくれております。

さらに給食甲子園の活動を認めた官庁・団体・企業が後援団体になっております。文科省、農水省、厚労省の3省がそろい踏みで後援になっております。文科省は教育の一環としてやっていることを認め、農水省は食育主管省として啓発運動をやってほしいとの支援です。厚労省は、生活習慣病予防につながる食育・学校給食を支援するということです。日本医師会が厚労省と同じ視点で後援してくれています。全国学校栄養士協議会、教職員生涯福祉財団、日本給食サービス協会、それから学校給食物流研究会なども応援しています。

メディアの報道は、列島を縦断する形で地元の地域メディア、新聞・テレビは積極的に報道しており、ネットニュース、地方のミニコミ紙・誌なども取り上げています。16回大会では新聞だけで84報、テレビはもっと放映されているでしょう。

1355の応募の全てが電子情報としてデータベース化されております。これは今回だけでなく、第1回から紙ベースで保管しています。3年前からエクセル電子データの応募だけに絞りました。

1000件をこえる学校給食献立データベースは、世界にないと思います。これから食材や料理の内容を分析したり、地域の料理と食材の関係などについて分析する予定です。

たとえば皮付きにんじんと皮をむいたにんじんではどのように使われているか調べました。1355応募件数のうち、にんじんを使用していた料理数は1651ありました。そのうち皮付きにんじんを使用していたのは51件でした。皮むきと皮付きではどんなメリットがあるのか。目的は何か。むいた皮を食品ロスにしないで、有効利用をしようという考えもあるでしょう。愛媛県の茨木仁美栄養教諭は、にんじん、大根のむいた皮を千六本切りにして「使い切りきんぴらごぼう」をつくったということで、第15回の食育授業コンテストで最優秀賞を授与されております。

これからは発信することで食育・学校給食の重要性を啓発していきます。ホームページ、ブログ、Facebook、YouTube、Twitter、Instagram、クラウドファンディングなどです。

話題づくりのコラム、『あなたの誕生樹』『食の小話』リレーエッセイ『食べて学んで元気印』などもネットで発信しております。広報体制はまだ脆弱なので、これを強化していくことが我々の運動の重要なものになっていくと認識しております。

学校給食甲子園は、給食のコンテストだけではありません。食育推進、正しい食生活の啓発に貢献しますということで、シンポジウムの開催、ワークショップの開催、日本食育学会での研究発表もしています。

応募した先生方が全員で作成した巨大な学校給食献立データベースがありますので、分析によって様々な課題を提起したいと思います。データベースは基本的に将来は公開する予定で準備をしたいと考えています。

2009年11月に、学校給食の充実に尽力した功績として、私が文部科学大臣表彰を受けました。これは21世紀構想研究会を代表してもらったと思っております。これを励みにして、これからも広げていきたいと思っています。

実行委員会、審査委員会なども21世紀構想研究会が主体になって展開していますが、いまは大会・運動の基盤固めで取り組んでいます。いずれ開かれた運動運営に発展させたいと思います。

現在、リーダーになっているアドバイザーの先生方、荒井寿光さん、大村智先生、銭谷眞美さんには非常に協力的に関与してくれております。

運営面で尽力する皆さんとして、JM&カンパニーは応募献立の管理、表彰式、コンテストの運営全般、Alfreeはホームページの管理、シンポジウムなどのオンライン運営、菅原印刷は大会誌の編集、印刷、発送を担当しています。事務局スタッフはその他の雑務全てを担当しています。

我々のテーゼは「私たちは権力も資金力もありません。会員の善意と情熱で成り立っている研究会です。時代認識をしっかりと持ち、社会への変革を担うテーマを討論し、政策提言するグループです」です。

21世紀構想研究会は着実に社会貢献を果たしていきます。コロナ化を越えて再会する日を楽しみに待っています。

終わり