NO.276
マツ
1月1日
正月元旦、お屠蘇をいただき、雑煮とおせち料理というのが日本の伝統的なお正月の食卓です。高浜虚子の俳句に「酒も好き餅も好きなり今朝の春」という句があります。お正月料理を食べながらおめでたい正月気分をよんだ俳句で、お酒もおもちも好きな私からするといい俳句だなあと思います。
料理のコースの呼び名としてお料理屋さんでは「松竹梅」が良く使われます。これはコース料理の「番付」をいうものであり日本ではごく普通に使われています。本来「松竹梅」は、めでたいことを意味する中国由来の言葉ですが、中国では序列はないとのことです。上から順に松→竹→梅の序列となっているのは、日本独自の風習でしょうか。マツが日本でおめでたいと一般的になったころ、歴史を踏まえての古い順に序列ができたようです。
おせち料理ですが、我が家では家内が前日の大みそかまでかかって一生懸命作ってくれます。ところが孫たちには好き嫌いがあり、子孫繁栄を願うカズノコには目もくれない。昔、カズノコが品薄で「黄色いダイヤ」ともてはやされた時代が懐かしいです。虚子の次女の星野立子の俳句に「美しきことはよきもの松の内」があります。女性の繊細な美意識が出ていて好きな句です。
ところで日本三景の一つ、天橋立はいわゆる“白砂青松”を代表する景勝地ですが、海で周りを囲まれた日本のいたるところの海岸に松林を見ることができます。これはマツが塩害にも強いことから防風林として植えられたことと関係が深いと思います。
2011年3月11日の東日本大震災は未曽有の大津波被害を東北3県にもたらしましたが、その折、岩手県陸前高田市の“奇跡の一本松”がマスコミにも取り上げられましたが、残念ながら、しばらくして枯死してしまいました。塩害には強いものの、海水を浴びたせいだったのでしょうか。
しかし、隣の宮城県の仙台市蒲生地区でこの地震による津波被害にあいながら生き残った樹齢400年のマツがあったんです。なんと、それも、21世紀構想研究会の馬場理事長のご親戚の末永家の庭木で、皆さんが協力してこのクロマツに真水をかけて守り抜いたということです。マツは塩害には強いものの海水を浴びるとダメということを分かっておられたんですね。今は区画整理が行われ、移植保存がされているようです。東日本大震災の津波に耐え、生き残った訳ですから“生き残りの松”であり、また“末永の松”と呼ばれていたこのマツ、末永くあってほしいものです。
東日本大地震津波に生き残った仙台”末永の松”