Blog食育交歓

No.2 「給食で減塩大作戦 ~はばたけ!ちょいしおまいかちゃん給食~」新潟

「食べて学んで元気印」

~学校給食リレー報告~

4月から給食甲子園HPに新しいコーナー「食べて学んで元気印」~学校給食リレー報告~がスタートしました。ここでは全国の学校給食関係者、教員、保護者、生産者、行政関係者、児童・生徒、大会サポート企業・団体からリレーで学校給食・食育をテーマに自由に報告をしていただくコーナーです。全国から届くわくわく「元気印」をお届けいたします。

 

第2回は新潟市立真砂小学校の栄養教諭・金永雅美先生からの報告です。この3月まで7年間勤務された新潟市立女池小学校での食育活動です。

 

No.2 「給食で減塩大作戦 ~はばたけ! ちょいしおまいかちゃん給食~」

新潟市立真砂小学校 栄養教諭 金永雅美

女池小学校は新潟市の中心部にある、児童教職員合わせて847名の大規模校です。

 

1 減塩給食。きっかけは・・・

今から4~5年前。食に関する指導の全体計画を改正するため、給食の残量調査や嗜好調査の結果を見直すと、〈しっかりした味付けを好む。〉〈具材の少ない汁を好む〉などの傾向があることがわかりました。

折しも、行政の担当者から県民の健康課題である「食塩の取り過ぎ」について研修を受けた頃と重なり、《大人だけが県民じゃないよなあ。幼少期の味覚形成の一端を担う学校給食として,何かしないといけないなあ。》と考え、動き出しました。

最初は、ただ調味料を控えただけの減塩給食にしたところ残量が激増!!調理員のみなさんに事情を説明すると、「減塩は大事だけれど、給食はおいしくなくっちゃ!食べてくれなくちゃ本末転倒だよね。」「おいしい減塩給食にするにはどうしたらいいのかなあ。」と、反対するどころか前向きな発言!!そのときは本当に嬉しかったです。

調理員のみなさんの気持ちに突き動かされ、私の《やる気スイッチ》が入りました。

 

2 切磋琢磨と他力本願

私は減塩のコツや旨味の相乗効果が出る食材の組み合わせ、食材の切り方、加熱調理の温度や時間などを文献を調べ上げ、調理員のみなさんは毎日の汁物のだしの取り方、食材を釜に入れるタイミングや火加減と温度を記録し、大量調理にあった調理法を研究しました。

おいしくできた時には「食材の組み合わせがいいんですよ-。」「いやいや、加熱の仕方が良かったんだよー。」と褒め合い、イマイチ味が決まらない時にはお互いに改善策を考えました。

調理員のみなさんは私にとって、給食の「ねらい」や「おもい」をしっかり形にしてくれる盟友です。

他にもっと減塩する手はないか?と考える中、食材納入業者さんや先生方、子どもたち、栄養教諭仲間との会話から、いろいろな情報を得ることができました。

次第に「無駄話 なんてひとつも ないんだよ。」と自分に言い訳をしながら、いろいろな人と会話をする、かかわりをもつようになりました。(ただ話をしたいだけなんですけれど。)

 

 

3 ちょいしおまいかちゃん給食の誕生

減塩は、子どもたちが「食べて覚える」だけでなく、「頭で考えて学ぶ」「つながって共に協力する」「記憶に残す」ことで、意識を高めたり広めたり定着していけるようになると思い、次の一手を考えました。

毎月「ちょいしお(減塩)まいかちゃん給食」を設定し、提供した資料で担任に指導しても

らうようにしました。献立予定表にも「ちょいしおまいかちゃん給食」と記載し、家庭でも一目で減塩給食の日であることをわかるようにし、学校ブログで紹介するようにしました。

「ちょいしお」とは、新潟市の「ちょいしおプロジェクト」が名付けた減塩の呼び方です。「まいかちゃん」は新潟市の食育・花育推進キャラクターです。

4 心を燃やす燃料は?

今年度は新型コロナウイルス感染予防対策から中断していますが、放送委員会の子どもたちが給食リポーターとなって、1分間で全校の心に響くナイスコメントを発信していました。「うす味でおいスイ~!」「だしが効いてておいしいよ♪」などのコメントもちょくちょく入れてくれるようになり、子ども発信で、女池小リスナーの減塩の意識の定着と、五感で味わう方法伝授に一役かってくれていました。

6年家庭科での一食分の献立作成をする授業では「家族のために減塩を考えたメニュー」を立てる子もいました。

また、保護者の方からは「うちの子に、うちのごはんはしょっぱい! 給食くらいにしてよっていわれるんですー。」という話をうかがうこともあり、少しずつ浸透してきている気配を感じました。

子どもがおいしく食べて、理解して、吸収して、周りに伝えてくれることは、とても喜ばしいことです。

 

 

5 いけいけ ちょいしおまいかちゃん給食!

2017年の第12回全国学校給食甲子園では「ちょいしおまいかちゃん給食」を応募し、決勝まで行くことができました。当時は新聞やテレビにも取り上げていただき、保護者や地域の方に「ちょいしお・減塩」を知らせる大きなきっかけになりました。

その頃から、栄養教諭が考えていることは、『ちょいしおまいかちゃん給食』から『ちょいしおまいかちゃん生活』ができるといいなということです。今の子どもたちへは給食を通して伝わるけれど、この子たちが社会に出たとき、その環境はどうなんだろう・・・。ということです。

そこでまず、学校給食を社会(地域)へ発信し、興味をもってもらうことが必要だと考えました。

 

6 まいかちゃん給食の ホップ・ステップ・・・

新潟市食と花の推進課では、まいかちゃんを通して地元農作物などを紹介するSNSを発信しています。直売所や朝市、地産地消に取り組むレストラン、イベントなど、食と花の取り組みを一元的に見られるサイトです。料理レシピ投稿サイト(クックパッド)にもあげています。クックパッド新潟市のキッチン

たまたま当校の郷土料理給食を紹介していただく機会があり、それを機に新潟市内の各校の給食をタイムリーかつキャッチーに掲載していただけることになりました。いろいろな方々に給食を理解してもらう上で、とても大事な役割を果たしています。給食が社会へはばたく第一歩です。【公式】まいかちゃん(新潟市食育・花育推進キャラクター)

 

 

7 文部科学大臣優秀教職員表彰 社会に開かれた教育実践奨励賞を受賞して

令和2年度文部科学大臣優秀教職員表彰「社会に開かれた教育実践奨励賞」をいただけたのは、日頃の取り組みを様々な方々からご賛同いただき、ご指導ご協力を得ることができたからこそだと感謝しています。「つながる」「つなげる」ことが、学校での食育、次の世代の親へとつなぐ食育のために重要なことだと実感しました。

みなさんもそうだと思いますが、子どもが喜んで食べる姿、子どもが一生懸命に向き合う姿、子どものくったくのない笑顔が私の「ごちそう」です。現在の子どもたちの笑顔とともに、未来の子どもたちの笑顔を想像しながら職務にまい進していきたいと思っています。

これからも先生方、保護者や地域の方々、食に携わるみなさんとともに、にこにこ笑顔で楽しみながら、子どもの未来を支えるお手伝いをしていきたいと思います。