Blog食育交歓

21世紀構想研究会・第4回食育シンポジウム報告1

テーマ:減塩献立に取り組む学校給食現場 報告1

~その課題と普及・啓発の展開を探る~

開催日  2022年3月26日(土)午後4時~同6時

モデレーター:香川明夫(学校法人香川栄養学園理事長 女子栄養大学学長)

パネリスト(医師):香川靖雄(女子栄養大学副学長、自治医科大学名誉教授)

(現場):小神野あや子(茨城県土浦市立神立小学校 栄養教諭)

(現場):武方美由紀(愛媛県西条市立西条小学校 栄養教諭)

コメンテーター

(医師):朝倉敬子(東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野准教授)

(ゲスト):井上美香(キッコーマン食品株式会社プロダクト・マネジャー室

                        しょうゆ・みりんグループ マネジャー )

司会 :馬場錬成(認定NPO法人21世紀構想研究会理事長)

 

馬場    それでは定刻になりましたので、これから第4回食育シンポジウム、オンライン形式で開始したいと思います。銭谷眞美実行委員長から一言ごあいさつをお願いしたいと思います。

銭谷    皆さん、こんにちは。学校給食甲子園実行委員長の銭谷でございます。21世紀構想研究会は、食育と食育の根幹に位置する学校給食が子どもたちの健康と成長にとって極めて大切な役割を担っているということにかんがみまして、毎年学校給食甲子園大会を実施してまいりました。学校給食甲子園大会は、第1に文科省の学校給食摂取基準に基づいた学校給食であるか。第2に栄養量や分量が子どもたちにとって適正であるか。第3に地場産物を活かした給食であるか。第4に食育の生きた教材として活用されている給食であるか。そして、第5に見た目も美しくおいしい給食になっているかといった観点から、応募献立の審査をおこなっております。

第4回食育シンポジウムのテーマは、『減塩献立に取り組む学校給食現場~その課題と普及・啓発の展開を探る~』ということであり、学校給食摂取基準の一部改正によりまして、塩分摂取基準がさらに厳しくなっております。なぜ減塩に取り組まなくてはならないのか。減塩に取り組む学校給食献立の工夫や課題について考えるのが、本日のシンポジウムでございます。よろしくお願いをいたします。

 基調講演:香川靖雄(女子栄養大学副学長、自治医科大学名誉教授)

香川明夫 シンポジウムのモデレーターを仰せつかりました香川明夫です。全国各地から様々な視点から、このシンポジウムにご参加いただけたものと思います。早速キーノートスピーチを女子栄養大学副学長、香川靖雄先生にお願いいたします。

香川靖雄  学校給食の食塩の摂取量は、年齢別に決められました。食事の中に含まれる食塩の量が決められております。例えば学校給食でカレーライス1人前食べたら、もうそれだけで塩分は2.5グラムを超えてしまいます。それから、皆さんがよく召し上がるカップめんだったら、その倍くらいの5.5グラム取るという事情をまず頭に入れていただいてください。

これは日本の高血圧学会の減塩委員会が出した図ですから、皆さんよく頭にまず入れてください。

次の表ですが、文科省が学校給食実施基準の一部改正で、12歳から17歳までの塩分摂取量を2.5グラム未満ときめました。5歳以下が1.5グラム未満で厳しい数字です。

それでは現状はどうなっているか。次のスライドをご覧ください。男性が平均して10.9グラム取っており、女性が9.3グラム。小児については、目標が4.5グラムないし7グラムですが、平均8.9グラムを取っています。女性も子どもで8.2グラムプラマイ2.6を取っています。

一体どうして小学生、あるいは中学生の頃から、食塩について厳しい制限を求めるのか。

栃木県にある自治医科大学で、非常に精密な実験をいたしました。食塩量は24時間尿で測る。

自治医科大学には、各県から2人か3人ずつ決められて入学してきます。寮に入った学生諸君のうち、北の方から来た学生は、塩味が少なすぎて食べられない。それでソースをかけたり、それから汁も全部飲んじゃいます。

西から来た人、地図の青で塗ってありますが、これはもう辛くてしょうがない。だから、うどんなんかも汁は飲まない。同じ栄養を取っているはずですが、食塩についてはこんなに大きな差が出る。これはなぜだろう。

これは、小さいときからの食事に差があるんです。上のスライドの左側に赤で囲っている、国民健康栄養調査の結果を見てください。南北差があります。東北の人はたくさん塩分を取るわけです。

そこで、これを指標化しました。赤いきつねと緑のたぬきという即席めんで、大変な成功を収めます。

見たところ同じ赤いきつねであっても、塩分の量を変えてあるんです。外見は同じでも、中の味付けを変えて、これで爆発的な成功を収める。つまり、誰が食べ

てもおいしいラーメンというのは世の中に存在しない。

しかし、皆さんも『包丁人味平』という漫画をお読みになったと思いますが、これは味平は、誰が食べてもおいしいラーメン店に行ってびっくりするんです。それは、一人一人の食べ残した汁を味わってみたら、味が違って、その店主は、あいさつをしたときに東北弁の人か、関西弁の人か、すぐ聞き分けて味を変えてた。これが大変大事なことです。

それでは外国人は1日5グラム、WHOは5グラムと決めているわけです。日本人は平均して10グラムくらい取っているわけです。どうしてこんなに差が出るかというと、実は遺伝子が違うんです。雨のよく降る地域は食塩が自然の中で少ないのです。ですから、類人猿からはじまりまして、多雨地帯の日本などでは、どうしても1日の食塩はそれなりに必要になる。だから遺伝子が違うわけです。

人種によって遺伝子が違っているのがわかります。つまり、身体の中に食塩を保つ遺伝子が違うことによって、味覚とか身体の中の血圧の保持が変わります。これは大変複雑なスライドですが、ゆっくりご覧になるとよく分かると思います。

次のスライドもすこし学術的なスライドになりますが、アンギオテンシノーゲンという酵素ですが、これがどのように味覚に影響しているかということも実はわかっています。グラフをよく見ていただけると、この学術論文の意味がお分かりと思います。

このスライドで紹介した研究は、とても複雑な研究なんですけども、皆さんには、塩分の研究というのは実はこんなに詳しくわかっているということだけお知らせしたいと思っています。

                                         報告2へつづく