10周年記念シンポジウム

全国学校給食甲子園大会10周年記念食育シンポジウム開催報告
「学校給食から発信する日本のSHOKUIKU」

日 時
2016年7月30日(土)午後2時−5時
会 場
シダックスカルチャーホール(東京都渋谷区神南)
主 催
特定非営利活動法人21世紀構想研究会
後 援
文部科学省、公益社団法人全国学校栄養士協議会
協 賛
シダックス株式会社、株式会社日本一
  • 第1部 開会挨拶と基調講演
  • 第2部 パネルディカッション:「学校給食から発信する日本のSHOKUIKU」

開催報告第1部 開会挨拶と基調講演

開会挨拶
銭谷眞美(東京国立博物館長、全国学校給食甲子園実行委員長)
基調講演:「食事力が問われる食育の時代」
宗像伸子(管理栄養士、東京家政学院大学客員教授、全国学校給食甲子園審査委員)
司会
大森みつえ(全国学校給食甲子園大会事務局長)

銭谷眞美・学校給食甲子園実行委員長挨拶

全国学校給食甲子園大会10回大会を記念して、本日のシンポジウムを開催することになりました。学校給食甲子園は、特定非営利活動法人21世紀構想研究会が主催しているもので、昨年12月、第10回大会を行いました。

全国2054代表から選ばれた12代表が、東京で実際に学校給食を作ってもらい、審査を受けて群馬県みなかみ町の月夜野学校給食センターの本間ナヲミ栄養教諭のチームが優勝したもので、大変素晴らしい学校給食でした。

学校給食甲子園は、学校給食を通して食育を推進する事業でもあり、おいしい給食の提供だけでなく、調理場の衛生管理や地場産物の生かした献立作成や調理方法などについても啓発し、学校給食から家庭、地域社会へとつながる食育発展を目指していくものであります。

本日は、いろいろなご専門の先生にご登壇をお願いして、皆様と共に食育について考える機会にしたいと思っております。どうぞ最後までお付き合いいただきますようお願いして、主催者の挨拶と致します。

宗像伸子先生の基調講演

私は学校給食とは少し離れた観点で食育について話をしたいと思います。私は社会人として病院の栄養士となり、勤務して最初に感じましたことは、もう少し早く食事の大切さを知っていたら、こんな重い病気にはならなかったのでは?との思いが強く、仕事の傍ら、予防医学の面より健康を維持できる食事とは何かを、いろいろな媒体を通して今日なお続けております。

食育という概念ができてきた背景を考える

さて、10年ほど前に食育基本法が施行され、国家として食育を推進しておりますが、食育とはつぎのようなカテゴリーとして分類されています。

  • ①豊かな人間性を育む食生活の実現
  • ②末永く健康で文化的な生活を求める
  • ③食文化の継承
  • ④心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし健全な心と身体を培う

次に、なぜ食育という概念が出てきたのか。これについての社会的背景を考えて見ました。

  • ①家庭内のリーダーが不在となった
  • ②おじいちゃん、おばあちゃんの食習慣を見習う機会が減った。
  • ③子どもに個室が与えられ、家庭内コミュニケーションがとりにくくなった。
  • ④電子レンジ、インスタント食品の普及の結果、いつでも食事ができるようになった反面、家族が一度に集まる必然性が弱まった。「食べたいときが食事どき」の状態。

私の小さいころは、父親は家庭内で大きな存在でした。しかし高度経済成長期になって仕事が忙しくなり、父親はあまり家庭を省みなくなってしまったという事情も考えられるでしょう。また核家族化によって祖父母との接触する機会が少なくなったこともあるでしょう。

子供の個室化によって、コミュニケーションがとりにくくなり、家族で一緒に食事をすることも難しくなったという事情もあるでしょう。電子レンジなどの普及で食べたいときに食べるということが可能になり、家族が一度に集まる必然性がなくなってしまいました。

続いて、このようなことも言えるでしょう。

  • ⑤女性が社会進出した結果、家事にかける時間が減り、子供が台所仕事をする母親を見る機会が減った。
  • ⑥スーパー、コンビニ、外食店、デパチカ、エキナカなどの普及によって、ますます「食べたいときが食事どき」現象が進んだ。
  • ⑦家族のライフスタイルが多様化し、家庭内で、だんらんの機会が減った。
    女性の社会進出や、社会構造の変革、ライフスタイルの多様化などによって、食の態様がこのように変わってきました。
    このような社会的な現象に歯止めをかけて少しでも健全な食生活ができるように考え、食育基本法として策定されたものと理解しております。

