Blog食育交歓

21世紀構想研究会・第4回食育シンポジウム報告2

テーマ:減塩献立に取り組む学校給食現場 報告2

~その課題と普及・啓発の展開を探る~

基調講演その2:香川靖雄(女子栄養大学副学長、自治医科大学名誉教授)

食塩をとっても食生活をバランスよくすることで高血圧にはならないというメカニズムを説明しましょう。

上と下の二つの棒グラフで大事なことは、食塩をどうしてもある程度取らなきゃいけないとなっても、野菜、果物などからカリウムをたくさん取ると、血圧は上がらない。

それはなぜか。カリウムや、マグネシウムは、体外にナトリウムを排泄してしまうわけです。ですから、塩分を少々取りすぎても、野菜、果物をたくさん取ればいいということです。

次のスライドは、どうしたらおいしいお料理ができるかということを科学的に研究していることを示しています。おいしいものを食べると、強いエンドルフィンという快楽のペプチドが脳の中でできてきます。ですから、どうすれば一人一人がおいしい食べ物が食べられるかということの科学的研究が進んでいます。塩味の嗜好が強い人であっても、どうすれば塩味を薄くしても食事を楽しめるか。そういう研究もできるわけです。

次の2枚のスライドは、おいしい食べ物について客観的に味を測る、味覚センサーというものができていることを紹介します。すでに大企業、食品産業などでは実用化しています。栄養学の研究者と味覚センサーを開発している研究者がお互いに協力して取り組んでいます。このような研究者は皆さんお料理にもなかなか熱心です。

栄養学とセンサー開発研究者との二人三脚で展開しております。

次の2枚のスライドは大変、大事です。私たちの身体には日周リズムがあります。いろいろなホルモンがリズムをもって出てきてコントロールしています。それを調べてみると、夕食のときは案外食塩を取っても身体に食塩を蓄えるアルドステロンが落ちますので、大丈夫だということになります。病院の食事でも、夕食は多少食塩が多くてもいいということになっています。

 

女子栄養大学には栄養クリニックがあります。そこで食習慣が定まってしまった高齢者に対して、減塩だけではなくて、肥満の抑制やメタボ、骨粗鬆症の改善、あらゆる面で栄養指導をしています。

下のスライドをよくご覧ください。右側の個人指導の用紙は、栄養クリニックの受講者の皆さまにお配りをして、そして、日々の食事に気を付けていただく半年間のコースなんです。時々講習を受けて、普通の家庭の生活なかで、塩味をどうしたらおいしく、そして長続きして、安全に食べられるかということを身に着けるわけです。

私どもは遺伝子を調べ、そして遺伝子の型を教えてさしあげています。大部分の方は一番食塩を身体に蓄えている方なのですが、その方は6グラムを目標としていただくということです。白人に近い方もおられて、その方々は緩やかでいいとなります。遺伝子を教えてさしあげるということは大変インパクトがあります。

 

遺伝子を持っているので脳卒中になるリスクが高いと分かったら一生懸命減塩に努めます。また、アンギオテンシノーゲンは脂肪組織で作られるので減量が血圧低下に有効です。適正体重にするために減量すると、脂肪組織が減るのでアンギオテンシノーゲンが減って血圧が下がるのです。アンギオテンシノーゲンの遺伝子のTT型は、日本人の約70%を占めています。その人には1日6gの食塩を勧めています。

 

さらに運動をして、カリウム、マグネシウム、カルシウム、こういうものを取ると食塩が身体の外に出ていきます。そして、塩分を制限をする。そして、夕食はちょっと手を抜いてもいいとなります。味付けについても右側に詳しく書いてあります。

さて最後のスライドになります。これは私どもが去年の末に、病態栄養学会で発表した論文です。クリックの指導で体脂肪とかBMIは有意に下がります。

一番大事な、ここでSBPと書いてあるのは、収縮期血圧です。収縮期血圧130を越えると良くありませんが、これを11くらい下げる。拡張期の血圧、77あったものを72まで下げる。一番肝心の食塩です。これは24時間尿で測っておりますが、8.6グラムあったものが1.22グラム下げることに成功しました。成人の目標値にはちょっと達しませんですが、半年の間にこれだけの成果を上げることができたわけであります。

このような、私どもの実際の成果を皆さんも参考にしていただいて、ぜひこれからの減塩対策を頑張ってください。いろいろな工夫をして、学校給食の食塩の減量を実現していただきたいと思います。

報告3へつづく