食のこばなし

NO.44

タイの本家に「あやかりタイ」魚たち

日本人は縄文時代からタイを食べていた民族で、貝塚から鯛の骨が多数出土しています。平安時代には「平魚(たいらうお)」をいう言葉が出てきます。体形が平らなことからついたようですが、これが略されて「たい」となったとも言われています。タイが魚のトップに位置づけられたのは江戸時代からと言われ、各地の大名が幕府への献上品として活きタイから日干しタイに至るまで様々なタイが献上されました。タイはこのころから高級魚と認められたのでしょう。姿かたちが魚の中でも雄大な雰囲気を持っており、赤い体色から、お正月や結婚式などおめでたい席にはよく登場するようになります。

タイの4大特徴は、①扁平で、②大型で、③赤っぽい体色だが、④白身です。そこでタイ科にある本家のタイとは全く違う科に分類されている魚でも、4大特徴に近い魚は「〇〇ダイ」と名前だけはタイを名乗っています。タイ科の魚は10数種類しかいませんが、世の中には、200種類以上のタイがいるそうです。たとえばキンメダイアコウダイなどはタイ科の魚ではないタイということです。「あやかりタイ」という言葉も本家のタイにあやかって高級魚として扱われてほしいという人間の勝手な思惑から名付けられたのでしょう。タイに罪なしです。

キャンプにもってこいのタイの塩釜

タイはどんな料理法をしてもおいしいのですが、筆者の得意な料理があります。キャンプ料理にうってつけのタイの塩釜とタイ茶漬けです。タイの塩釜で準備するのは、粗塩、卵、タイだけです。

まずタイの内臓をかき出し、空洞になったタイのおなかの中に、エノキとオリーブの葉っぱをぎっしり詰めます。タイの口の中とエラの内部にも一杯に押し込みます。次に大きなボールの中に粗塩を入れ、卵を3つほど落として塩と卵をこねこねします。こねこねを十分にしないと、塩のどろどろに粘りが出てこないので、泥遊びをする気分でこねこねします。子どもとやるとこれが実に楽しい。

次に鉄板の上に泥塩で鯛をのせるベッドを作ります。ベッドができたらその上に鯛を寝かせ、泥塩を上からすっぽりと鯛が見えないようにかぶせますが、鯛のしっぽだけは外に出しておきます。

この鉄板を強火の上にかけておき、鯛のしっぽのあたりからかぐわしい鯛の焼けた匂いがしてきたらできあがり。コチコチに固まった塩の山を壊すと、鯛の丸焼けが姿を現します。頭からしっぱの辺りまで食べられますが、最後にタイの頭部から胴体にかけたあたりにある「鯛の鯛」を探します。鯛の形にそっくりの骨があるのです。

タイ茶漬けも簡単です。お刺身で食べ残したタイの切り身をゴマだれに漬け込み、炊き上げのご飯の上にのせて煎茶を注ぎます。蓋をかぶせて少々蒸らしますが、煎茶の代わりに自前のタレ汁を作っておき、これを沸騰させて注ぐのも絶品です。

 

「エビタイ」というけどホントにエビで釣るのだろうか

わずかな元手で大きな利益を得るときに「海老でタイを釣る」と言います。付け届けは大したことのない品物が、お返しはたいそう立派なものが返ってきたときなどにもこう言います。「えびタイ」などとも言いますが、語源は確かにエビをエサにしてタイを釣るということから出たようです。

また「腐ってもタイ」という言葉もあります。タイには分解されにくいイノシン酸が含まれているので、鮮度が落ちても味は変わらないのでこう言われるようになったのでしょう。

最近は近海もののタイよりも輸入タイが多く、香港タイ、豪州タイ、ヨーロッパタイなどがあります。いずれも近海のタイとよく似ているので見分けがつかないほとです。色の濃淡が多少ありますが、味は同じようなものです。養殖ものはかなり脂がのっているので、人それぞれ、それが美味しいという人もいます。

 

お相撲さんが優勝すると両手にタイ

大相撲の優勝力士が両手に大きなタイをぶら下げた写真が一斉に報道されます。これが外国人にはさっぱりわからない。何で優勝力士が魚を下げているのか?

タイは鮮やかな赤い体色で姿形が美しく、味もほどよく脂がのっているのに淡泊で癖がない。日本を代表する海水魚なので、英語の表記でも「Japanese sea bream」と「Japanese」がついています。「bream」はタイ科の魚の一般名称です。

優勝力士のタイ風景を外国人に説明するのは大変です。「なぜ、相撲レスラーだけ?プロ野球やサッカー選手やオリンピックの金メダリストは、なぜタイを下げないの?」「なぜ、しっぽを持って下げるの?、頭じゃ、ダメなの?」。そう言われると困ってしまう。

ともかくも祝い事にタイは欠かせない魚になり、「めでタイ」のごろ合わせとともに優勝力士のタイの逆さ吊りとなったのでしょう。日本産のタイは、産卵のために冬に鳴門海峡を通過する鳴門タイ、坂出から児島半島沖辺りで獲れる桜タイなどが有名です。大きさは「目の下一尺」と言われる体調40センチくらい、重さ2キロほどがもっともおいしいと言われています。

 

 

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

鯛の食品成分

出典:食品成分データベース

鯛の漁獲量の都道府県ランキング(平成30年)

順位 都道府県 漁獲量 割合
1 長崎県 4,522t 17.90%
2 福岡県 2,618t 10.30%
3位 島根県 1,748t 6.90%
4位 愛媛県 1,721t 6.80%
5位 兵庫県 1,672t 6.60%
6位 山口県 1,395t 5.50%
7位 鹿児島県 874t 3.50%
8位 熊本県 832t 3.30%
9位 愛知県 761t 3.00%
10位 新潟県 740t 2.90%
11位 千葉県 686t 2.70%
12位 石川県 663t 2.60%
13位 広島県 661t 2.60%
14位 香川県 650t 2.60%
15位 大分県 637t 2.50%
16位 和歌山県 469t 1.90%
17位 青森県 403t 1.60%
18位 徳島県 386t 1.50%
19位 岡山県 374t 1.50%
20位 山形県 373t 1.50%
21位 三重県 359t 1.40%
22位 高知県 327t 1.30%
23位 福井県 282t 1.10%
24位 大阪府 243t 1.00%
25位 秋田県 228t 0.90%
26位 佐賀県 224t 0.90%
27位 宮城県 214t 0.80%
28位 富山県 195t 0.80%
29位 宮崎県 192t 0.80%
30位 鳥取県 191t 0.80%
31位 静岡県 157t 0.60%
32位 神奈川県 149t 0.60%
33位 茨城県 145t 0.60%
34位 京都府 115t 0.50%
35位 岩手県 63t 0.20%
36位 福島県 36t 0.10%
37位 沖縄県 15t 0.10%
38位 北海道 4t 0.00%
39位 東京都 2t 0.00%
40位 栃木県
41位 群馬県
42位 埼玉県
43位 山梨県
44位 長野県
45位 岐阜県
46位 滋賀県
47位 奈良県

出典:地域の入れ物

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