食育を推進するための食事力

食育とは、「食事力をつける」という考え方で対処することが大事ではないかと考えました。「食育」という言葉には、大人が子供に教育するというニュアンスが伴いますが、私が提案しています「食事力」は教育というよりも、気力や体力同様に、人間の基礎的な能力を考えます。大人、子供に関係なく、生涯にわたって心身の健全な生活の確保、豊かな人生を送ることを目指しています。

「食事力」とは、健康長寿(90年、100年)の人生を想定して、それまで気力、体力を維持するために、食事や食行動を自己管理する能力をいいます。私が考える「食事力」とは次のスライドで示したいと思います。


食事力とは、基礎体力をつけることを同じであると考えております。
この2枚のスライドで見るように、家庭で養える食事力として、7つのことがらをあげてみました。

このようにあげてみますと、いずれも当たり前のように感じると思いますが、これを実行することで食事力のアップにつながると考えられます。

これに対し、学校で養える食事力とは、どんなものが考えられるでしょうか

まず第1に、先生ご自身の食事を楽しむ機会をつくることです。生徒や同僚と食事を楽しみながら料理を習うことであり、定期的な食べ歩きをしたり、海外旅行の体験を話題にすることなどがあります。

第2は、正しい姿勢でおいしそうに食事をするが大事です。食事を心から楽しむことが、大切であり、大人の行動を子どもたちはちゃんと見ているものです。

第3は、正しい食の情報や健康情報や郷土の食文化を伝えることも大事です。

そして第4には、自分のためにも、1日に何をどれだけ食べればよいかという基準をもつことが大切になります。

先生方が食事力を養うことで子供に正しく伝えることができます。

食事力をつけるためにどうするか

それでは食事力をつけるための方策を4つとり上げてみました

まず第1に何を、どのくらい食べたらよいか目標をもつことです。健康な毎日を過ごすためには、1日にどんな食品をどのくらいとったらよいかを知る必要があります。

次に定刻に食事をとることが大事です。一日3回の食事によって、必要な栄養素を取りやすくなります。食事時間はくつろぎの場でもあり、ストレスの緩和や、仕事、勉強の区切りをつけるなど、食事は栄養補給とともに休息の場でもあるということを知っていただきたいと思います。食事を中心にして、生活のタイムスケジュールを立てるようにすると一日の生活習慣が規則正しくなります。

次に家族や友人と楽しくリラックスして食べることが大事です。悲しい顔をしたり、怒ったりして食事をしても楽しくありません。家族の崩壊は食卓にあらわれると言われています。家族で食べる食事は、一家だんらんの砦とも言われています。

最後に手作りの食事ということが大事です。最近は外食も多くなり、今は自分で作らなくても食べられる時代になりました。それに流されていると自分で食事を作るのが面倒になり、これは栄養的に問題があることと、家族と仲間とのコミュニケーションがとりにくくなります。手作り料理は一種の創作活動でもあります。

お料理は食べてしまえばすぐに消えます。瞬間芸術と言ってもいいかと思います。この創作活動は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五つの感覚に訴えるものがありますので、心の中に残るものではないでしょうか。

第1群から4群までの栄養的特徴を考える

一日にとるエネルギーは、年齢、性別、労作別によって違いますが、今回は1日2000キロカロリーの食品例を紹介しましょう。食品の分類から見た栄養的特徴とその食品と分量などは、次に示した一覧表に見ることができます。

第1群で見ますと、不足しがちな栄養素としてカルシウムがあげられます。

学校給食では、牛乳を飲んでいますが、学校を離れると飲まなくなってしまい、20代から40代のカルシウム摂取量が非常に少なくなっています。

第2群は、筋肉や血液を作るもので、良質たんぱく質源を供給するもので、肉、魚介、豆・豆製品がこのグループに入ります。献立の中の主菜にあたる食品です。

第3群は、体の調子をよくする栄養素で、ビタミン、ミネラル、食物繊維などがあります。これを供給するのは野菜、芋、果物などです。特に緑黄色野菜や淡色野菜を350グラムはとるように勧めています。朝食に野菜をしっかりとりいれることで1日の量をとり易くなります。

第4群は、力や体温となるグループで主食(ごはん、パン、めんなど)や砂糖、油脂、それにアルコール飲料や清涼飲料水もこのグループに入ります。

このような食品を朝、昼、夕食に組み合わせてとるようにすれば、バランスのとれた食事をとることができます。模範的な食事をスライドでお見せしたいと思います。


食育は国家と個人の双方からのアプローチ

最後に「食育」とはなにかを考えて見ますと、第一義的には国家とか社会からアプローチになっています。

これに対し「食事力」とは個人の基礎的な能力という視点から食育にアプローチするものです。大人、子供に関係なくアプローチしようというものであり、国家・社会と両方からアプローチしていくのが大切と思います。

第2部 パネルディカッション:「学校給食から発信する日本のSHOKUIKU」