Blog食育交歓

21世紀構想研究会・第4回食育シンポジウム報告7

テーマ:減塩献立に取り組む学校給食現場 報告7(最終回)

~その課題と普及・啓発の展開を探る~

参加者を交えた討論

香川明夫 これから意見交換をしたいと思います。朝倉先生が実態に合わせて塩分摂取量を決めているという報告がありました。現場で取り組んでいる先生方から意見をいただきます。

小神野  難しいとは感じているのですが、やはりもう決まっているので、それに向かって頑張るしかないかなと思っています。

香川明夫 武方先生、いかがでしょうか。

武方    努力次第で、可能かなという気持ちですが、2グラム、もしくは月平均で2.1グラムくらいがギリギリ。それをどう1.9に持っていくかというところが課題ではあります。調味料だけでなく、子どもたちの食べ方に関しても指導をしていきたいなと思っています。

香川靖雄      栄養教諭の先生やキッコーマンの方たちが減塩に努力をしておられるのはよくわかりました。一番大事なのは、一日を通しての食塩を減らさないといけない。だから、学校ではあまり塩味はなかったから、家へ帰っておしょうゆをたくさんかけるとか、そういうことになってはいけないのです。外食は大体塩分濃度が多いですから、全体を通して、どう下げていくか。ですから、家庭の食事について塩味を減らすような工夫をしていただきたいと思います。

香川明夫      家庭や社会に、塩分減量をどう発信していくかということも学校給食の大きな役割なんだなと感じたわけであります。私の個人的な感覚かもしれないのですが、米飯給食ですが、白飯で出される回数が少ないなと思っています。白飯にすると残菜が多いとか、そういうことがありますか?

武方    西条市では、炊き込みごはんとかは月に1回しかしません。白いごはんか麦ごはんか雑穀米のごはんにプラス副菜、おかずという形で提供しています。白いごはんは大好きです。

小神野  私の市も、ほとんど炊き込みごはんをやらず、白いごはんと麦ごはんです。年に1回わかめごはんを出すくらいです。子どもたちは白いごはんはやっぱり大好きでよく食べています。

香川明夫      減塩の商品として、しょうゆなどが取り上げられていたわけですけども、価格面として少し価格が上なんじゃないかなと思っているんですけども、いかがでしょうか。

井上    ご家庭ではすごく使いやすい価格帯にさせていただいていると思っております。給食の現場でのご提案ということになりますと、通常のおしょうゆのほうがいろいろな価格体系のものが上から下まであるような状態ですので、しょうゆの使用量の面から考えても、減塩タイプで、しかもしっかりとおいしいものを選んでいただくことで、使用量を調整していただけると思います。

香川明夫      さてそれと反対に、カリウムの摂取です。ナトリウムの排出に大きくつながっているということですが、カリウムの摂取にどんな工夫がされそうですか?

武方    イモ類、お野菜、海藻になると思います。給食の汁物は、どこの学校も具だくさんで、いろいろなお野菜を使っていると思いますので、家庭でつくる味噌汁よりは、ずいぶんカリウムも摂れています。汁の量が少ないのは、使う調味料も少なくて済むということです。

香川靖雄      子どもたちはあまり野菜が好きじゃないんですね。日本人のくだものの摂取量は、世界で一番少ないんです。日本のくだものの摂取量は驚くほど少ない。なぜ少ないか。子どもたちはくだものが好きだと思うんですね。人によっては、くだものには糖分があるから良くないという人がいますが、今の日本のくだものの摂取量というのは、そういうことに影響するほどではありません。カリウムが摂れるように、私はくだものの摂取をもう少し学校給食で増やすことが子どもたちも喜ぶし、無理がないと思います。

香川明夫      小神野先生、学校給食にカリウムを含むようなくだものを入れやすいですか?

小神野   くだものは値段が高いので、入れづらい部分もあります。かなりハードルは高いです。

香川明夫      朝倉先生、学校給食ではくだものが高くて食べられなかったり、日常の家庭生活でもくだものをあまり食べないとことが話題に上がりました。調査された中でそういったことは出てきていますか?

朝倉    確かにくだものの摂取量は経済状態とだいぶ関係があります。くだものをご家庭で取り入れていただくことを啓発することは大事だと思います。

香川明夫      武方先生、味噌作りをされているということですが、その味噌は市販の味噌よりも塩分少ないねとか、調べていますか?

