あなたの誕生樹

あなたの誕生樹NO.51

クワ

5月21日

 

5月21日の頃は、七十二候で「蚕起食桑(蚕起きて桑を食う)」と言うことなので、この日の誕生樹はクワ(桑)としました。

蚕の餌になる桑の葉、「(蚕が)食う葉」からクワという名前になったといいます。蚕は桑の葉をカサカサと音を立て、モリモリ食べて成長し、やがて繭を作り、その繭から絹(シルク)がつくられるわけですが、なんと一つの繭からおよそ1000mの繊維が取れるということです。

明治以降、日本は近代化を進めるなかで、絹は重要な輸出品であって、クワは日本の近代化を支えたともいえます。子どもの頃、近所にも繭を茹でながら絹糸を取り出していたおばさんの作業を眺めたものですが、蚕のことは“おかいこさん”と敬称で呼んでました。そういえばこのころに、皇室でも皇后陛下が「養蚕」の伝統行事を今も続けられています。

クワは養蚕だけでなく、生薬や食用にもなるということです。三木露風の作詞した童謡「赤とんぼ」の二番に、「山の畑の桑の実を小籠に摘んだはまぼろしか」とありますが、友達(悪ガキ)と一緒に他人の桑畑に入り、熟した桑の実を頬ばった昔を思い出します。実が赤い内はまだ美味しくなく、黒ずんだ紫色になった頃が食べ時です。

 

○桑の葉の照るに堪へゆく帰省かな(水原秋櫻子)

 

文:椋 周二