「日本の学校給食」第3回 力を合わせて「給食当番」を務める日本の子どもたち
給食の時間、日本の子どもたちは調理場から教室に給食を運び込み、食事の盛り付け、配膳、後片付けまですべて自分たちで行います。
「給食当番」になった子どもたちがどんな役割をしているのか。東京都小平市にある小平市立小平第六小学校に取材に行ってきました。同校では1年から6年生まで約590人の子どもたちが学んでいます。
12時20分、チャイムの合図でいよいよ給食の時間です。すると各クラスの給食当番が給食を受け取りにやってきます。当番の子どもたちは全員、ヘアキャップにマスク、そして清潔な白衣で身を固めています。もちろん手洗いはしっかり済ませました。週ごとに当番は入れ替わりますが、6年生は一クラス4人、1年生はまだ体も小さいので6人で担当します。
担任の先生に「しっかり手を洗いました」と報告する1年生の給食当番たち
子どもたちはまず調理員さんに給食当番の衛生点検表を手渡します。これを確認してもらわないと給食を受け取ることはできません。点検表には「手をちゃんと洗ったか」「爪はのびていないか」「下痢をしている人はいないか」など、担任の先生がチェックした項目が並んでいます。それだけ、給食当番は自分たちの衛生面や健康面にも気を配らなければいけないのです。
当番はクラス全員の給食を教室まで運ぶ
今日の献立は「ごはん・ムロ鯵つくね焼き・ジャガイモの炒め煮・おひたし・牛乳」です。調理員さんたちが、朝早くから準備した栄養バランスのとれた美味しい給食です。クラスごとに大きな調理用バット(アルマイト製の食べ物を入れる器)に入れられ、食器やおはしとともにワゴンにのっています。それを自分たちの教室まで運びます。体の大きい6年生は苦もなく運んでいますが、4月に入学したばかりの1年生にとっては大仕事です。それでも皆で協力しながら慎重にワゴンを押していきます。
重たい給食ワゴンも力を合わせて運びます。
教室に到着すると、今度は先生の助けも借りて配膳台の上にバットを並べます。そして給仕の仕方もしっかりリハーサルして、今か今かと待ちわびている同級生たちのトレイにていねいに料理を盛り付けていきます。おはしを手渡す係り、ごはんを盛る係り、メインのおかずを皿に盛り付ける担当、牛乳の配布担当、それぞれが自分たちの役割をしっかりと果たしています。
全員に行き渡ったのを見届けて、「いただきます!」とその日の日直が号令をかけて食事がスタートします。
給食の間、校内放送のスピーカーからは今日の献立の説明が流れます。「ムロ鯵は東京都の離島、八丈島でとれました。おひたしは地元、小平のほうれん草です」。解説しているのは、5・6年生の給食委員の子どもたちです。説明を聞きながら、子どもたちは今、自分たちが食べている食材が地元で採れた新鮮なものだということを学んでいきます。
小学校に入学すると、子どもたちは給食を通して食事前の手洗い、おはしの使い方、食事前・食事後のあいさつなど、基礎的な食事のマナーや楽しく食事をする大切さを学びます。そして高学年になるにつれ、食品の生産・加工・流通、食事と健康の関係、食材と栄養の関係、各地の郷土料理、日本と世界の食文化など食生活について習得していくのです。
これが「食育」と呼ばれる日本独自の教育です。そして食育の中心となっているのが「学校給食」なのです。
給食の片付けも子どもたちが自分で行います
給食放送が終わると給食委員が「からっぽ賞」を届けにきます。この賞は前日の給食に食べ残しがなかったことを証明するもので、調理員さんたちが返却された調理バットが「からっぽ」になっているのを確認し、その報告を受けて栄養教諭の白井先生が発行します。
「隣の組より、僕たちのほうが『からっぽ賞』はたくさんもらっているよ」と子どもたちは自慢げに説明してくれました。クラスごとに競い合っているようです。そういえば各教室の壁には「からっぽ賞」の賞状が誇らしげに何枚も貼られていました。
調理員さんにお礼を言って、給食当番の任務は終了です。
食事が終わった後は、子どもたち全員が自分のトレイを教室の一番前にある配膳台まで運び、それを給食当番の子どもが茶碗は茶碗、皿は皿ときれいに重ねて、調理場に戻します。そして最後に当番全員で調理員さんたちに「美味しい給食ごちそうさまでした!」と元気にお礼を言って、給食当番の任務は終了となりました。
文・写真:大森光枝 (全国学校給食甲子園 事務局長)
取材協力: 東京都小平市立小平第六小学校 白井ひで子栄養教諭そして皆さん
なお、この記事は科学技術振興機構(JST)の中国向けポータルサイト「客観日本」で中国に配信されています。http://www.keguanjp.com/kgjp_shehui/kgjp_sh_yishi/pt20160615102743.html