武方    10パーセントの減塩味噌で、かなり甘めの味噌になっています。麦味噌と米味噌の混合味噌で、ちょっと甘く感じるお味噌なので、子どもたちは大好きです。この味噌を食べると、市販の味噌は食べられないねというような感じです(笑)。

香川明夫     子どもたちは家に持ち帰っているんですか?

武方    持って帰っています。5年生の家庭は食べます。

香川明夫     小神野先生の取組みの中で、給食のレシピを県民の皆さんにお伝えする啓発ですが、どのようにしていますか?

小神野  特に私のところでやっているわけではなく、茨城県全体で「いばらき美味しおDay」ということになっています。土浦市でも、特化したメニューをつくって本格的に取り組んでいく予定になっています。

香川明夫      会場からの質問に移ります。摂取基準を設定するにあたって、少なくとも一ヶ月分の献立を実際に作成されてから設定があったのでしょうかという質問です。朝倉先生如何でしょうか。

朝倉    同じ質問を何度か受けたことがあります。数字自体は、長い期間にわたって献立をつくっていくものであって、ある1回分に関してのみだという認識では、基準をつくったものではないです。数字は、調査の結果に基づいて決まっていますが、もちろん厳しいですねというコメントをいただいていますが、これならということで出している数字ということになります。

香川明夫 武方先生へのご質問で、全学年の味噌汁体験。これ大変素晴らしいと思っているのですが、4年生以下の児童に対してどのようにされているのかということです。パンをつくるには塩が必要だというのが今までの概念だったと思うのですが、いま減塩パンが開発されてきた。どういうふうに取り入れられているのかということについていかがでしょうか。

武方    味噌汁づくりですが、親子で味噌汁をつくりましょうと実施しています。低学年は保護者と一緒に買い物に行くとか、一つお手伝いをするということでいいですよということです。高学年は自分一人でつくりましょうということです。保護者の感想、子どもの感想を1枚のワークシートでもらい、使った地場産物とか、味噌汁の中の実を書いてもらうワークシートを使っています。

普段市販の顆粒のだしを使っている家庭が、このときばかりはちゃんとした煮干しだったり、かつお節を削ってだしを取ったというような家庭があり、本当のだしの味というのを、このときだけでも実践してくれる家庭があります。減塩パンは、業者さんにまず半分に減らしてもらいました。試作をしたらとてもおいしくて、できるんじゃないということを言ったんですけど、いや、これは試作の量だからできる塩分で、何千個ということになるとなかなか温度とか湿度とか、いろいろな条件がそろわないとできませんというところです。今小麦粉100グラムに対しての、1.5グラムというのが減塩パンになっています。

香川明夫      家庭科の学習指導要領の解説の中には、4年生までの食育を生かして5年生の家庭科をやりなさいということが書かれています。こういった味噌汁づくりが家庭に広まり、社会に広まる一つの道筋かなと思って伺いました。給食でだしと取るとき、いりこ、かつお節など再利用はされているかというご質問ですが、いかがでしょうか。

小神野  食べ残しや調理で出た野菜くずなどは堆肥化しております。堆肥化して、それをまた肥料として、公民館などで活用をしております。

減塩パンですが、茨城県でも学校給食会のほうで減塩に取り組んでいただいて、やはり同じように、100グラム1.8グラムを1.5グラムまで減らしていただきました。

香川明夫     パネルディスカッションにつきましては、これをもちまして終了させていただきたいと思います。

馬場    締めくくりは全国学校栄養士協議会の会長で、全国学校給食甲子園実行委員の長島美保子先生から、閉会のごあいさつをお願いいたします。

長島    本日は本当に有意義な時間を共有できましたことに、心から御礼申し上げます。減塩については、国の第4次食育推進基本計画において、目指す到達目標が掲げられており、世代を越えて取り組むべき国民的課題となっています。本日は大変示唆に富んだ、意義深いシンポジウムになったと思っております。ご指導、ご発表いただきました先生方をはじめ、このシンポジウムに参加していただきました多くの皆さま、改めまして御礼申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。

馬場    ありがとうございました。感想を申し上げますと、塩分摂取について、少し取りすぎているのではないですかということのつけが、全部学校給食にしわ寄せされてきているのではないか。学校給食はこれだけ努力しているので、家庭での食事、外食で提供されている食事。これを減塩の国民的な取組みとしてやるべきだ。学校給食だけにしわ寄せをされているように感じました。

減塩の問題は、生活習慣病の予防にもつながるものだという観点も含め、国民的な問題意識を持って理解度を広げていきたいと思いました。そのような広がり、取組みをやっていきたいと思います。これをもちまして、第4回食育シンポジウムを終了と致します。

終わり