食のこばなし

ニンニク

NO.31

免疫力を高めるニンニク

ペストという感染症はもはや死語になっていましたが、新型コロナ感染症の拡大、パンデミックによって再び脚光を浴びました。ペストは中世時代には、世界中でたびたび大流行した恐ろしい伝染病です。

ネズミを介して感染するもので、高熱、悪寒、頭痛、めまいなどの症状を起こし、皮膚は紫黒色になって死亡するため、黒死病などとも言われました。 ワクチンや特効薬などなかった時代には、手のほどこしようもなく死を迎えざるを得なかったのです。

そのころ、ロンドンの医師会は、ニンニクをペストの治療薬として使用しました。ニンニクは免疫力を高める効果があることが、経験的に知られていたからです。強壮剤としても知られており、労働者や兵士は好んで食べました。エジプトのピラミッドを建設するときにも、労働者たちに給料の一部としてニンニクを支給したという記録が残っています。

ロシア帝政時代のシベリアでは、ニンニクを税金の一部として住民から地方政府に納付させたと言うことです。それほどニンニクは食用・薬用として重要だったのです。旧ソ連時代に取材でよくロシア、ウクライナを始め旧ソ連の国々に行きましたが、どこへ行ってもニンニクを使った料理が出てくるので驚いた思い出があります。

功罪合わせ持つニンニク

ニンニクの原産地は、中央アシアのキルギス地方というのがもっとも有力です。
その後、エシプト王朝時代に強壮食品として栽培され、やがてアラブ諸国からヨーロッパへと広がり、東はインドから古代中国へと広がって行ったのです。 日本にニンニクが伝わったのは、700年ごろと言われています。

ニンニクを食べるとスタミナが沸いてきます。 ニンニクに含まれているサチヴァミンという複合体は、コレステロールを低下させ、血液の循環を良くし、肝機能を回復・促進する作用があります。抗菌作用もあるので免疫力を高め、動脈硬化の予防や体力増強に大きな効果があるのです。だからがんの予防にもなると言われています。

ところが、ニンニクの泣きどころは、あの強烈なにおいです。これはニンニクの成分の一つである分解酵素が原因であのような強烈なにおいを発すのですが、それはニンニクの種の保存と密接な関係力あるのです。

植物は自分の身を守るためにさまざまな防衛機能を持っていますが、ニンニクの場合は、あのにおいと食べたときに感じるあの苦味です。だから動物はニンニクを食べなくなり、ニンニクは人間だけに珍重されて栽培され、世界中に広がっていったというわけです。

日本一のニンニク産地は、意外にも本州の北端、青森県の田子町です。この地のニンニクは「福地ホワイト」という品種で、粒が大きく実も引きまっています。料理はもとより健康食品や化粧品や入浴剤などにも応用されています。

 

ニンニク国際交流へ発展

ニンニクの収穫は梅雨の終わりの時期ですから間もなく始まります。この時期、わずか二週間足らずの間に2千数百トンものニンニクが一斉に収穫されるので、町全体が強烈なにおいで包まれると言われています。

田子町はニンニクを縁に国際交流をしています。ニンニク集積世界一のアメリカ・シリコン バレーに隣接するギルロイ市、イタリアのニンニクの町であるミラノ南方のモンテチェリ町、高品質のニンニク産地として有名な韓国の瑞山市などと交流を深めています。

韓国の料理やイタリア料理にはニンニクはつきものですが、意外と使われないのが中華料理です。中国の四川省へ旅行して多くの中華料理を食べましたが、ニンニクは思ったほど使われていませんでした。

特にチベットでは、ニンニクを食べた僧侶は寺に入ることを禁じられ、日本でも寺院での修行ではニンニクを食べることを禁じられていたそうです。イギリスでも一部でニンニクを食 へることは忌み嫌われていました。

