あなたの誕生樹

あなたの誕生樹NO.7

ヤマブキ

4月7日

ヤマブキ(山吹)は、学名がKerria japonica、英語名がJapanese roseとあるように日本原産の木で、日本各地に自生しています。枝がかすかな風にも揺れることから「山振り」とか「山吹(ヤマブキ)」と呼ばれるようになったと言われています。ソメイヨシノが盛りを過ぎた頃から鮮やかなヤマブキ色の花が咲きますが、一重のものと八重のものがあります。一重咲きのものは花弁が5枚で実がなるのですが、八重咲きのものは雌しべが退化して花弁(花びら)になるので、実を結ぶことがないことになります。

江戸城を開いた大田道灌が領地を回っていたとき、にわか雨にあい、立ち寄った農家の娘に雨具を求めたところ、ヤマブキの花枝を差し出して、「七重八重花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しき」と歌を添えたという逸話があります。ヤマブキの花に実がつかないことと“実の(みの)一つだになき(無き)”、つまり「蓑」がないことをかけているわけです。この歌は平安時代の「後拾遺和歌集」にある兼明親王の歌なのですが、太田道灌は農家の娘が知っていたことに感服したといいます。

また、光源氏が北山で山吹色の着物をつけていた少女(のちに光源氏の最愛の人となる紫の上)を垣間見たのが非常に印象的だったとの記述もあるそうです。

山吹は春の季語にもなっていて、倉橋羊村氏の俳句に「童女とて愁ひよき顔濃山吹(こやぶき)」というのがありますが、これは紫の上の幼い頃のことなのでしょうか。

文:椋 周二