味噌仕立ての札幌ラーメンにはニンニクがつきものです。テーブルにニンニクのすりおろしが入った器があり、お好みでラーメンの汁に入れます。だから昼食にラーメンを食べてニンニクのにおいをぷんぷんとさせても、札幌っ子は許してくれました。ニンニク臭は、この地では食の文化なのです。

文:ばばれんせい 絵:とよだゆき

 

ニンニクの食品成分

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)

ニンニクの生産量の都道府県ランキング(平成30年)

順位 都道府県 収穫量 割合
1 青森県 13,400t 66.30%
2位 北海道 796t 3.90%
3位 香川県 582t 2.90%
4位 鹿児島県 376t 1.90%
5位 岩手県 368t 1.80%
6位 秋田県 323t 1.60%
7位 熊本県 310t 1.50%
8位 宮崎県 306t 1.50%
9位 福島県 287t 1.40%
10位 大分県 245t 1.20%
11位 徳島県 150t 0.70%

他の都道府県はデータが非公表・事実不詳となります

出典:地域の入れ物

カテゴリ

あげもの うなぎ うめ おかゆ おでん お正月 お祝い お茶 きのこ くだもの こんぶ ごぼう さといも すし そうめん そば たけのこ たまご たら 魚 たんぱく質 だいこん ちくわ ちらし寿司 つくだに つみれ とうきび とうふ とうもろこし なれずし はんぺん ふぐ ぶり めでたい もち もも やぶきた茶 りんご アイスクリーム アサリ アスパラ アスパラガス アボカド アユ アリシン アルコール アワビ アントシアニン イカ、ヤリイカ、スルメイカ、軟体動物 イタリア イチゴ イナゴとハチの子 イワシ エダマメ オクラ オリーブ オリーブオイル オレンジ カキ カツオ カツサンド カツレツ カボス カボチャ カレー カレーライス カレー粉 ガーリック キウイ キムチ キムチ鍋 クリ グリーン グリーンピース コロッケ コンニャク ゴルゴンゾーラ ゴールド サクランボ サツマイモ サラダ サンドイッチ サンマ シイタケ シソ シメジ スイカ スダチ スティルトン スナップエンドウ スパイス スパゲッティ セリ科 セロリ ソラマメ ソーセージ タイ タクワン タコ タマネギ ターキー ダイズ チーズ ツタンカーメン デザート トコロテン トマト トンカツ ドジョウ ナシ ナス ニシン ニンニク ネギ ハマグリ バナナ パスタ ビタミンC ビール ピンク フキ フルーツ フルーツサンド ブドウ ブルーチーズ ブルーベリー ヘイワード ホットドック ポークカツレツ マカロニ マクワウリ マロン メロン ユズ ライスカレー ルチン レタス レンコン ロックフォール ワカメ ワサビ 七面鳥 下仁田ネギ 下関 二十世紀なし 伊藤博文 佃煮 南国 厄除け 味噌 和食 土用 土用の丑の日 夏野菜 夕張メロン 大和 大根 大豆 奈良 寒天 寿司 小魚煮 山菜 山葵 干しシイタケ 徳川家康 慶事 揚げ物 握り寿司 新茶 昆布 春野菜 松前船 果物 枝豆 柑橘 根菜 桃太郎 梅仕事 横須賀 歴史 水餃子、焼き餃子 沢庵 河豚 海、 海のミルク 海藻 淡水魚 滋養強壮 漬物 煉瓦亭 熨斗紙 牡蠣 番茶 疲労回復 白ネギ 石垣いちご 納豆 紫エンドウ 緑色 緑茶 羅臼昆布 茄子 茶がゆ 茶色 菜の花 萌黄色 葉ネギ 葉野菜 西洋のカツオ節 西洋料理 豆腐 豊臣秀吉 豚肉 郷土食 酢飯 醤油 野菜 青魚 韓国 風邪の予防 食文化 食材 食物繊維 香味野菜 高級食材 魚、サケ、 魚介 鶏肉 黄色